先のドラフト会議では東弘明がオリックスから育成指名を受けました。昨年は指名ゼロだっただけに、彼の名前が出た時はホッとしました。と同時に、この1年間、頑張ってきた選手たちのことを思うと、指名が1人だけ、かつ本ドラフトでのNPB入りが叶わなかったことを悔しく思います。
 東に関しては課題の打撃が向上し、ようやく1、2番を任せられる選手になりました。昨オフも熱心に練習し、「NPBに行きたい」との気持ちが十二分に伝わってきましたね。もちろん意欲だけで指名されるほどNPBは甘い世界ではありませんが、強い思いが本人を変え、この結果をもたらしたことは間違いないでしょう。

 彼の売りはショートの守備です。NPBではまず、この点を最大限にアピールしてほしいと感じます。東のところへ打球が飛べば安心して見ていられるとの評価が固まれば、「1軍の守備固めで使ってみようか」と支配下登録の道が開けるはずです。フィジカル面やバッティング面のレベルアップは言うまでもありませんが、そのためには何より守りから試合に出ることが必要です。東には自分の武器を見失うことなく、完璧な守備を求めてほしいと思います。

 アイランドリーグではもうひとり、香川の又吉克樹が中日から2位指名を受けました。彼の武器はサイドから投げるスピードボール。こういったタイプはNPBでも少なく、独立リーグ史上最高の評価につながったのでしょう。2位となれば即戦力として注目されますが、1軍で活躍するためには取り組むべきことがたくさんあります。

 まず1年を通じて投げ抜く体力づくりは必須でしょう。最多勝(13勝)をあげたとはいえ、相手ベンチから見ていても夏場は調子を落としていました。体を鍛えることで、スタミナに加え、スピードボールに磨きをかけてほしいと思います。そして、又吉の代名詞となるようなウイニングショットを確立してほしいものです。ストレートに比べると変化球の精度はNPBレベルでみればまだまだ。しっかり勉強して、ぜひ1軍に定着してほしいですね。 

 ドラフト指名と独立リーグ日本一。昨季、両方とも成し得なかった目標のうち、ドラフト指名はなんとか達成できました。一方、独立リーグ日本一に関してはグランドチャンピオンシップでBCリーグ王者の石川に1勝3敗で敗れ、来季以降に持ち越しとなりました。

 敵地・石川での第1戦に勝って、流れに乗るかと思いきや、2戦目から3連敗。敗因を一言で言えば、投打に選手たちが役割を果たせなかったことに尽きるでしょう。打線では中軸が振るわず、攻撃が分断され、投手陣も先発が序盤に崩れるケースが目立ちました。

 特に後期、リーグチャンピオンシップと好調だった先発の岩根成海が第2戦で3回7失点と乱れたのは誤算でした。岩根は2年前もグランドチャンピオンシップで石川に敗れた経験があり、その借りを返したいと力が入りすぎたのでしょう。最終戦となった第4戦でも、リリーフ登板で延長13回に先頭打者の出塁を許したのをきっかけにピッチングを崩してしまいました。

 無死一塁から送りバントの構えをしているバッターに対してストレートの四球。これが非常にもったいなかったです。走者をためれば自分自身はもちろん、守る野手にもプレッシャーがかかります。続く打者のバント処理を一塁手の大谷龍次が慌て、悪送球で1点を勝ち越されてしまいました。

 同じく延長戦で投げていた石川の木田優夫が走者を出しても落ち着いたピッチングで要所を締めていたのとは対象的でしたね。木田は全盛期と比べれば球威もなく、徳島も第1戦では最終回に決勝点を奪うなど攻略はできていました。しかし第4戦では9回から登板し、こちらがサヨナラのチャンスを何度もつくりながらも、あと1本を許しません。勝負どころでの投球術はさすがの一語でした。

 同様に元巨人の南和彰にも2戦2敗。2年前の対戦に引き続き、抑えられてしまいました。こちらが好球必打で積極的に打っていったところを、ボール球をうまく振らせていたのが印象的でしたね。バッターが慎重になり、ボールを見極めるようになると、今度はどんどんストライクを先行させる。なかなか徳島のペースで攻撃をさせてくれませんでした。

 2年前の雪辱を果たすつもりが、結果は返り討ち……。本当に無念ですが、今季は一歩前進ととらえ、独立リーグ日本一を来季の宿題にしたいと考えています。このリーグの宿命で、来季に向けては、またメンバーが大幅に入れ替わることになるでしょう。ただ、残った選手を軸に、あくまでも日本一を狙うチームづくりをしていきます。

 そのためには、やはり投手力が不可欠です。今季の徳島は入野貴大オナシス・シレットと終盤の継投は盤石だったものの、先発投手にはシーズンを通じて絶対的な存在がいませんでした。ローテーションの柱だった岩根、山口直紘とも防御率は3点台で調子に波があったのが事実です。ぜひ来季は「こいつが投げれば大丈夫」という真のエースを育てていきたいと思っています。

 また、監督就任以降、テーマとして掲げてきた「状況判断を磨く」作業も、もっと追求していきます。特に年数を重ねた選手にはこちらの指示ではなく、各自で考えて最善のプレーができるように促していきたいですね。考える力がつけば、自分は何をすべきかが明確になってきます。そのために、どんなプレースタイルを身につければよいか方向性も見えてくるでしょう。これが自分の長所や売りを伸ばし、スカウトへのアピールにもつながります。

 最後は残念な結果に終わったとはいえ、10月末までファンの皆さんに応援していただき、野球ができたことには感謝の気持ちでいっぱいです。来季こそは笑って終われるよう、今季以上のチームを目指して頑張ります。1年間の応援、本当にありがとうございました。


島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝をあげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜の38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年よりBCリーグ・信濃の投手コーチに。11年から徳島の投手コーチを経て、12年より監督に就任。
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