全日本柔道連盟は24日、都内で臨時理事会を開き、上村春樹会長が会見で組織改革のメドが立った時点で会長を辞任する考えを表明した。全柔連では女子代表選手に対する指導者のパワーハラスメントや、男性理事のセクシャルハラスメント、日本スポーツ振興センターからの助成金不正受給など不祥事が相次いでおり、上村会長にはトップとしての責任が問われていた。
 当然の辞意表明とはいえ、改革への道のりはまだまだ遠いと感じずにはいられない。
 このところの不祥事に対する全柔連の対応で明るみに出たのはガバナンスの欠如だった。昨年末、女子代表選手らがJOCへ、当時の園田隆二監督のパワハラ行為を告発した際には、最初は指導者を戒告処分にとどめ、その事実を明らかにしなかった。

 指導者向けの助成金に関しては、5年間で27名が計3620万円を指導の実態がないにもかかわらず受け取っていた。さらに全柔連が指導者から助成金の一部を徴収した強化留保金が3345万円にのぼるという目的外利用も判明した。上村会長は4月末の時点で、問題を調査した第三者委員会の中間報告を受け、引責辞任を示唆。しかし、一転、翻意して6月11日の理事会後には会長職を続ける意思を明らかにしていた。

 加えて全柔連は第三者委員会に対して、3度に渡って「要望書」を送り、反論を展開。組織全体ではなく、あくまでも一部の問題にとどめようとする姿勢に対し、第三者委員会から批判があがっていた。さらには5月に公益法人資格を審査する内閣府の公益認定等委員会に提出した不祥事に関する報告書の内容も不十分で、異例の再提出を求められるありさまだった。

 第三者委員会は21日に発表した最終報告書の中で、上村会長にも責任があるとの結論に達し、全柔連上層部の体質が改善されていない点を指摘した。現場や関係者からも上村会長ら執行部の対応に不満が出ており、その声は無視できないものになっていた。

 この日の理事会では初の女性理事として、シドニー五輪、アテネ五輪と女子48キロ級を連覇した谷亮子参議院議員、女子72キロ級でバルセロナ五輪、アトランタ五輪と銀メダルを獲得した日大の田辺陽子准教授、全柔連で「暴力の根絶プロジェクト」委員を務める北田典子氏を登用した。組織変革にようやく乗り出したとはいえ、上村会長は自身の辞任のタイミングである「改革のメド」が立つのは4、5カ月先との認識だ。

 辞めることが決まっているリーダーがいくら旗を振ったところで話は前へ進まない。まずは上層部を一新し、新体制の下で改革を進めるのが本来の道筋だ。このままでは昨夏のロンドン五輪で金メダル1個に終わったお家芸の復活も心もとない。