第89回東京箱根間往復大学駅伝競走最終日は3日、神奈川・箱根町の芦ノ湖駐車場前から東京・大手町までの復路5区間(109.9キロ)でレースが行なわれた、前日の往路を26年ぶりに制した日本体育大が、最後までトップを譲ることなく独走。11時間13分26秒で30年ぶり10度目の総合優勝を果たした。連覇を狙った東洋大は2位に終わり、3位には復路を制した駒澤大が入った。
 1年前、9区で繰り上げスタートとなり途切れた伝統の白い襷が、箱根に帰ってきた。復路で一人旅を続け、真っ先に東京・大手町のフィニッシュ地点へ。日体大アンカーの4年生・谷永雄一はガッツポーズでゴールテープを切った。それは古豪復活の瞬間だった。

 優勝をかけた復路のはじまりは、山下りのスペシャリストが集う“山下りの6区”だ。4年連続で6区を任された市川孝徳(東洋大)は、最後の箱根路で初めて3位スタートとなった。東洋大の駅伝主将は1位の日体大の鈴木悠介、2位の早稲田大の相原将仁の背中を追った。昨年は区間賞を獲得し、「最低でも58分台。区間記録(58分11秒)にチャレンジして自分の名前を刻みたい」とレース前に語っていた市川は、序盤から積極的に飛ばした。

 すぐさま相原を抜いて2位に浮上、先頭の鈴木との差をぐんぐん詰める。5.1キロ地点の芦之湯では、その差を一気に30秒縮めた。しかし、前半に突っ込んだ分だけ後半は伸びを欠いた。逆に鈴木は「自分の仕事を果たせばいい」と、冷静な走りで後半は差を広げた。市川は区間4位の走りで日体大との差を17秒削ったが、依然として日体大の優位は動かない。

 2分以上前を走る日体大を追いかける東洋大は、7区の高久龍と8区の大津顕杜が序盤から飛ばして、巻き返しを図る。しかし、オーバーペースがたたり中盤以降にタイム落とすと、日体大の7区・高田翔二、8区・高柳祐也はともに区間2位の走りで、その差は29秒、21秒と広がるばかりだった。

 逃げる日体大は、その後も焦る東洋大を尻目に落ち着いた走りで、箱根路を駆け抜けた。続く9区でも、矢野圭吾が服部勇馬を突き放し、10区の谷永も富岡司に付け入るスキを与えなかった。日体大は、2位の東洋大・酒井俊幸監督が「完敗でした」と語る4分54秒の差をつけ、圧勝で30年ぶりの栄冠を手にした。予選会からの出場での優勝は1997年の神奈川大に次ぐ史上2校目の快挙だ。

 昨年は同校史上最低の19位に終わり、別府健至監督は涙した。「あの時の涙がウソにならないように本気で取り組んできた」と、競技のみに限らず生活面も徹底指導し、チームを変えた。主将には3年生の服部翔大を任命する大きな賭けに出た。

 別府監督は、「キャプテンは3年生だったけど、4年生がしっかりと支えてくれた」と語り、服部が「苦労した部分もありましたが、一丸となって頑張ってこれました」と振り返るなど、改革はうまくハマった。服部はエースとしても、5区区間賞で優勝に貢献、大会MVPにあたる金栗杯を獲得した。3年生主将は「強い日体大を復活させる」と古豪復活を力強く宣言した。

 前評判で2強と目された東洋大は2位、駒大は3位に終わった。連覇を逃した東洋大は、今シーズンの三大学生駅伝はすべて2位。常に優勝争いに絡む安定感はあったものの、絶対的な強さはなかった。一方の駒大は往路9位と出遅れたが、復路では6区の千葉健太、9区の上野渉、10区の後藤田健介が区間賞を獲得するなど、3年ぶりの復路制覇。優勝候補の意地を見せた。両校に加え、日体大もエースは3年生で、実力のある下級生が出てきている。来シーズンも覇権争いは、この3校を軸に展開されることが予想される。4年生は一区切りとなるが、次の戦いに向けた継走は、もう始まっている。

 シード権争いは、予選会参加校の活躍が目立った。帝京大は、同校最高タイの4位と大健闘。最終10区の熊崎健人が、早大の田口大貴を何度も振り返りながら、牽制し、最後の直線での一騎打ちを制した。5年ぶりのシード権を獲得した。3年ぶりに出場した法政大は9位に入り7年ぶり、ラスト一枠を山梨学院大と争った中央学院大が4年ぶりの来年の箱根の切符を手にした。一方で往路5区で途中棄権となった中央大は、28年間続けて得ていたシード権を喪失した。

 総合成績は以下の通り。
(1)日本体育大(2)東洋大(3)駒澤大(4)帝京大(5)早稲田大(6)順天堂大(7)明治大(8)青山学院大(9)法政大(10)中央学院大(11)山梨学院大(12)大東文化大(13)関東学連選抜(14)国学院大(15)日本大(16)神奈川大(17)東京農大(18)上武大
※中央大、城西大は往路途中棄権のため記録なし