ラグビーワールドカップ2019の組織委員会は5日、大会中の試合開催を希望する自治体向けに配布するガイドラインの概要を発表した。10月31日付で、興味を示している30都道府県の54自治体(17都道府県と37市町)に向けてガイドラインを送っており、他に11自治体より送付先の回答を待っている状態だという。今後は来年1月より開催希望申請書の配布を開始し、2014年10月が提出期限となる。申請書を踏まえて視察、審査を実施し、開催地は2015年3月に決定する。
(写真:報道陣から多数の質問が出る中、説明を行う組織委の伊達事業部長)
 今回のガイドラインは(1)開催都市の要件を伝える、(2)スタジアム諸室の概要を伝える、(3)立候補手続きに必要な事業の計画に活用していただく、(4)事業の全体像を共有する、との4つの目的でつくられており、全部で100ページ以上に及ぶ。過去のラグビーW杯のみならず、日本で開催された02年のサッカーW杯、98年の長野五輪などの世界的なスポーツイベントでの事例も参考にしながらまとめられた。

 開催都市の基準としては、会場までの交通や、パブリックビューイングの実施、ファンゾーンの設置といったマーケティング活動、環境への配慮や、ボランティアプログラム、レガシープログラムの策定、リスクマネジメント、医療対応などで求められる内容が記載されている。

 スタジアムは既に開幕戦と決勝は2019年3月に完成見込みの新国立競技場(80,000人収容)での実施が内定している。開催会場は全体で10〜12の予定で収容人員については試合のカテゴリーによって分かれる。準決勝、3位決定戦に関しては60,000人以上、準々決勝に関しては35,000人以上が目安とされた。また予選プールでは日本代表が絡んだ試合や強豪国同士の対戦では40,000人以上と設定され、最低でも15,000人以上の収容能力が開催スタジアムの基準として示された。観客席はスタジアムの実情に応じて仮設スタンドを組むかたちや、一部が芝生席といった仕様でもNGではない。

 スタジアム内に関しても、ピッチの大きさや映像を流すスクリーン、照明はもちろん、運営本部や選手、審判の控室、ビデオ判定を行うTMOルームやホスピタリティ施設など、大会主催者である国際ラグビー連盟(IRB)が必要とする条件は多岐にわたる。立候補にあたっては会場内のレイアウトも提出し、それに基づいて審査を進める。

 開催地の選考にあたっては、こうした「試合開催会場の能力」に加え、マーケティング活動の支援・実施といった「大会準備や運営業務の分担能力」、都市の規模や受け入れの目的、中長期ビジョンといった「開催都市としての基盤的能力」の3つを考慮しながら総合的に判断する。組織委の伊達亮事業部長は、「ガイドラインはひとつの指針。すべてを満たしていなくても代替案があれば交渉は可能。できる限り柔軟に対応したい」と開催希望地とコミュニケーションをとりながら、選定プロセスを進めていく考えだ。

 W杯開催が決まっていても、試合会場が決定しなければ大会はできない。どこで、どのように試合を実施するかは、大会の成否に直結する。それゆえに立候補地は多いに越したことはない。既に多くの自治体が試合開催に興味を示しているものの、組織委では今後も希望する自治体があれば、ガイドラインの送付を受け付ける。伊達部長は「日本全体でW杯が盛り上がるように広がりを希望している」と興味を持つ自治体がさらに増えることを期待している。