二宮: 京谷さんが目指す指導者像とは?

京谷: 僕が一番注目して見ているのは、古河電工(現ジェフユナイテッド千葉)時代にコーチとして指導していただいた岡田武史さんですね。Jリーグでは横浜F・マリノスをリーグ史上初の3ステージ連覇に導きました。日本代表監督としては2度もW杯で指揮を執り、2010年南アフリカW杯ではベスト8進出を果たしました。これだけの功績を残しながら、今度はサッカー後進国である中国での指導の道を自ら選んだ。そんな岡田さんには、聞きたいことがたくさんあります。

 

二宮: コーチ時代の岡田さんの指導はどうでしたか?

京谷: 指示がすごく的確で、いつもいろんなことを考えているという印象がありましたね。選手ひとり一人を本当によく見ていて、選手とのコミュニケーションを非常に大事にされている方でした。僕が1年目でトップチームに上がることができたのも、おそらく2軍を指導していた岡田さんが監督に話をしてくれたんだと思います。

 

二宮: 京谷さんの同級生では、相馬直樹さんがモンテディオ山形、田坂和昭さんが大分トリニータの監督を務めています。彼らの存在も刺激となっているのでは?

京谷: それはありますね。木山隆之(現ヴィッセル神戸コーチ)もJ2の水戸ホーリーホック、そして昨季はジェフの監督を務めていました。彼らとはユース時代からずっと一緒にやっていましたから、すごく刺激になっていますね。

 

二宮: 昨年引退した藤田俊哉さんも京谷さんと同級生ですね。彼はオランダで指導者の道をスタートさせる予定です。

京谷: はい、とても大きなチャレンジですよね。俊哉とは小学校時代からの付き合いで、大の親友なんです。彼は将来、欧州リーグの監督となるのが目標だそうです。俊哉がオランダでどんな指導者となるのか楽しみですし、僕も負けてられないという気持ちになりますね。将来、僕が高校や大学で育てた選手が、同級生が監督を務めるJリーグや海外のリーグ、そして日本代表で活躍してくれたら最高です。

 

「運動の和」でスポーツ推進

 

二宮: さて、京谷さんはさまざまな活動をされていますが、そのひとつとして一般社団法人「運動の和」の理事を務めています。「運動の和」のコンセプトとは?

京谷: 子どもから大人まで、みんながスポーツを楽しめるようにしたい、というのが一番の狙いです。将来的には総合型のスポーツクラブを立ち上げたいと考えています。

 

二宮: 現在はどんな活動をしているのでしょう?

京谷: メンバーにはコーチングスタッフやサポートスタッフとして、元全日本バレーボールの狩野美雪さんをはじめ、ハンドボールや新体操、バスケットボール、車椅子バスケットボールの元選手や現役選手がいます。彼(女)らが講師として地域や学校に行き、一緒にスポーツを楽しむイベントを行なったりしています。今は主に千葉県を拠点に活動していますが、ゆくゆくは全国に広げていきたいと思っています。

 

二宮: 日本はスポーツ立国を目指して2011年には「スポーツ基本法」が施行され、スポーツ庁創設も検討されています。そして20年の五輪開催地が今年9月に決定されますが、もし東京開催となれば、さらにスポーツを推進しようという気運が高まるはずです。こうした中、「運動の和」のような草の根活動は非常に重要です。国民の日常生活にスポーツの存在があってこそ、真のスポーツ立国であり、五輪を盛り上げる力が生まれるのです。

京谷: スポーツには国や人を明るくする力があると僕は思っています。そのことをもっと多くの人に知ってもらいたい。「運動の和」の活動が、そのきっかけとなってくれたら嬉しいですね。

 

(おわり)

 

京谷和幸(きょうや・かずゆき)プロフィール>

1971年8月13日、北海道生まれ。小学2年からサッカーを始め、室蘭大谷高校時代にはインターハイ2回、高校選手権3回、国民体育大会3回出場。3年時の選手権では優秀選手に選ばれた。2年時にはユース代表、3年時にはバルセロナオリンピック代表候補にも選ばれるなど、将来を嘱望されていた。高校卒業後、古河電工(現ジェフユナイテッド千葉)に入団したが、93年に自動車事故で引退。94年から車椅子バスケットボールチームの千葉ホークスに所属し、全国車椅子バスケットボール選手権大会で8度の優勝を経験。日本代表としてはシドニー、アテネ、北京、ロンドンと4大会連続でパラリンピックに出場した。ロンドン大会後、現役引退を表明し、サッカー指導者としての道を歩み始めた。昨年12月に日本サッカー協会公認C級コーチライセンスを取得。現在は来年のB級取得を目指している。そのほか、講演や一般社団法人「運動の和」代表代理も務めるなど、幅広く活躍している。

京谷和幸オフィシャルサイト http://www.kyoyastyle.com/


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