第136回 ヒョードル、復活! 7.30ヘンダーソン戦は見逃せない

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 エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)の復帰戦が決定した。
 7月30日(現地時間)、米国イリノイ州シカゴのホフマンエステイツシアーズセンターで開催される『Strikeforce(以下SF)』、対戦相手は元PRIDEウェルター&ミドル級王者で、現在はSFライトヘビー級王者のダン・ヘンダーソン(米国)だ。
 総合格闘技を愛する者の中に、エメリヤーエンコ・ヒョードルの名を知らぬ者はいないだろう。
 2000年代前半、PRIDE隆盛時に、アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル)、ミルコ・クロコップ(クロアチア)らに相次いで勝利し、「ヘビー級最強」、いや「人類最強」と謳われた男だ。

 だが、いつまでも最強でいられるわけではなかった。昨年6月、ヒョードルは、SFの舞台でファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)と闘い、三角絞めを決められて一本負けを喫してしまう。続く今年2月、同じくSFでのアントニオ・シウバ(ブラジル)戦でもTKOで敗れた。
 皇帝ヒョードル、まさかの連敗。これにより、「ヒョードル時代」の幕は下ろされた。本人も弱気になり、試合直後には引退を示唆する言葉も口にしていた。

 そんなヒョードルだったが、ロシアに帰国した後に思い直した。まだ34歳……老け込む年齢ではない。敗戦から3週間後にはトレーニングを再開、親しい友人に対して、「もう一度やってみるよ」と話すようになっていた。

 私もヒョードルが、あのまま引退するとは思えなかった。戦場に戻ってくることは確信していたが、それでも再起戦は今年の秋以降だろうと考えていた。予想以上に早いカムバックである。

 米国の総合格闘技のマッチメイクの良いところは妥協のなさである。日本のプロモーターなら復帰戦には、もう少しイージーな相手を選ぶだろう。ウェイト面を考えれば、ヒョードルに対してヘンダーソンは軽量の選手である。常にヘビー級で闘ってきたヒョードルに対して、ヘンダーソンの主戦場はミドル級だった。しかし、ヘンダーソンは侮れる相手ではない。

 かつてのPRIDEのリングで闘っていたヒョードルなら、軽量のヘンダーソンは敵ではなかっただろう。しかし、いまは違う。
 当然、ヘンダーソンは、ヒョードルが敗れた2試合を観ている。その中で、彼は「ヒョードルは以前ほどに危険な相手ではない」と感じているはずだ。もはや、皇帝にメンタルにおけるアドバンテージはない。私は、この試合、ヘンダーソンの勝利を予想する。

 ケージはリングよりも広い。その特性をヘンダーソンは存分に生かし、前に出てくるヒョードルの打撃を巧みにかわすだろう。決め技に強さを持つわけではないヘンダーソンだが、打撃のテクニックは高度である。加えてスタミナもあるので狙うは後半勝負だろう。判定でヘンダーソンが勝つのではないか。
 ヒョードルの現在のコンディションを考える前に、ヘンダーソンの精神的優位性に着目しての予想だ。

 もし、私の予想を覆してヒョードルが勝てれば、復権への道は残される。だがヘンダーソンに敗れれば、今度こそ本当に引退してしまうかもしれない。ヒョードルが生き残りを賭けての大一番となる「レジェンド対決」。これは見逃せない。

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近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー〜小林繁物語〜』(竹書房)ほか。最新著『キミはもっと速く走れる!』(汐文社)が好評発売中。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)
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