国際オリンピック委員会(IOC)は29日、ロシアのサンクトペテルブルクで理事会を開き、2020年夏季五輪の実施競技追加候補を8競技からレスリング、野球・ソフトボール、スカッシュの3競技に絞った。ジャック・ロゲ会長を除くIOC理事14人の投票により、第1回アテネ大会からの伝統競技のレスリング、3大会ぶりの復帰を目指す野球・ソフトボール、決まれば初採用となるスカッシュが最終候補に残った。9月のアルゼンチンのブエノスアイレスでのIOC総会で、東京が候補に挙がっている開催地とともに追加競技の1つが決定する。
「レスリング」。会見で、その名を最初に読み上げられると、国際レスリング連盟(FILA)のネナド・ラロビッチ会長ら関係者は立ち上がって喜びを露わにした。選手を代表して、現地でロビー活動を行った吉田沙保里も「一番、最初にレスリングと呼ばれて、本当に跳び上がるほどうれしかった」と、安堵の表情を見せた。

 3カ月半前、レスリング界に衝撃が走った。オリンピック競技からの除外の可能性――。2月にスイスのローザンヌでの理事会で20年夏季五輪の「中核競技」の25競技が選出され、その中に「レスリング」の文字はなかった。追加候補の8競技の中には滑り込んだが、残り1枠を巡る争いに敗れれば、20年のオリンピックからは姿を消すことになる。

 今回の理事会に向けて、FILAは会長がラファエル・マルティネッティからラロビッチに代わった。組織改革に加え、ルール変更を断行するなど、生き残りへのアピールが実った。1回目の投票で8票を獲得、過半数に達し、いの一番に当選を果たした。“オリンピック残留”へと望みを残したかたちとなった。

 残りの2競技には、野球・ソフトボールとスカッシュが入った。北京五輪以来、3大会ぶりの復帰を目指している野球とソフトボールは団体を統合し、世界野球ソフトボール連盟を創った。両競技が手を組むことにより、男女の参加という方向性を示した。一方のスカッシュは、追加競技の候補は3度目。ロンドン、リオデジャネイロ五輪では採用されず涙を飲んだ。悲願の五輪競技入りに向けて、ルール改正を行ない、ガラス張りのコートを普及。テレビ放映を意識した改革で一歩前進した。

 最終決戦では100人を超えるIOC委員の投票で、東京、マドリード、イスタンブールの3都市が争う開催地とともに、レスリング、野球・ソフトボール、スカッシュの3競技の中から、1つだけが選ばれる。伝統競技レスリングが生き残るか、日本では馴染み深い野球とソフトボールの復活か、新競技となるスカッシュか。各競技のアピールは続く。注目の結審は9月7日から開かれるブエノスアイレスでのIOC総会で下される。