18日、南アフリカワールドカップグループリーグC第2節がヨハネスブルグ・エリスパークで行われ、スロベニア(FIFAランキング25位)とアメリカ(同14位)が対戦した。立ち上がりからペースをつかんだスロベニアが前半13分、MFヴァルテル・ビルサ(オセール)の豪快なミドルシュートで先制する。25分過ぎからは地力に勝るアメリカが反撃に出て一方的に攻め込むも、42分に前がかりになった相手DFの裏をつきFWズラタン・リュビヤンキッチ(ヘント)が抜け出し、スロベニアに追加点が入る。後半開始から攻撃のカードを切り追撃態勢に入ったアメリカは3分、MFランドン・ドノバン(LAギャラクシー)が右サイドを突破しシュートを突き刺し1点差。さらに37分にはMFマイケル・ブラッドリー(ボルシアMG)が同点ゴールをあげて、ついに追いつく。試合はこのまま終了し2対2のドロー。アメリカは劣勢を跳ねのけ価値ある勝ち点1を獲得し、勝てば決勝トーナメント進出を決めることのできたスロベニアにとっては痛い引き分けとなった。

 混戦のグループ、どちらも決勝T進出の可能性残す(ヨハネスブルグ・エリスパーク)
スロベニア 2−2 アメリカ
【得点】
[ス] ヴァルテル・ビルサ(13分)、ズラタン・リュビヤンキッチ(42分)
[ア] ランドン・ドノバン(48分)、マイケル・ブラッドリー(82分)

全64試合詳細レポートと豪華執筆陣によるコラムはこちら

 初戦でアルジェリアからW杯初勝利を獲得したスロベニア。イングランド、アメリカという格上と同居するグループで首位に立っており、この試合で勝てば決勝トーナメント進出が決まる。勝てなくても勝ち点を1でも積み上げれば、決勝トーナメントへ大きく前進する。一方のアメリカは、イングランドとの1戦で相手からプレゼントを受けたようなドローに持ち込んでいる。決勝トーナメントへ向け、ここは是が非でも勝ち点3がほしいところだった。

 試合は大方の予想を反してスロベニアが先制する。中盤でボールを保持した彼らにビッグチャンスがやってきたのは13分。ゴールから30m付近のゴール正面でビルサが完全にフリーになる。アメリカDFの寄せは甘く、ビルサは余裕をもってゴール方向に振り向くと、左足で思い切りシュート。ボールはアウトサイドにかかりGKティム・ハワード(エバートン)から離れるような弧を描く。強烈な一撃にハワードは一歩も動くことができず、ボールはアメリカゴールに突き刺さった。すでに1勝を挙げているスロベニアに先制弾が生まれ、試合は面白い展開となる。

 失点したアメリカは徐々にボールを持つようになりペースを掴む。中盤のドノバン、ブラッドリーらがパスを巧みに回し、前線のFWジョジー・アルティドール(ハルシティ)へとボールを供給する。身体能力の高いアルティドールは強引な体勢からでもシュートチャンスを作りスロベニアゴールへと迫った。

 アメリカが波状攻撃を仕掛けたのは35分過ぎから。まずは右サイドのフリーキックからMFホセ・フランシスコ・トーレス(パチューカ)が直接ゴールを狙う。これはGKサミール・ハンダノビッチ(ウディネーゼ)が好セーブをみせコーナーキックへ逃れる。39分にはドノバンから左サイドに開いたFWロビー・フィンドリー(レアル・ソルトレイク)へパスが通り、それをダイレクトでゴール前へ。飛び込んだアルティドールがシュートを狙うもDFに弾かれる。その1分後にも右サイドからの低いクロスをドノバンがゴール前であわせるが、これも懸命のクリアにあう。1点ビハインドながら動きのよくなってきたアメリカに同点弾が生まれるのは時間の問題かと思われた。

 しかし、次のゴールを奪ったのもスロベニアだった。42分、前がかりになったアメリカのDFラインの裏をついて抜け出したのはリュビヤンキッチ。縦パスにうまくあわせ、最後はGKの動きをみる余裕もあった。ダイレクトで放ったシュートはハワードの脇を通過しゴールへ吸い込まれる。劣勢下で貴重な追加点を奪ったスロベニアに決勝トーナメント進出への扉が一気に開いたかと思われた。このまま2対0で試合は折り返し後半へ入っていく。

 2点リードされたアメリカは後半開始と同時にMFベニー・ファイルヘイバー(オーフス)とMFモーリス・エドゥ(レンジャーズ)を投入し、さらに反撃の姿勢を見せる。すると3分、チャンスはいきなりやってきた。DFラインからのフィードをスロベニアDFボスティアン・チェサル(グルノーブル)がスライディングでクリアを試みるも失敗。ガラ空きになった右サイドのスペースでボールを拾ったドノバンがそのままゴールへドリブルする。右サイドの深い位置まで進み、最後は右足でニアサイドへシュート。GKの至近距離から放たれたシュートはゴールの天井に突き刺さり、アメリカがいい時間で1点を返す。

 その後は一方的なアメリカペースで試合は進む。同点弾の3分後には左サイドのフリーキックに合わせたMFクリント・デンプシー(フルアム)がバックヘッドでゴールを狙うも、シュートは惜しくもゴール右へ。さらに25分、フリーキックのクリアボールを拾ったアルティドールがノーステップでシュートを放つが、これはGKがしっかりとキャッチする。再三フリーキックからチャンスを作り、スロベニアDF陣にプレッシャーをかけていく。

 そして迎えた35分。右サイドからドノバンがアーリークロスを入れると、アルティドールがヘッドでゴール前に落とす。そこへ2列目から走りこんできたのはブラッドリーだ。強烈なシュートを放つと、好セーブをみせてきたハンダノビッチも及ばすシュートはゴールネットを揺らし同点に追いついた。この2分前にはDFを1枚下げFWエルクレル・ゴメス(プエブラ)をピッチに送り込んだボブ・ブラッドリー監督。積極的な采配が功を奏し、試合を振り出しに戻した。

 さらに勝ち越しを狙うアメリカは39分、右サイドのフリーキックからドノバンが絶妙なボールを上げる。ゴール前に詰めたエドゥがうまくあわせてシュートを決めるも、その前のプレーでファウルがあったとされノーゴール。この日の主審はアメリカに厳しい判定が多く、このプレーもファウルがあったようには見えなかった。主審の笛で逆転を阻まれたアメリカはその後もスロベニアゴールへ向かい続ける。対するスロベニアも必死の守りで3点目は許さない。残り5分はお互いに死力を尽くした攻防となった。

 試合はこのまま終了し2対2のドローでタイムアップ。アメリカにとって薄氷を踏むような試合運びで2試合連続の引き分けだ。前半途中から変幻自在のパスを通したドノバンの働きが目立った。次のアルジェリア戦は得失点の争いも考え、ゴールラッシュを期待したいところだ。

 スロベニアは2点のリードを守りきれず、悔しいドローとなった。しかし、試合前の状況を考えればドローでも恩の字ではある。同節のイングランド−アルジェリアの試合結果にもよるが、決勝トーナメント進出へ半歩前進した格好だ。最終戦は難敵・イングランドとの対戦となる。厳しい戦いが予想されるが、堅い守りでまずは先制点を奪いたい。彼らを慌てさせることができれば、初のベスト16入りが見えてくる。

(大山暁生)

【アメリカ】
GK
ハワード
DF
オニェウ
→ゴメス(80分)
ディメリット
ボカネグラ
チェルンドロ
MF
ブラッドリー
F・トーレス
→エドゥ(46分)
デンプシー
ドノバン
FW
フィンドリー
→ファイルヘイバー(46分)
アルディドール

【スロベニア】
GK
ハンダノビッチ
DF
シュレル
チェサル
ブレチュコ
ヨキッチ
MF
コレン
ラドサブリェキッチ
キルム
ビルサ
→デディッチ(87分)
FW
リュビヤンキッチ
→ペツニク(74分)
→コマッチ(90+4分)
イバコビッチ