10日、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会は、招致に成功したブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会から帰国し、都庁都民広場で招致報告会を行った。会場には約6000人がつめかけ、招致の成功を祝った。報告会後に都庁内で行なわれた記者会見で、招致委員会会長を務める猪瀬都知事は「いよいよ本格的な準備に入らなくてはいけない。平和のトップリーダーとして、最高の大会に仕上げていかなくてはいけない」と抱負を語った。
「我々が招致を勝ち取った瞬間、夕方の5時でしたが、日本では朝5時でした。皆さん、寝ないで起きて声援を送っていただき本当にありがとうございます」。会見の冒頭で、猪瀬都知事はまず感謝の意を表した。そして最終決戦で凌ぎをけずったライバルのイスタンブールとマドリードについても触れ、「競い合うことで質をお互いに高め合うことができました」と称えた。

 猪瀬都知事は、招致活動を振り返り、成功の一番のポイントはチームワークだと言う。「縦割りじゃなかった。チームワークというのは、単なる美徳ではなくて、実際に意思決定が速やかにできるかがチームワークです。その決定に従って、それぞれが任務を果たした」。水野正人専務理事は「前回があったから、今回がある。1回目は失敗ではなく、連続」と、16年大会と合わせて7年にも及んだ招致活動の積み重ねを勝因に挙げた。

 アスリート代表として最終プレゼンテーションに登壇したオリンピアンの太田雄貴と、パラリンピアンの佐藤真海。20年大会での現役での出場の意思を問われると、太田は「自国で開催されるオリンピックというのは、夢のさらに夢。狙いたい気持ちはあるのですが、タイミングがくれば下に譲りたいと思っています。勝てる間は、もちろん頑張りたい」と口にすれば、佐藤は7年後には第一線から退くことを明らかにし、選手という形ではなく大会を盛り上げたいとの考えを述べた。

 またプレゼンテーションで「お・も・て・な・し」と日本語で語りかけ、フランス語で日本人のホスピタリティ精神をアピールした滝川クリステル招致アンバサダー。そのユニークなプレゼンテーションについては、日本でも話題に上っている。現地での反応も上々だったようだ。「日本の記者の方を通じて、海外の記者から“初めて聞く言葉だけど、素晴らしい日本の心だね”と言われたそうです。招致を通して、日本人のそういった部分を認知してもらえたのはうれしい」

 会見の出席者も一様に口をそろえていたのは、これからがはじまりだということ。水野専務理事は「私たちはIOCに安全、安心、確実を訴えて、素晴らしい大会をやるという約束をしましたので、2020年にはそのような大会になると同時に、2020年で終わりではなくて、それからの素晴らしい社会のスタート。レガシーを残していくことを約束していますので、それを実現させるのが大事」と気を引き締めるように言った。

 福島の放射能汚染水問題を含め、東京、そして日本は変わらなくてはならない。今回のオリンピック・パラリンピックの招致に関しても賛否両論はある。それについて聞かれ、太田はこう答えた。「人が見られて美しくなったり、あか抜けていくように国もそうだと思っています。これからさらに世界の目は日本に向いて、厳しく批判されることも多いと思います。誰が7年後の主役になるのかと考えた時に今の子供たちなんです。子供たちに対して夢を与える場っていうのはオリンピックで間違いない。そういった点でも(招致の)意義はあったと思います」。太田の言うように、7年後の主役たちに誇れるような国と都市を構築することを日本には望む。

(文・写真/杉浦泰介)