第89回東京箱根間往復大学駅伝競走は2日、第1日目となる往路5区間(108.0キロ)でレースが行われ、日本体育大が往路を26年ぶりに制した。日体大は1区7位から2区で3位に上がると、その後は上位をキープ。2位で襷を受けた5区の服部翔大が1位・東洋大を逆転し、往路優勝を達成。30年ぶりの総合優勝に向けて、明日はトップで芦ノ湖をスタートする。2位には1区で17位と出遅れたものの、後続のランナーで巻き返した早稲田大が入った。史上初の往路5連覇を狙った東洋大は4区までリードをしていたものの、3位でフィニッシュした。昨年11月の全日本大学駅伝対校選手権大会を制し、優勝候補にもあげられていた駒澤大は9位に終わった。
 1区は各校のランナーが牽制し合い1キロは3分8秒と慎重なスタートとなった。膠着状態から仕掛けたのは、優勝候補筆頭の東洋大。7.3キロ過ぎで2年生の田口雅也が飛び出し、徐々に集団が縦長に分かれていった。昨年、1年生ながら4区で区間賞を獲得した田口がレースを引っ張る。13キロ過ぎで、集団に追いつかれるが、「15キロ過ぎが目安だった」と、16キロ手前で再び突き放しにかかり、19キロ過ぎで独走。田口の区間賞の走りで、東洋大は往路5連覇に向けて、好スタートを切った。2位、3位には明治大、法政大が入り、東洋大の対抗と目されていた駒大は25秒差の4位で襷をつないだ。また、上位に予想された早大、青山学院大は17位、18位と大きく出遅れた。

 各校のエースが揃う“花の2区”を、トップで襷を継いだ設楽啓太(東洋大)が快調なペースを刻み、さらにリードを広げる。3年連続でエース区間を走り、経験も申し分ない実力者だ。しかし、ケニア人留学生が圧巻の走りを見せる。初の箱根を走るエノック・オムワンバ(山梨学院大)は16位で襷を受けると、12人のごぼう抜きで4位に順位を押し上げた。そのオムワンバを46秒上回る1時間8分46秒のタイムで区間賞を獲得したのは、ガンドゥ・ベンジャミン(日本大)。首位と1分42秒差の13位でスタートしたベンジャミンは、序盤から飛ばし、前を走るランナーたちを次々かわしていく。最後まで力強い走りで、鶴見中継所直前で設楽啓を抜き、先頭で襷リレーを果たす。オムワンバと同じ12人抜きで、ベンジャミンは最後の箱根路を見事に1番で走り抜けた。

 3区の走者たちを苦しめたのは自然の猛威だった。強風が吹き荒れ、時に砂塵が舞い、視界を奪った。悪条件の中、前評判の高かった強豪校が地力を発揮。東洋大は、双子の兄から1秒差の2位で襷を受けた悠太が、区間賞の快走でトップを奪う。湘南海岸沿いでは「びっくりした」というほどの横からの強風を浴び、蛇行しながら風をよけた。タイムは伸びなかったが、2位に2分41秒の差をつけて、初の箱根駅伝となる淀川弦太(2年)に襷を渡した。5位スタートの駒大は2年生の中村匠吾が区間3位の走りで順位を3つ上げた。12位の早大も3年生エースが活躍。1万メートルの学生トップランナーでもある大迫傑が9人抜きで3位に浮上、名門の意地を見せた。

 東洋大の4区・淀川は差を詰められるも、同じく初の箱根路となる定方俊樹にトップで襷を繋いだ。ここ4年間、箱根の山上り5区で絶対的な強さを誇った東洋大。その立役者・柏原竜二(現富士通)が抜け、5区は今大会のキーポイントとなっていた。大方の予想通り、往路の最終区でドラマが待っていた。

 まずは1分49秒差の2位スタートの日体大の服部が定方をじわりじわりと追いつめる。続く3位スタートの早大がさらに展開を動かす。渡辺康幸監督が“小さな怪獣”と称した山本修平は2年連続の山上り。山本は12キロ過ぎで服部に追いつき、そこから2人の並走が続く。2人のデッドヒートは14.4キロではトップの定方をも飲み込む。

 最初に定方が三つ巴の争いから脱落すると、再び服部対山本のマッチレースとなった。3年生エースで主将の服部が17キロ手前で仕掛け、山本を突き放す。独走状態に入った後も、風速5メートルを超える強風が、服部の行く手に立ちふさがるがトップは譲らない。2位との差をどんどん広げ、区間賞を獲得する走りで往路Vに貢献した。

 日体大は1987年以来の往路優勝。別府健至監督が大学2年生時以来で、「優勝の味を忘れていた」と語った。昨年は19位に終わり、今回は予選会からの出場。「私も含め選手たちが変わらなければいけないと思った1年」と振り返った。予選会をトップ通過、往路では見事に昨年の雪辱を果たしたかたちとなった。

 2位で芦ノ湖にたどり着いた早大は、明日の復路で2年ぶりの総合優勝を狙い、日体大の2分35秒後にスタートする。そこから4秒遅れて往路5連覇を阻まれた東洋大。一昨年の三冠王者・早大と、箱根連覇を狙う東洋大は復路にも実力者を揃える。日体大がこのまま逃げ切り、古豪復活なるか、それとも近年の学生駅伝をリードする2校がそれにストップをかけるのか。明日8時号砲の復路にも最後まで目が離せない。

 往路の順位は以下の通り。
(1)日本体育大(2)早稲田大(3)東洋大(4)明治大(5)法政大(6)青山学院大(7)帝京大(8)順天堂大(9)駒澤大(10)関東学連選抜(11)山梨学院大(12)大東文化大(13)中央学院大(14)国学院大(15)日本大(16)上武大(17)東京農大(18)神奈川大
※中央大、城西大は途中棄権のため記録なし