前期も残すところ、あと5試合となりました。福井ミラクルエレファンツは7勝20敗4分で、北陸地区の最下位という成績です。選手はやるべきことを必死にやっているのですが、ここまではなかなか私が考えていた、ピッチャーを中心に固い守りで締まった試合という展開の野球ができていません。
 攻撃に関しては、実力からすれば昨季よりも得点力がアップしています。しかし、昨季はリーグ2位の30盗塁をマークした金森将平(福井高−三菱自動車岡崎)がマークが厳しくなっていることもあり、昨季のように走ることができず、機動力を使うことができていないことが、大きく響いています。

 その中で、チームで唯一の打率3割台をマークしているのが、新人の森田克也(愛知啓成高−愛知学院大)です。結果を残せている最大の要因は、強引に引っ張らずに、素直にバットを出していることです。おそらく森田は配球をきちんと自分なりに考えて打っているのでしょう。せっかく森田が当たっているのですから、彼をいかした打順を組むことが、後期に向けた課題でもあります。

 逆に、昨季は後期から加入し、チームにいい刺激を与えてくれた小林恭兵(会津工−会津ベースボールクラブ−群馬ダイヤモンドペガサス)は、今季は攻守ともにうまく波に乗れていません。私自身、彼には大きな期待を寄せていたのですが、なかなか結果が残せていません。特に苦戦しているのは守備です。彼は守備範囲が広いので、今季はショートに抜擢したのですが、ミスが多く、それが失点につながることも。そうなると、マジメで責任感の強い性格上、余計にプレッシャーを感じてしまっているのでしょう。

 また、私はよく「考えて野球をしなさい」と言っているのですが、逆に彼は難しく考え過ぎているのかもしれません。これまでは本能だけで野球をやっていた小林は、頭で考えるようになった途端に、気持ちと身体の動きが一致していないのでしょう。もう少し、考えをシンプルにする必要があります。

 チーム再建へのカギは2番・小松崎

 一方、ピッチャーについては、まだそれぞれのポジションを固定できないほどです。確かに野手のミスが多く、ピッチャーには負担を大きくかけています。しかし、そこでピッチャーが踏ん張り切れていないということもあります。つまり、お互いにカバーし合えていないのです。後期に向けて、まずはピッチャーを整備することから始めなければいけないと思っています。

 やはり先発陣が試合をつくれていないということが、チームには大きく響いています。なかでも、経験豊富なベテランの藤井宏海(福井高−千葉ロッテ−三菱自動車岡崎)が1勝5敗1セーブと苦しんでいます。今季からはコーチという立場もあり、自分自身が引っ張ろうという気持ちが強過ぎることも要因となっていると思います。本人も「いいイメージで投げることができていない」と語っていました。福泉敬大(神港学園高−明石レッドソルジャーズ−神戸9クルーズ)や大西文晴(神港学園高−明石レッドソルジャーズ)も含めて、もっと自分のピッチングに自信をもって投げて欲しいと思います。

 昨季は後期に北陸地区で優勝し、プレーオフでも地区チャンピオンシップでは石川ミリオンスターズとの接戦を制し、初めてリーグチャンピオンシップまで進出しました。当然、今季はその上をいこうということでスタートしたわけですが、それがどうやら少し違った方向に行ってしまっているのかもしれません。まずは一戦一戦の積み重ねなのですが、「昨季以上」という気持ちが、少し大きすぎたのです。

 後期に向けてチームを再建するにあたってキーマンと考えているのが、私の野球を理解している2年目の小松崎元樹(東北高−常盤大)です。昨季よりも守備力も上がり、他の内野陣からの信頼もできつつあります。その小松崎を、後期では2番に置くつもりです。得点力を上げるには、1番・金森が出塁した時、どういうバッティングをしてクリーンナップにつなげるかがカギとなります。その重要なポジションに信頼のおける小松崎を置こうというわけです。
まずは、前期の残り5試合、後期につながる試合をしていきたいと思います。


酒井忠晴(さかい・ただはる)プロフィール>:福井ミラクルエレファンツ監督
1970年6月21日、埼玉県出身。修徳高校では3年時にエースとして活躍し、主将も務めた。89年、ドラフト5位で中日に入団。プロ入り後は内野手として一軍に定着した。95年、交換トレードで千葉ロッテに移籍し、三塁手、二塁手のレギュラーとして活躍した。2003年、再び交換トレードで中日に復帰したが、その年限りで自由契約に。合同トライアウトを受け、東北楽天に移籍した。05年限りで引退したが、07年からは茨城ゴールデンゴールズでプレーした。12シーズンより、福井ミラクルエレファンツの監督に就任した。
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