21日、南アフリカワールドカップグループリーグH第2節がヨハネスブルグ・エリスパークで行われ、スペイン(FIFAランキング2位)とホンジュラス(同38位)が対戦した。立ち上がりから圧倒的にボールを保持したスペインが数多くの決定機を演出する。すると17分、左サイドからドリブルで突破したFWダビド・ビジャ(バルセロナ)がカットインから見事なシュートを突き刺しスペインが先制する。後半からはホンジュラスも攻めの姿勢を見せるが、6分にカウンターからビジャが追加点をあげて相手を突き放す。その後も攻撃を続けたスペインだが、ハットトリックを狙ったビジャがPKを外すなど決定力はイマイチだった。このまま試合は2対0でスペインが勝ち、今大会初勝利を収めた。

 守りは枠内シュート0に抑え完封(ヨハネスブルグ・エリスパーク)
スペイン 2−0 ホンジュラス
【得点】
[ス] ダビド・ビジャ(17分、51分)

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 初戦でまさかの敗戦を喫したスペインは、先発メンバーを入れ替えた。アンドレス・イニエスタ(バルセロナ)、ダビド・シウバ(バレンシア)に替えて、FWフェルナンド・トーレス(リバプール)、FWヘスス・ナバス(セビージャ)が起用された。これで前線はビジャを加えた3トップとなりF・トーレスが中央に、ビジャが左、H・ナバスが右に配置された。

 序盤から圧倒的にボールを持ったスペインは両ウイングからチャンスを演出していく。7分にはビジャの放ったシュートがバーに直撃。10分には左サイドで得たコーナーキックから最後はDFセルヒオ・ラモス(レアル・マドリッド)のヘディング。これは浮いてしまいゴールにはならないが、確実にホンジュラスゴールへと迫っていく。

 そして前半17分、左サイドでボールを持ったビジャが緩急織り交ぜてのドリブルでDF2人を抜き去りPA内へ侵入する。最後はDFオスマン・チャベス(プラテンセ)を切り返しながら交わし、体勢を崩しながらもシュートを放つ。ボールは右ゴールネットを揺らし、スペインが先制点をあげる。初戦ではスイスの守備網に苦しめられた無敵艦隊が幸先よくゴールを決め、今日はゴールラッシュになるかと思われた。

 その後も24分、33分とサイドを起点に決定機を迎えるものの、なかなかスコアが動かない。故障明けのF・トーレスは本来の動きには程遠く、コンディションは低調のままだ。一方で、中盤の司令塔MFシャビ・エルナンデス(バルセロナ)やDFリーダーのカルレス・プジョル(バルセロナ)は軽快な動きを見せる。選手によってコンディションに大きな隔たりがあり、チームとしての調子が上がってこないのはここに原因があるようだ。

 チャンスを外しつづけたスペインに2点目が入ったのは後半6分。カウンターの場面でシャビからのパスを右サイドで受けたH・ナバスがゴール正面に待つビジャへボールを通す。ゴール前には飛び込まず、一歩引いた位置でDFを外したビジャがコースを狙って右足でシュートを放つ。一旦はDFに当たるものの、コースが変わりGK必死のセーブも及ばずシュートはゴールへと吸い込まれた。ビジャがこの日2点目のゴールを決め、ホンジュラスを突き放し試合をほぼ決めてしまった。

 ビジャにハットトリックのビッグチャンスが訪れたのはその10分後だ。PA内でH・ナバスがDFエミリオ・イサアギーレ(モタグア)に倒されPKを獲得。ペナルティスポットに入りゴールを狙ったビジャだが、シュートはGKの逆をつきながらゴール右に外れる。スペイン代表が波に乗れていないことを象徴するかのようなPK失敗で、ハットトリックのチャンスを逃がしてしまう。その後も何度かビジャに決定機が訪れるが、結局3ゴール目を決めることはできなかった。試合はこのまま2対0で終了、攻撃面では不満の残る内容だったものの、守備陣はホンジュラスの枠内シュートを0に抑えこみ、ほぼ完璧といえる働きだった。

 スペインにとって気がかりなのは、後半30分過ぎからの急激な運動量の低下だ。標高1700m以上のヨハネスブルグでの試合とはいえ、楽勝ムードの中、苦しそうな表情でプレーする選手が少なくなかった。前半からオーバーラップを繰り返したS・ラモスも途中でピッチから退いた。細かいパス回しが身上のチームだけに、足の止まった終盤のプレーはやや心配である。さらに、決勝トーナメントに進むと、遅いグループに入るスペインは過酷な日程が待っている。仮にグループ2位通過となれば、グループリーグ最終節と決勝トーナメント1回戦の日程は中2日という厳しいものになる。そして、その試合の会場は今日と同じくヨハネスブルグ・エリスパークだ。グループ1位通過になれば、中3日で海抜0mのケープタウンでの試合が待っている。是が非でもトップ通過を果たしたい。

 グループリーグ1位通過のためにも、最終節のチリ戦は絶対に落とせない試合となる。できることならば、ここでは1つでも多くのゴールを取っておきたい。ホンジュラス戦のようなPK失敗は論外だ。最終節の行なわれるプレトニアは標高1200mほどで、ヨハネスブルグほどではないにしろ高地になる。スペイン代表にとって敵は対戦相手ではなく、自身の中にありそうだ。4日後に向けてどれだけコンディションをあげることができるか。無敵艦隊は、早くも正念場を迎えている。

(大山暁生)

【スペイン】
GK
カシージャス
DF
プジョル
ピケ
カプテビラ
S・ラモス
→アルベロア(77分)
MF
ブスケッツ
X・アロンソ
シャビ
→セスク(65分)
FW
ビジャ
H・ナバス
F・トーレス
→マタ(69分)

【ホンジュラス】
GK
バジャダレス
DF
チャベス
フィゲロア
イサアギーレ
メンドーサ
MF
W・パラシオス
ゲバラ
エスピノーザ
→ウェルカム(46分)
トゥルシオス
→ヌネス(63分)
マルティネス
FW
スアソ
→J・N・パラシオス(84分)