ニューヨーク・ヤンキースの黒田博樹とテキサス・レンジャーズのダルビッシュ有が26日、ヤンキー・スタジアムでの対戦で揃って先発登板した。昨年4月以来となる直接対決は黒田が7回途中5安打3失点、ダルビッシュが6回途中7安打3失点で勝敗はつかなかった。試合は同点で迎えた9回、2番・ライトでスタメン出場したイチローがサヨナラホームランを放ち、ヤンキースが4−3で勝利した。
 ともに7勝、防御率2点台。今季も安定した成績を残している両右腕の日本人対決は、互いに我慢のピッチングとなった。

 立ち上がりに苦しんだのはダルビッシュだ。初めてとなるヤンキースタジアムのマウンドで、1死後、2番・イチローにアウトローのボールをうまくすくわれ、レフト前に落とされる。ここから3連続ヒットで、いきなり満塁のピンチを招いた。

 だが、ここで踏ん張れるのがダルビッシュでもある。制球が定まらない中、スライダーに活路を見出した。5番のライル・オーバーベイを見逃し三振、新人で売り出し中のソイロ・アルモンテをセカンドゴロに打ち取る。

 初回の窮地を切り抜けると、2回、3回は徐々に本来の投球を取り戻した。3回には前の打席も含めて昨季から12打数7安打とカモにされているイチローにセンター前へ弾き返されたが、外野手の好プレーでアウトにし、三者凡退に仕留めた。

 対する黒田は危なげない滑り出しだった。昨春の直接対決では7回途中2失点とゲームをつくりながら、完封目前までいったダルビッシュに投げ負けている。立ち上がりの失点が最終的には響いただけに、初回、2回と丁寧な内容でヒット1本のみに抑えた。

 しかし3回、先取点を与えたのは黒田のほうだ。9番のレオニス・マーティンにインサイドのツーシームが中に入った。打球はライトスタンドへ飛び込むソロアーチ。レンジャーズが1点を先制する。この一発でリズムが狂ったのか、続く4回にも味方の失策から連打を許し、内野ゴロの間に1点を追加された。5回には再びマーティンに右中間へ2打席連続の被弾を許す。3イニング連続の失点でビハインドの展開となった。

 ただ、味方の援護を受けたダルビッシュも、この1カ月、勝利から見放されている。そんな現状を象徴するかのように、中盤以降、乗りきれないピッチングが続いた。まず4回、先頭のトラビス・ハフナーに緩い変化球をライトスタンドへ運ばれ、1点を返される。

 5回も先頭打者に手痛い一発を浴びた。ブレット・ガードナーにスライダーをとらえられ、これまたライトのフェンスオーバー。6回も先頭打者へのスライダーが甘くなった。ジェーソン・ニックスに今度はレフトスタンドへ持っていかれた。

 3イニング連続の先頭打者へのホームラン。1試合3被弾自体、メジャー移籍後はワーストとなる出来事だった。試合は3−3の振り出しに戻る。

 投手戦が期待されながら、中盤は点の取り合い。予想外の展開も、両投手はゲームを壊さなかった。ダルビッシュは先頭打者へ一発を喫した後、4回は1死二塁、5回は1死一、三塁といずれも得点圏へ走者を背負う。だが慌てず、後続を断って追加点を与えない。球数が増え、6回1死からヒットを打たれたところで110球となり、降板したが、逆転は許さなかった。

 黒田も3〜5回は1点ずつを失いながら、6回は中軸相手に3者凡退と立ち直る。7回2死から2打席連続でホームランを浴びているマーティンを迎えたため、後続にマウンドを託したものの、きっちりと修正して登板を締めくくった。

 日本人の両スターターが本調子ではないながらもゲームをコントロールした一戦を締めくくったのが、イチローだ。最終回、1死一塁で打席に入ると、ランナーが初球で盗塁を失敗し、2死に。さらにカウント1−2と追い込まれ、延長戦突入は濃厚かと思われた。

 しかし、レンジャーズの右腕タナー・シェッパーズが投じた156キロの速球を叩くと、打球はヤンキースファンの待つライトスタンドへ飛び込んだ。観客総立ちの中、表情ひとつ変えず、ダイヤモンドを一周し、チームメイトが待つホームベースへ。ようやく、ここで笑顔を見せ、歓喜の輪に加わった。

 6月は打率.312と調子を上げ、打順も2番に上げてきた。黒田、ダルビッシュの対決に注目が集まる中、39歳のバットマンもしっかりと存在感を示した。