2019年に日本で開催されるラグビーW杯の運営主体となる「ラグビーワールドカップ2019組織委員会」の第2回理事会が20日、都内ホテルで開催された。5月の第1回に続く会合となった今回は、試合開催会場の選定方針やスケジュールが決定。また大会ビジョンを全国のラグビー関係者やラグビーファンが参加するかたちで策定することが決まった。組織委の会長を務める日本経団連の御手洗冨士夫名誉会長(キャノン会長兼社長)は理事会後の会見で、「大きな国際大会のビジョンを広く意見を出し合って決めるのは日本のスポーツ史でも例のないことだと思う。全国のラグビーに関わる人たちの総力でつくりあげる大会にしたい」と狙いを明かした。
(写真:会見に臨む(左から)竹田副会長、御手洗会長、森副会長)
 2019年の大会会場は、4年前の早い段階に決定する。それが組織委がこの日打ち出した方針だ。あと3年を切った2015年のイングランド大会の試合会場は、まだ決まっておらず、これだけ早期に開催場所を確定させるのは、ラグビーW杯ではあまり例がない。

 その理由を御手洗会長は「早いタイミングで試合会場を決めることで、開催自治体が予算措置を含めた準備を早期に開始できる。15年のイングランドW杯も視察できる」と説明した。日本のスタジアムは自治体が所有するものが多く、組織委事務局も「(大会成功には)自治体とのリレーションが大事」と明かす。4年前に会場を決定することにより、新規に建設するスタジアムをどう評価するかは難しくなるが、必要に応じたスタジアムの改修や大会を盛り上げるプロモーション活動などに時間をかけられる利点を選んだ。

 既に10月には試合開催に関心のある自治体を対象に、東京、大阪、福岡でワークショップを実施。37の自治体が参加した。そこで出た意見や質問などを元に、日本ラグビー協会、文部科学省、日本スポーツ振興センター、Jリーグの各団体からなる試合会場選定方針会議を3度に渡って開き、この日までに大枠がまとまった。

 会場の選定方針は
・日本に豊かなフットボール文化を醸成できるスタジアムや施設を整備する。
・開催地のスポーツ文化をさらに普及・発展させ、盛り上げる。
・選手やマッチオフィシャル、観客、運営担当者、開催地の住民などラグビーW杯に関わる全ての人に夢や感動、喜びを提供する。
・スポーツの力で開催地の活力を増進し、地域の発展に貢献する。
・ナショナルプロジェクトとしての地域バランスを考慮する。
・全国津々浦々までラグビーW杯の熱狂を広げ、日本中にその恩恵をもたらす。
 の6つ。今後はこの方針に基づいて来年5月までに選定ガイドラインを作成。開催希望自治体を募り、14年3月末に受付を締め切る。その後、約1年間をかけて組織委が候補地を視察した上で、15年5月をメドに10〜12の開催会場を発表する予定だ。

 メイン会場については現在、改修へ動き出している国立競技場とする計画は従来通り変わっていない。組織委の副会長でもあるラグビー協会の森喜朗会長は、「財務省の中には“(2020年の東京)オリンピックが決まらないのに予算措置ができるか”という人もいる。でもオリンピックの開催地が決まるのは来年の9月。それから改修にとりかかっていては2019年に間に合わない」と、来年度から改修に着手するよう働きかける構えだ。

 また大会ビジョンについては年明けより、競技者や指導者などのラグビー関係者への調査はもちろん、インターネットなどを通じてファンからも意見を集める。これに各自治体など大会に関わる関係者へのヒアリングも踏まえて、組織委内で検討し、最終決定する。次回の理事会は来年5月に開かれ、大会ビジョンや試合会場選定のガイドラインなどが発表される見込みだ。