25日、国際オリンピック連盟(IOC)は、2020年夏季オリンピック・パラリンピック開催候補都市の東京、マドリード、イスタンブールの評価報告書を発表した。それを受け、東京の招致委員会は都内で記者会見を行い、会長と務める猪瀬直樹都知事、竹田恆和理事長らが手応えを口にした。今後の招致活動では、7月3日からのテクニカルブリーフィング(スイス・ローザンヌ)でプレゼンテーションを行い、9月のIOC総会(アルゼンチン・ブエノスアイレス)で開催都市が決定する。
(写真:会見でポーズをとる左から水野氏、猪瀬氏、竹田氏)
 猪瀬知事は、報告書を見ての感想を「全般的に高い評価を与えられており、非常に嬉しく思っております。これまでの努力が着実に実りつつある。今後の活動の大きな弾みになった」と誇らしげに語った。東京が高く評価された項目は、「ビジョン・レガシー・コンセプト」「競技及び会場」「選手村」「パラリンピック」「宿泊」「輸送」「環境」「セキュリティ」「政治及び市民の支援」「マーケティング」「財政」と多岐に渡った。
(写真:「最高の環境をつくることが開催都市の使命」と語る猪瀬氏)

 また昨年5月のワーキンググループの評価レポートで懸念されていた支持率の低さと電力不足の2つに関しては、克服しつつある。支持率は当時の47%から3月に発表された時点で70%まで巻き返した。イスタンブール(83%)、マドリード(76%)には及ばないが、12年大会のロンドンが68%だったことを考えると、及第点にまでは達したと言えるだろう。東日本大震災による影響で、不安視されていた電力不足も「現状でも開催に十分であり、20年までには継続的に改善される見込み」と評価された。デモなどによる治安に不安があるイスタンブール、財政面での問題を抱えるマドリードに比べて、「致命的な欠陥はなかった」と、竹田理事長が言うように穴の少ない東京という印象を与えたのではないか。

 日本オリンピック委員会(JOC)会長の竹田理事長は、18年の冬季オリンピック・パラリンピック招致の際にIOCの評価委員を務めた経験を持つ。今回の結果について、「極めて重要な報告書であると認識している」と述べ、3月にIOCの評価委が来日した際のことを振り返った。「非常に中身の濃い時間を過ごすことができました。今回の報告書にはその成果が表れたと思っております」と、招致への自信を深めたようだ。今後については「新しいことを持ち出すことはありません。開催を心から望んでいるということを情熱を持って伝えたい」と語った。水野正人専務理事も「大きな指摘がなく、全体的にいい評価。今、計画しているものを、そのまま進めてやっていける自信を持ちました」と、それに続いた。
(写真:4年前の招致と比較して「今回はすべて改善できた」と自信を見せる竹田氏)

 安心や安全、インフラと交通網の整備などの開催能力、つまり「HOW」の部分は、十分にアピールできたはずだ。プレゼンテーションを含めたこれからの招致活動では、やはり「WHY」の部分が重要になってくる。7月3日から始まるテクニカルブリーフィングでは、「東京の持っている底力、日本人が持っているホスピタリティ」をわかりやすく表現し、アピールするつもりだ。東京のスローガンは「Discover Tommorow」(明日をつかもう)。オリンピック・パラリンピック開催という“明日”をつかむには、なぜ東京なのか――。これを明示して、IOC委員の心をつかむことが重要である。猪瀬知事も「求心力は強くなっている。みんなのやる気がどんどん深まっている。それがより強まっていくこと」を勝負のポイントに挙げている。招致レースの終盤を迎え、大きな自信を手にした東京。この勢いを生かして、残り約2カ月を走り抜けたい。