ラグビー・トップリーグの年間表彰式が28日、東京国際フォーラムで行われ、MVPには優勝したサントリーサンゴリアスのジョージ・スミスが2年連続で選ばれた。最多トライゲッターはリーグ新記録の20トライをあげたパナソニックワイルドナイツの山田章仁。得点王(160得点)とベストキッカー(155得点)にはヤマハ発動機ジュビロの五郎丸歩が2年連続で輝いた。新人王にはトヨタ自動車ヴェルブリッツの吉田康平が選出された。
(写真:「サントリーでプレーできて光栄。成功するのにふさわしいチーム」と話すスミス)
 前日、東芝ブレイブルーパスとのプレーオフ決勝を制し、トップリーグで史上初の全勝優勝を果たしたサントリー。名将エディー・ジョーンズ(現日本代表HC)の後を引き継いだ大久保直弥監督は「キャプテンを中心に80分間、自分たちを信じて戦ったこと」を勝因にあげた。今季のテーマは“昨年のチームを超える”。まさに目標を最高のかたちで達成し、キャプテンの真壁伸弥は「日々の練習でチームの皆が一日一日、懸命な努力を続けてくれた」と、チームメイトを称えた。2年連続となるMVPを獲得したスミスは指揮官に対し、「チームで尊敬されていて、コーチやプレイヤーに常に高い基準を求める。サントリーラグビーに欠かせない」と全幅の信頼を置いている。監督、選手がひとつになった優勝と言えるだろう。

 2月には3連覇に挑む日本選手権が控える。指揮官が変わっても、ボールをキープして、攻め続けるアタッキングラグビーは健在。プレーオフ決勝では、2年目のWTBの村田大志が2トライをあげる活躍を見せるなど、選手層もさらに厚みを増した。サントリーの黄金時代はまだまだ続きそうだ。

 最多トライゲッターは、ネマニ・ナドロ(NEC)と同僚の北川智規が持つ19トライを上回る20トライで記録を更新した山田が初受賞した。20個のトライのうち、本人が一番、印象に残っているトライはリーグ最終節キャノンイーグルス戦での2トライ目、新記録達成の瞬間をあげた。トライの内容云々ではなく、「(新記録の)期待に応えられた」と、プレッシャーのかかるなかで成果を出したことに胸を張った。

  今季、山田はXリーグのノジマ相模原ライズでもプレーし、アメリカンフットボールとの“二刀流”に挑戦した。他競技の経験は、グラウンド上の技術において、視野が広がることにつながったという。2つのスポーツに挑戦することにより、周囲から批判的な声もあった。だが、山田は言い訳のできない環境下で、それらもエネルギーにし、見事にトップリーグ記録を樹立するという結果を残した。来季も“二刀流”を継続するかについては、「チャンスがあればやりたい」と前向きな様子を見せた。

 ただ、個人タイトルは掴んだものの、チームはトップリーグ3位に終わった。2月から始まる日本選手権でチームでは3年ぶりの覇権奪還を目指す。大会に向けては「ボールを多く触れるように“山田”の出演時間を増やしたい」と、独特の表現で活躍を誓った。
(写真:チームメイトや代表のライバルに「一歩でも近づけるように」と謙虚に語る山田)

 10年目の今季のトップリーグはプレーオフも合わせて歴代2位の36万2068人の観客動員をあげ、4季ぶりの増加となった。真下昇チェアマンは「素晴らしい結果が出たシーズン」と、トライ新記録、そして100トライ達成者(小野澤宏時=サントリー)が生まれた今季を総括した。

 近年、オーストラリア代表110キャップを誇るサントリーのスミスや、オールブラックスのジェローム・カイノ(トヨタ自動車)、ソニー・ビル・ウィリアムズ(パナソニック)など、世界的スターが続々と来日し、トップリーグを盛り上げている。一方でリーグからは田中史朗、堀江翔太(ともにパナソニック)、マイケル・リーチ(東芝)が、来季、世界最高峰リーグ「スーパーリーグ」への参戦する。日本のラグビーは節目の10年を迎え、着実に進歩を遂げている。

 世界のラグビーは、昨年のルール改正に伴い、スピードアップ化の方向へ進んでいる。平林泰三レフェリーは、自身の担当したトップリーグの試合の分析結果を例に出し、「試合中のボールリサイクルスピードは、平均3秒。これは南半球の国のテストマッチレベルでも3.7秒、イングランド代表は4.2秒でした」と、日本のラグビーは、世界と比べてもハイテンポであると語った。

 15年のW杯イングランド大会、そして自国開催の19年W杯では、日本らしいスピーディーなラグビーを武器に世界に挑む。それにはさらなる国内リーグでの選手のレベルアップと盛り上がりが欠かせない。来季からトップリーグは2チーム増となり、16チームで争われる。また8チームずつ2プールに分けた2ステージ制と方式も様変わりする。日本のラグビーの新たな扉を開くべく11年目のチャレンジが始まる。

受賞したチーム、選手は以下の通り。

【優勝】
サントリーサンゴリアス 2年連続3回目
【準優勝】
東芝ブレイブルーパス
【3位】
パナソニックワイルドナイツ
神戸製鋼コベルコスティーラーズ
【フェアプレーチーム賞】
福岡サニックスブルース 初
【ベストファンサービス賞】
神戸製鋼コベルコスティーラーズ 9年連続9回目
(写真:優勝カップを誇らしげに掲げる真壁主将)

【リーグMVP】
ジョージ・スミス(サントリー) 2年連続2回目 
【新人賞】
吉田康平(トヨタ自動車)
【最多トライゲッター】
山田章仁(パナソニック) 初
【得点王、ベストキッカー】
五郎丸歩(ヤマハ発動機) 2年連続2回目
【ベストホイッスル】
平林泰三 3年連続4回目
(写真:得点王&ベストキッカーのW受賞の五郎丸)

【ベストフィフティーン】
PR1 安江祥光(神戸製鋼) 初
HO  青木祐輔(サントリー) 4年ぶり3回目
PR3 畠山健介(サントリー) 5年連続5回目
LO  大野均(東芝) 7年連続8回目
LO  真壁伸弥(サントリー) 3年ぶり2回目
FL  ジョージ・スミス(サントリー) 2年連続2回目
FL  マイケル・リーチ(東芝) 2年連続2回目
No.8 菊谷崇(トヨタ自動車) 3年ぶり2回目
SH  日和佐篤(サントリー) 2年連続2回目
SO  小野昇征(サントリー) 2年連続2回目 ※CTBで1回
WTB 山田章仁(パナソニック) 2年ぶり2回目
WTB 小野澤宏時(サントリー) 2年ぶり8回目
CTB ジャック・フーリー(パナソニック) 2年連続2回目
CTB マレ・サウ(ヤマハ発動機) 初
FB  五郎丸歩(ヤマハ発動機) 2年連続2回目

【特別賞】
・リーグ戦100トライ達成選手
小野澤宏時(サントリー)
・リーグ戦100試合出場達成選手
浅野良太(NEC)
窪田幸一郎(NEC)
佐藤貴志(神戸製鋼)
松原裕司(神戸製鋼)
麻田一平(トヨタ自動車)
菊谷崇(トヨタ自動車)
三宅敬(パナソニック)
古賀龍二(福岡サニックス)
大田尾竜彦(ヤマハ発動機)
山村亮(ヤマハ発動機)
(写真:通算100Tについて、「家族からのプレッシャーが強かった」と漏らす小野澤)