柔道の女子日本代表の園田隆二監督は31日、選手たちに暴力を振るうなどの行為をしていた問題で辞任を表明した。全日本柔道連盟は前日の会見で、本人が反省している点を踏まえ、監督続投の意向を示していたが、園田監督が全柔連に進退伺を提出する。
 15名の選手から告発を受け、これだけの大きな騒動となっては辞任は当然だろう。むしろ、全柔連の対応のまずさが、混乱に拍車をかけてしまったのではないか。園田監督の暴力行為を全柔連が把握したのは昨年の秋。しかし、その後、全柔連は11月に監督の留任を発表し、厳重注意にとどめていた。

 しかし、選手たちはこれでは何も変わらないと感じたのだろう。12月に今度は日本オリンピック委員会(JOC)へ園田監督らの暴行や暴言を告発。これを受けて全柔連は再び調査を行い、監督、コーチを1月19日に戒告処分としたが、その事実を明らかにしてこなかった。

 そして、今回の問題が発覚した後も、全柔連は2月5日からの欧州遠征を園田監督の下で予定通り進めようとしていた。だが、選手たちが自らの立場が危うくなることも顧みず、集団で訴えた事実を全柔連は軽く見過ぎていたのではないか。理不尽な扱いを受け、監督との信頼関係が崩れてしまった中で、いくら強化に励んでも選手たちはついていけない。実際に試合をする選手よりも、組織の体面を優先した発想が、かえって問題を大きくしてしまった。

 講道館柔道の創始者である嘉納治五郎は「精力善用」「自他共栄」の精神を柔道家に求めている。この言葉を改めて噛みしめ、組織も指導者も選手とともに歩む体制づくりができなければ、日本柔道の未来は暗い。