巨人の大森剛育成部ディレクターは1990年、慶大からドラフト1位で入団した。この年は当たり年で、1位組には野茂英雄、佐々木主浩、佐々岡真司、潮崎哲也、小宮山悟、西村龍次、与田剛、葛西稔、酒井光次郎ら錚々たる顔ぶれが並ぶ。

 彼らに比べると、大森のプロでの数字は見劣りする。巨人、近鉄で8年間プレーし、通算29安打、5本塁打、16打点。学生時代は懐が深く、柔らかいバッティングに定評があったが、プロでは通用しなかった。

 過日、久しぶりに大森に会った。ファームを統括するようになって、喫煙者が多いことに頭を痛めていると語っていた。「タバコをやめるくらいなら、野球をやめます」と冗談まじりに言ってのけた選手もいたらしい。

 かくいう大森も現役時代はタバコを吸っていた。酒も飲んでいた。学生時代は「野球さえうまけりゃいいんだろう」という気持ちだったという。

 現役引退後にタバコをやめた。酒量も減った。「若い時に、もっと自分の体を考えていれば……」。今になってそう思う。「だから若い選手には言うんです。“オレの話を聞け。なぜプロで失敗したかがわかるから”って」。反面教師にしろ、というわけだ。

 2月1日からキャンプがスタートする。長くプロ野球で活躍できる選手は総じて健康やコンディショニングへの意識が高い。「今年入団した新人選手は7人ともタバコを吸わないという。喫煙者ゼロなんて、巨人軍始まって以来じゃないですか」と大森。果たしてカープはどうだろうか……。

(このコーナーは書籍編集者・上田哲之さんと交代で毎週木曜に更新します)
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