18日、南アフリカワールドカップグループリーグC第2節がケープタウンで行われ、イングランド(FIFAランキング8位)とアルジェリア(同30位)が対戦した。序盤から一進一退の攻防をみせた試合は32分にイングランドがビッグチャンスを迎えるものの決めきれず、前半を0対0で折り返す。後半に入っても攻守の切り替えが速い展開になるものの両国にチャンスらしいチャンスはうまれずそのまま試合終了のホイッスル。このグループ3試合目の引き分けとなり、混戦に拍車がかかる結果となった。

 優勝候補が得点差で3位のまま(ケープタウン)
イングランド 0−0 アルジェリア

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 初戦のアメリカ戦ではGKの信じられないミスから失点し同点に持ち込まれたイングランドは、そのポジションにデイビッド・ジェームス(ポーツマス)を起用した。過去2大会でも代表入りしていたジェームスだが日韓、ドイツ大会では出場機会がなく、39歳の3大会目でW杯デビューとなった。さらに前節では欠場していたMFガレス・バリー(マンチェスター・シティ)が先発出場を果たす。右足首を痛め大会前の親善試合でも出場機会はなく、ぶっつけ本番でのW杯となった。バリーは5月5日以来実戦から離れており、いきなりの大舞台でどのようなプレーを披露するか、注目された。

 試合は立ち上がりから拮抗した展開となる。前節ではスロベニアに敗れたアルジェリアは、中盤を厚くした布陣で試合に臨み、相手にスペースを与えない。アフリカ予選で大陸王者のエジプトを破った彼らが、真の実力を見せた。高い技術でイングランド相手に一歩も引けをとらない。特にMFカリム・ジアニ(セーブル)やMFナディア・ベラージ(ポーツマス)が積極的な攻撃をみせ、イングランドに揺さぶりをかける。多くの選手はフランス出身であり、あのジデディーヌ・ジダンもアルジェリア系の移民だ。初戦では不甲斐ない戦いを見せたが、強国相手にがっぷり四つの試合を繰り広げた。

 歯ごたえのある相手にイングランドが“らしさ”を見せたのは28分。縦に入ったくさびのボールをFWウェイン・ルーニー(マンチェスター・ユナイテッド)が落とすと、そこへ走りこんだMFスティーブン・ジェラード(リバプール)がミドルを狙う。これはGKにキャッチされるものの、ようやく流れるようなパス回しが展開された。決定機が訪れたのは32分。右サイドをかけあがったDFグレン・ジョンソン(リバプール)のクロスがゴール前でDFに当たる。そのボールを拾ったMFフランク・ランパード(チェルシー)がシュート。GKライス・エムボリ(スラビア・ソフィア)がギリギリのところでセーブするも、徐々にゴールを割りそうな予感が増していった。

 しかし、両国にゴールが生まれることなく前半を折り返すと、後半に試合は膠着する。イングランドはアフリカ勢との対戦で過去に15戦11勝4分け、W杯に限っても3勝2分けと相性がよいはずだった。だが、今日の相手はアフリカ勢とはいってももともとフランス出身者の多いアルジェリアだ。データ通りの強さをみせることは叶わず、試合を押し気味に進めるものの、ゴールを奪うことができない。先発したバリーも動きこそ悪くないが、攻撃の起点になることはほとんどなかった。直前の親善試合で連係を高める機会を奪われていたため、中盤から試合を組み立てるランパード、ジェラードとの息が今ひとつあっていなかった。

 前半は両サイドバックのG・ジョンソンやアシュリー・コール(チェルシー)が上がりを見せたものの、後半になるとほとんどオーバーラップは見られない。状況を打破するためにファビオ・カペッロ監督はション・ライト=フィリップス(マンチェスター・シティ)とジャーメイン・デフォー(トッテナム)を投入するが、好転する気配は感じられない。残り10分を切ると、長身のピーター・クラウチがピッチに送りこまれたが、彼をいかそうとするクロスボールもほとんど入らなかった。90分間ちぐはぐな攻めを繰り返したイングランドがアルジェリアを相手にスコアレスドロー。得点差でグループ3位に留まり、このままではグループリーグで敗退する可能性も出てきた。

 ボールを持ちながらも単発の攻撃に終わったイングランドは、ボールを展開させる選手がいなかった。やはりバリーは完調には程遠く、代役となるマイケル・キャリック(マンチェスター・ユナイテッド)に出番が回ってくるかもしれない。最終節は現在グループトップに立つスロベニアとの対戦だ。これまで対戦したアメリカ、アルジェリアに比べ、オーソドックスな欧州スタイルのスロバキアは組み易いチームかもしれない。しかし、相手は初の決勝トーナメント進出に向けモチベーションは高い。今日のようなサッカーでは足元をすくわれることも大いにある。優勝候補のグループリーグ敗退が現実味を帯びている。手負いの獅子たちは、土壇場で勝負強さを見せることができるか。

(大山暁生)

【イングランド】
GK
ジェームス
DF
テリー
キャラガー
A・コール
G・ジョンソン
MF
バリー
→クラウチ(84分)
ランパード
ジェラード
レノン
→ライト=フィリップス(63分)
FW
へスキー
→デフォー(73分)
ルーニー

【アルジェリア】
GK
エムボリ
DF
ヤイア
ハリシェ
ブゲラ
MF
ベラージ
カディル
ラセン
イエブタ
→メスバフ(88分)
ブドゥブ
→アブドゥン(74分)
ジアニ
→グエディウラ(81分)
FW
マトムル