20日、南アフリカワールドカップグループリーグF第2節がネルスプロイトで行われ、イタリア(FIFAランキング5位)とニュージーランド(同78位)が対戦した。いきなりの先制パンチを食らわせたのはニュージーランドだった。前半7分、フリーキックのチャンスでゴール前に抜け出したFWシェイン・スメルツ(ゴールドコースト・ユナイテッド)がシュートを流し込み先制点をあげる。一方的に攻め続けたイタリアは29分にFWヴィンチェンツォ・ヤクインタ(ユベントス)がPKを決め同点に追いつく。後半もイタリアの攻撃が続き、ニュージーランドゴールに迫るも屈強なDFが立ちはだかりゴールを許さず1対1のままタイムアップ。両国とも初戦につづき引き分けという結果となった。

 前回王者から価値ある勝ち点1獲得(ネルスプロイト)
イタリア 1−1 ニュージーランド
【得点】
[イ] ヴィンチェンツォ・ヤクインタ(29分)
[ニ] シェイン・スメルツ(7分)

全64試合詳細レポートと豪華執筆陣によるコラムはこちら

 直前に行われた試合でパラグアイがスロバキアに勝利したため、ここで勝利すれば決勝トーナメントへ一気に近づくことになる両国。特に前回大会覇者のイタリアにとっては勝たなければいけない試合となった。

 試合をコントロールしたのはイタリアだった。立ち上がりから右サイドに流れたヤクインタが起点を作り、右サイドバックのジャンルカ・ザンブロッタ(ACミラン)が積極的な上がりをみせゴールへ近づく。ボールを保持しつづけるイタリアに先制点が入るのは時間の問題かと思われた。

 しかし、前半7分に意外なゴールが生まれる。ニュージーランド左サイドからのフリーキック。MFサイモン・エリオット(フリー)がゴール前へ高いボールを入れる。すると、競り合った選手のブラインドに入ってしまったイタリアDFファビオ・カンナバーロ(ユベントス)がボールを足に当てながらもクリアすることができない。そのボールにつめたのはスメルツだった。落ち着いて右足でゴールへ蹴り込み、なんとニュージーランドが先制点をあげた。ゴール前で競り合った際にスメルツのポジションはオフサイドだったが、ニュージーランドの選手に当たることなくボールがこぼれたため、オンサイドの判定となった。ファーストシュートをものにしたニュージーランドが1点のリードを奪った。

 しかしその後も一方的なイタリアペースで試合は続く。26分にはMFリッカルド・モントリーボ(フィオレンティーナ)が低い弾道のミドルシュートを放つ。ボールは微妙に変化しながらニュージーランドゴールへ。GKマーク・パストン(ウェリントン・フェニックス)が全く反応できなかったが、シュートは惜しくも左ポストに当たってピッチへと弾かれる。

 2分後、イタリアに絶好のチャンスが訪れる。左サイドからクロスが上がると、ゴール前へ侵入したのはMFダニエレ・デ・ロッシ(ローマ)。そこへマークに入ったDFトミー・スミス(ブレントフォード)がデ・ロッシを倒したところで主審の笛が鳴りPKの判定。クロスの精度は高くなかっただけに、ニュージーランドにとっては痛恨のファウルとなってしまった。PKのキッカーはヤクインタだ。冷静にGKの動きを見極めゴール右へシュートを放ち1対1の同点となる。

 早い時間で同点に追いついたイタリアが勝ち越し点へ向け、さらなる猛攻に出る。39分、ゴール正面からのフリーキックをMFシモーネ・ペペ(ユベントス)が直接ゴールを狙うが、精度は高くなくシュートは枠を外れる。さらに44分左サイドのペペがデ・ロッシにパスをつなぎシュート。これはGKパストンが好セーブをみせゴールは許さない。1対1のまま前半を折り返すがシュート数はイタリアが10本、そしてニュージーランドが1本。圧倒的にイタリアが攻めこみ続けた。

 後半開始早々に動いたのはイタリアだった。マルチェロ・リッピ監督はアントニオ・ディ・ナターレ(ウディネーゼ)とマウロ・カモラネージを投入し、攻撃にさらに力をいれていく。4分にはディ・ナターレがゴール前で浮き球を抑えたシュート。これはGKの正面をつく。25分にはモントリーボが再びミドルシュート。これもパストンが右手一本でシュートをかき出しゴールならず。シュートまではいくもののDFライアン・ネルソン(ブラックバーン)を中心とした守備陣の頑張りとGKパストンのスーパーセーブによって、勝ち越しゴールは生まれない。

 すると37分にニュージーランドにビッグプレーが生まれる。途中交代のクリス・ウッド(WBA)が左サイドでボールを持つと、瞬時にカンナバーロをかわしてPAに持ち込みシュート。ボールは惜しくもゴール右にわずかに外れるが、ゴールが生まれてもおかしくないようなシーンだった。

 試合終了間際にもカモラネージがミドルシュートを放つが、ここもパストンの好セーブが飛び出し得点にはならず。このまま試合は終了し1対1の引き分けという結果になった。

 イタリアは流れの中で得点を入れることなく90分を過ごしてしまい、ほぼ負けに等しいドローとなった。ストライカーとして期待されているFWアルベルト・ジラルディーノ(フィオレンティーナ)は持ち味を出すことなく前半45分で交代。ディ・ナターレ、ジャンバオロ・パッツィーニ(サンプドリア)と前線の選手を入れても、決定的な場面で決めきることができない。このままではグループリーグ敗退の可能性もある。前線で爆発する選手が出てこなければ、イタリアにとっての南アW杯は3試合で終わってしまうことになるだろう。

 一方のニュージーランドは大健闘の引き分けとなった。特にパストンのスーパーセーブとDF陣の踏ん張りが光りを放った。惜しいのはPKを与えたシーン。不用意なファウルがなければ勝ち点3をモノにできていたかもしれない。最終節は首位・パラグアイとの対戦となる。今日のような粘り強い守備を見せれば、混戦のグループリーグを突破する可能性もある。ここ2試合で世界中のサッカーファンがその存在を知ることとなった“オールホワイツ”が、三たび世界中に驚きを与えるかもしれない。

(大山暁生)

【イタリア】
GK
マルケッティ
DF
カンナバーロ
キエッリーニ
クリーシト
ザンブロッタ
MF
デ・ロッシ
モントリーボ
マルキージオ
→パッツィーニ(61分)
ペペ
→カモラネージ(46分)
FW
ヤクインタ
ジラルディーニ
→ディ・ナターレ(46分)

【ニュージーランド】
GK
パストン
DF
ネルセン
リード
スミス
MF
ロックヘッド
バートス
ヴィセリッチ
→クリスティー(81分)
エリオット
FW
スメルツ
キレン
→バロン(90+3分)
ファロン
→ウッド(62分)