12日、日本陸上競技連盟は理事会および評議員会でロンドン五輪マラソン代表を選考し、男女各3人を発表した。注目された男子は2月の東京マラソンで日本人選手として5年ぶりの2時間7分台を叩き出した藤原新(東京陸連)、3月のびわ湖毎日マラソンで一般出場ながら日本人トップの4位となった山本亮(佐川急便)、山本に続いて5位に入った中本健太郎(安川電機)が選ばれた。一方、女子は1月の大阪国際マラソンで2時間23分23秒の好タイムで優勝した重友梨佐(天満屋)、昨年11月の横浜国際で初優勝した木崎良子(ダイハツ)、そしてその木崎に終盤での逆転を許したものの、昨日のナゴヤウィメンズで日本人トップの2位に入った尾崎好美(第一生命)が選出された。6人はいずれも初出場となる。
(写真:晴れて五輪代表に選出された藤原新)
 補欠はいずれも昨年の世界陸上で日本人トップで入賞した堀端宏行(旭化成)、赤羽有紀子(ホクレン)となった。1月の福岡国際マラソンで日本人トップの3位だった“公務員ランナー”川内優輝(埼玉県庁)は、東京マラソンでは14位に終わったこともあり、落選した。

 今夏、ロンドン最大の観光名所であるバッキンガム宮殿に続くマル通りのスタート地点に立つ6人がついに決まった。今回の選考で男女ともに注目を集めたのは、「3人目に誰が選ばれるのか」だった。男子は選考レースの結果、内容ともに申し分のなかった藤原、山本が順当に選出される。そして残る1枠を、昨年の世界選手権7位入賞の堀畑、福岡国際で日本人トップの3位に入った川内、びわ湖毎日で5位に入った中本が争うかたちとなった。

 選考の結果、残る1枠を射止めたのは中本だった。4日のびわ湖毎日ではレース終盤に山本に日本人トップの座を奪われて悔しい表情を見せていた中本。しかし、山本同様に雨天、低温という悪コンディションの中で、自己ベストの2時間8分53秒を記録したことが評価された。河野匡日本陸連強化委員会副委員長が「マラソンをまとめ上げる力、安定感が魅力」と語ったように、中本はびわ湖毎日でも中盤以降に勝負をかけるレース巧者ぶりを見せた。29歳とベテランの域に達しつつあるが、河野副委員長は「過去のレースを見ても、まだ成長を感じさせる」と伸びしろに期待する。昨年の世界選手権では真夏のレースの中、日本人2位の力走を見せるなど、マラソン出場8度という豊富な経験はロンドンでも生きるはずだ。
 
 また今回、最も世間の関心を集めたのは、福岡国際で日本人トップという結果を残しながら、東京で惨敗した川内だった。河野副委員長は3人目の選考について「選考における順位付けで、川内、中本、堀畑の3人で悩んだ」と明かした。理事会では川内の代表入りを推す声もあったという。しかし、結果は補欠にも選出されなかった。東京での惨敗が選出に至らなかった理由かという記者の問いに、河野副委員長は「(東京は)マイナスにはなっていない。(選考レースの)結果を受け止めただけ」と否定した。だが、福岡国際での川内のタイム(2時間9分57秒)は、補欠に入った堀端の世界選手権(2時間11分52秒)、びわ湖(2時間10分05秒)のタイムを上回っている。では、理事会は何を基準にしたのか。それは2人が同じ条件下で走った世界選手権だった。堀端は日本人トップの7位入賞と言う結果を出したが、川内は18位に終わっている。結局は、これが決め手となった。
(写真:左から河野強化委員会副委員長、緒縣専務理事、高野強化委員長)

 一方、女子も順当に代表入りした重友、木崎に続く3人目に焦点が置かれた。結果的に、3枚目の切符を掴んだのは、世界選手権5位の赤羽ではなく、名古屋2位の尾崎だった。11年世界選手権では18位、横浜国際は木崎に日本人トップの座を明け渡した尾崎。しかし、彼女は諦めなかった。最後のチャンスとなった名古屋に出場し、見事、日本人トップの2位という結果を残した。河野強化委員会副委員長は、「名古屋の結果が尾崎のほうが上だった」と選考理由を説明。まさに“3度目の正直”となった。尾崎は「(3度の選考レースに)挑戦してよかったと思う。(選ばれた瞬間は)泣きそうでした」と代表入りの喜びを語った。

 いずれも初出場とフレッシュな顔ぶれとなったロンドン五輪マラソン代表。男子は2大会ぶりの入賞とバルセロナ五輪以来のメダル獲得、女子は2大会ぶりのメダル獲得を目指す。高野進日本陸連強化委員長は「(五輪で)最高のパフォーマンスができるように、陸連として土台を作りあげ、男女各3名の最高の調子に合わせられるようにしていきたい」と代表選手の最大限のサポートを約束した。
 ロンドンへの切符争いは決着した。今後は高野強化委員長の言葉どおり、いかに五輪にベストの状態で臨めるかが最大のテーマとなる。本番まで残り4カ月。代表選手は、コンディショニング調整という自分との戦いに挑む。