欧州遠征中のラグビー日本代表(IRBランキング16位)は10日、ブカレストでルーマニア代表(同18位)と対戦し、34−23で勝利した。これまで日本は敵地で欧州勢に対し、0勝26敗と1度も勝ったことがなく、記念すべき初勝利。前半を17−9とリードして折り返すと、一時は1点差に詰め寄られながら、再び突き放して逃げ切った。「世界でトップ10入り」を目標に掲げるエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)が就任1年目で着実に成果を出した。
「2015年(のW杯)に向けて重要なツアー」とジョーンズHCが位置づけた欧州遠征の最初の一戦で結果を残した。

 日本は立ち上がりから相手の強力FW陣に押し込まれる場面が目立つも、素早いボール回しで相手陣内に攻め入る。お互いのミスに乗じてPGを取り合い、9−9と一進一退の攻防が続いた。

 流れをつかんだのは前半終了間際。ボールを右に左に動かして、相手の反則を誘い、PGで12−9と勝ち越す。さらにロスタイムに入っても日本は攻め続け、最後は右から中央、そして左サイドへと大きく振って、No.8の菊谷崇がゴール左隅に飛び込んだ。この試合、初トライで17−9と点差を広げて後半に突入する。

 後半に入っても日本はルーマニアをスピードで上回って敵陣内でプレーを続けるが、体格で勝る相手にゴール前の最後のラインを突破できない。15分には中央のスクラムで押し込まれたミスにつけこまれ、トライを許す。その後のゴールも決められ、1点差に迫られる。

 これまでの日本であれば、終盤は相手の圧力に屈し、失速してひっくり返されるところ。だが、エディージャパンは就任以来、「残り15分でどういうプレーができるか」をテーマにフィジカル強化を進めており、選手たちの動きは落ちない。残り15分を切った29分には相手の分厚い守りの壁を粘り強く押し込み、トライ。3分後にはルーマニアにトライを奪われて再び1点差になったが、36分にベテランが勝負を決める。

 WTB小野澤宏時が華麗なステップで縦に抜けて、チャンスを演出すると、ゴール前の密集でSH田中史朗がタイミングよくパスを出す。これを受けた小野澤が相手守備網のギャップを突き、ゴール中央右へ駆け込んだ。日本は終了間際にもダメ押しのPGを決め、勝負どころの時間帯で突き放して歴史的勝利を収めた。

「スクラム、モール、キックをどんどん使ってくる。そういう相手にいかに戦えるか」
 遠征前、ジョーンズHCが掲げたテーマに対し、日本はフィジカルと展開の速さで上回った。欧州遠征では次戦(17日)のグルジア代表戦を含め、あと3試合が予定されている。この快挙を1回だけでは終わらせない。