今年2月のソチ五輪最終予選で、見事グループの1位となった女子アイスホッケー代表の“スマイルジャパン”。自国開催の長野五輪以来、4大会ぶり出場を決めた立役者は、FWの久保英恵(西武プリンセスラビッツ)である。最終予選3試合で2得点3アシストの活躍を見せた大黒柱に、二宮清純が競技の魅力を訊ねた。
二宮: 久保さんは4歳からアイスホッケーをはじめられたそうですが、競技の一番の醍醐味はどういうところでしょうか?
久保: やはり攻守の切り替えの速さです。スピード感があって、点数が入ることも多いです。展開が行ったり来たりします。あとはゴール裏を使えることが他のスポーツと違うので、そういうところも面白い部分なのかなと思います。

二宮: アイスホッケーでは、やはりリーチが長いと有利ですよね。これはサッカーの奥寺康彦さんが言っていたことなんですが、今は日本の選手もヨーロッパで活躍していますけど、最初は(足の)リーチの長さに戸惑ったというんですね。そういう外国人選手と日本人選手の距離感の違いというのは、感じますか?
久保: やはり日本人選手だと、“そこまで届かないだろう”と思う距離でも(外国人選手の場合は)スティックが出てきてカットされたりしますね。その間合いに慣れるまでは難しいですね。

二宮: なるほど。やはり強豪国に勝とうと思った場合、パワーや体格では劣る。ならば日本らしさを磨くしかないということでしょうか?
久保: そうですね。プレースピードですね。ルーズボールも、パックを持たれる前にチェックに行けば、奪われずにすみますので、プレッシャーに速く行くことが大事になってくると思います。

二宮: よくサッカーではポゼッションと言いますけど、パックを支配しておいたほうがいいわけですか?
久保: そうですね。ただパックを持っているだけじゃ点数は入らないので、「持ったらゴールに向かえ」というのもよく言われますね。

二宮: アイスホッケーはゴールの幅が狭い。サッカーはもちろんのこと、ハンドボールよりも狭いですよね。しかもゴールキーパー(GK)は完全武装していて、グローブも大きい。本当にいいコースを狙わないと簡単にはじかれちゃいますよね。
久保: そうですね。海外に行けば大きい選手が多く、キーパーも170、180センチと長身の選手がいます。当然、狙うところが限られてくるというか、単純にシュートを打つだけでは入らない。なのでフェイントをかけたり、リバウンドをとれるようにシュートを打つなどの工夫が必要ですね。

二宮: シュートの瞬間は、GKと目が合ったりしますか?
久保: 目が合うことはないですね。GKにもよりますが、パックを見る選手もいれば、体の動きを見て反応するタイプもいます。

二宮: フェイントも含め、GKの裏を突くというか、読みを外さないといけないですよね。ということは、試合前、相手の癖や傾向をビデオで分析することが欠かせませんね。
久保: GKコーチがアドバイスをくれますし、カーラ(・マクラウド)コーチも「このGKは上を狙ったほうがいい」とか、「横にずれて打ったほうがいい」とか教えてくれます。もちろん、自分たちでも確認します。

二宮: 緩急も大事になってきますね。強いシュートばかりじゃなくコースを狙ったシュートも織り交ぜないといけない。さて来冬に控えるソチ五輪での目標はどこに置いていますか?
久保: 私たちの目標としては、メダル獲得です。その前に予選があるので、決勝トーナメントに行かなければなりません。今回は1位から4位のグループと、5位から8位のグループと2組に分かれているんです。1位から4位のグループはリーグ戦の結果にかかわらず自動的に決勝トーナメントに行けるので、その山を決めるための試合になります。日本は5位から8位のグループで、上位2チームに入ることが決勝トーナメント進出の条件です。

二宮: 予選を勝ち抜いた勢いで、メダルを狙えるということもありますよね。
久保: そうですね。メダルは夢じゃないと思います。難しい、厳しい試合にはなるとは思うんですけど、勝ち上がっていける力は日本にはあると思います。

<現在発売中の『第三文明』2013年8月号でも、久保選手のインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>