レスリングの世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)は19日、女子55キロ級が行われ、吉田沙保里(ALSOK)が11連覇を達成した。これで五輪での3連覇と合わせて、世界大会では前人未到となる14大会連続の世界一。女子63キロ級では伊調馨(ALSOK)が全試合をテクニカルフォールで製し、2大会ぶり8度目の優勝を収めた。
 決して万全の調整はできなくても勝つ。それが女王の強さだ。
 吉田にとって、この1年はマット外で多忙な日々を過ごした。2020年の東京五輪・パラリンピック招致に加え、この2月にはレスリングが20年五輪の中核競技から外れ、残留に向けて各国を飛び回り、ロビー活動を繰り広げた。

 その甲斐あって20年の東京五輪・パラリンピック開催が決定。レスリングもIOC委員の過半数の支持を得て、実施競技に残った。ただ、選手としては、改革の一環として実施された2分3ピリオド制から3分2ピリオド制への移行といったルール改正にも対応しなくてはならず、難しい大会だった。

 しかし、練習も十分に積めない状況ながら、フタを開けてみれば、初戦から決勝まで相手に1ポイントも許さない完勝。決勝のソフィア・マットソン(スウェーデン)戦でも立ち上がりこそ慎重だったが、第1ピリオドの2分過ぎにバックをとって2ポイントを奪うと、第2ピリオドにもポイントを重ね、5−0と危なげない勝利だった。

 レスリング残留が決まった際には、早くも7年後の東京五輪までの現役続行を示唆していた。日本人初となる大会4連覇がかかる16年のリオデジャネイロ五輪はもちろん、その先にも期待を抱かせる充実ぶりだ。連覇はどこまで続くのか、最強女王に死角はない。