片山晋呉、伊澤利光、上田桃子、諸見里しのぶ……数多くのトッププロを指導し、結果を残してきた名コーチといえば、プロゴルファーでティーチングプロの江連忠である。「50歳までに世界のメジャートーナメントで優勝する選手を育てる」と宣言。自らが主宰するアカデミーで選手育成に情熱を燃やしている。そんな名伯楽に、ゴルフが上達する上で重要なポイントについて訊いた。 
二宮: 江連さんは著書で、「ゴルフには“芯”が大切だ」と述べられていますね。
江連: 芯の字は「草かんむりに心」と書きますね。まず、ゴルフは草の心を知らなくてはいけない。それが第一条件です。そして次に重要なのは体の芯。美しい姿勢には、まさに読んで字のごとく姿に勢いがある。勢いのある姿かたちは必ず重心があるんです。そして、もうひとつ大切なのはクラブやパター、ボールの芯。クラブやパターの芯とボールの芯が当たるがしっかり当たれば、狙ったところへ飛んでいく。それを感じるのは目ではなく耳です。芯同士が当たった時には本当にいい音がしますから。逆に音が悪い時は距離感や方向が合わなかったりする。僕がレッスンした選手の中で、晋呉やしのぶはポイントを教えて打たせているうちに、突然いい音が鳴り始めたんです。「今の音、すごくない?」ってビックリするくらい。若手でもあと2人、いい音を出した選手がいる。彼女たちも近い将来、きっと伸びるとみています。

二宮: 表現するのは難しいでしょうが、それはどんな音ですか?
江連: 普段、聞き慣れているパターとボールが当たった音とは全く違う心地よさです。音は当たったところで確かに鳴っているんだけど、振動が伝わってシャフトからポンと抜けてくる。自分の体も、実際には震えていないのに、震えているような感覚すらするんです。そのくらい芯と芯がきれいに当たると、激震と言ってもいいくらいの震えがくる。だから、僕は日頃から「ボールがフェアウェイを転がっている音だったり、グリーンを転がる音だったり、空気を切り裂く音だったりを、よく聞け」と指導しています。こういう感覚を大事にできる人なら、僕の指導に合う気がしますね。

二宮: では、体の芯を意識させるためには、どんなアドバイスを?
江連: たとえば、腕に力を入れると関節は回りにくくなりますね。力をギュッと入れたまま腕はぐるぐる回せない。つまり、この瞬間、僕なりの表現でいうと「筋肉は骨になっている」わけです。普段、我々は意識していませんが、本当に腕の力を抜いたらバーンと地面に落下するぐらい腕は重いものです。クラブなんて300グラムしかないのに、それを力一杯持つ必要はない。じゃあ、どこに力を入れるのか、ということを突き詰めていくと、結局は体の芯にたどり着きます。

二宮: 諸見里選手は「一打一打、どんな気持ちでどのように打ったのかを覚えておかないとコーチに叱られる」と言っていました。
江連: ゴルフはもちろん、スポーツは予習ができないものです。全て復習しかできない。ただ、一流の選手たちは「次はこうなりそうだ」という予測ができるのではないでしょうか。しのぶや桃子はまだ、その領域に達してませんが、タイガー(・ウッズ)や(石川)遼君はこれができているように感じますね。たとえばタイガーは調子が悪い時、一緒にラウンドしている選手がパーンといいショットを打ったら、たとえ無名であっても、「あれ、どうやって打ったんだ?」と訊ねると聞いたことがあります。
 だから僕は彼女たちには、相手がショットを打つ時に、どの角度で入って、どういうボールが行ったか、スイングをよく見るように言ってきました。自分のショットなんて覚えているのは当たり前。相手のショットも覚えてほしい。ましてや試合になれば一流選手同士で回っているのだから、最高の参考資料になります。3人でラウンドしたら、3人分のデータが入手できるんです。それらを自分のプレーに生かすことが世界のトップになるための条件だと思っています。

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