飛び道具だけは防ぎようがない。フリーキック2発で日本はデンマークを撃破し、決勝トーナメント進出を決めた。
 1本目は本田圭佑。30メートルの距離、右サイドという位置は彼のおハコ。左足が描く弾道は無回転のままゴール左隅へ。デンマークGKトーマス・セーレンセンは為す術もなかった。
 2本目は遠藤保仁。ボールをセットした時点では本田が蹴る意欲を示し、デンマークの壁を欺いた。「まさか7番が蹴るとは……」。大男たちはびっくりしたはずだ。シュートは壁の外側を巻いて、ゴール右隅へと吸い込まれていった。
 左と右、利き足の違う2人のレベルの高いキッカーがいる国は有利である。日本は忘れかけていた財産に気がついた。この“成功体験”は次のパラグアイ戦でも生きてくるはずだ。
 アタックする側は、どこでファウルをもらうのがベターかと、ある種の“企み”をもって仕掛けることができる。ドリブルの達者な松井大輔や大久保嘉人がそこを突かないはずがない。
 いくらパラグアイの城壁が難攻不落とはいえ、頭上を巻き、ゴールの隅を襲う飛行物体だけはどうすることもできまい。技術立国が育てた“匠の技”を見せつけて欲しい。

 今回のパラグアイは持ち前の守備力に攻撃の多彩さが加わった。さすがに南米予選でブラジルやアルゼンチンに土をつけただけのことはある。
 日本にとって嫌なのはパラグアイが191センチのロケ・サンタクルスと187センチのルーカス・バリオスにロングボールを放り込むような展開に持ち込んだ時だろう。GK川島永嗣の“神の手”にすがる場面も出てくるかもしれない。
 予想はどちらが勝っても1対0。点を取り合うような展開は想像しにくい。

 最後に喜ばしい情報をひとつ。6月25日の時点で日本のオンターゲット率(シュートが枠をとらえたパーセンテージ)は60%で出場32チーム中トップ。枠に飛べば何かが起きる。後半30分、本田のシュートをGKフスト・ビジャールがはじく。ゴール前に詰めていた途中出場の岡崎慎司がスライディングシュート。1対0、日本勝利。そうなればいいが……。