8日、女子アイスホッケーの5カ国対抗戦「スマイルジャパン ブリヂストン ブリザックチャレンジ」が行われ、日本代表(世界ランキング10位)とスロバキア代表(同8位)が対戦した。日本は第1ピリオドにFW米山知奈(三星ダイトーペリグリン)のゴールで先制すると、14分25秒にはFW坂上智子(三星ダイトーペリグリン)が決め、2点をリードした。第2ピリオドでは、FW山根朋恵(Daishin)、DF床亜矢可(SEIBUプリンセスラビッツ)の2試合連続となる得点などで3点を加えた。第3ピリオドで1点を追加すると、守ってはスロバキア攻撃陣を零封。ソチ五輪最終予選では完封負けを喫した相手に6対0で圧勝した。
(写真:2得点をあげゲームベストプレーヤーに輝いた米山)
 勝てる試合を落とした昨日の敗戦とは打って変わり、この日のスロバキア戦は、主導権を握り続け、6ゴールを奪って快勝した。「立ち上がりからスピードを生かしたホッケーをし、60分間、我々のペースでできた」と、飯塚祐司監督は選手たちに合格点を与えた。

 この日も先制点を奪ったのは日本だった。第1ピリオドの5分7秒、DF堀珠花(トヨタシグナス)のシュートを相手GKが弾いたところ、ゴール前で詰めていたのは米山。GKの視界を遮るためスクリーンに入っていた米山は「振り返ったらいいところに出た」という絶好機を着実にいかした。

 14分25秒には坂上のゴールで1点を加えた日本。第1ピリオドは、このまま2対0で終えた。ピリオド終盤にキルプレー(PK)により、1人少ない状況に陥ったが、相手の反撃を許さなかった。“昨日とは違うんだ”と自分たちに手応え掴んで、次のピリオドを迎えたのが良かったのだろう。

 第2ピリオドに入ると、日本はスピードと運動量を生かしたプレーが冴え渡り、さらに勢いに乗った。開始早々にはFW中村亜実(SEIBUプリンセスラビッツ)のアシストから山根が落ち着いてゴールに流し込んだ。13分36秒には、PK中にFW藤本もえこ(三星ダイトーペリグリン)のパスを受けた米山が相手DFの股下を抜くシュート。一度はGKに防がれたものの、こぼれたパックを詰め、ゴールネットを揺らした。米山は2点目。7日は米山の誕生日だったが、勝利で飾れなかった。1日遅れの祝砲をあげた22歳は、試合のベストプレーヤー(両チーム1人ずつ)に選ばれるなど、自ら花を添えた。

 18分24秒には、床亜矢可がミドルレンジからゴールに叩き込んだ。今大会からスティックを新調した床は、2日連続得点。硬めのスティックを使用することでシュートが浮きすぎなくなったという。味方のスクリーンがGKのブラインドとなったも理由のひとつだが、しっかりと枠を捉えたからこそである。「スペシャルプレー(パワープレーやPK)では、あまりシュートを打つ役ではない」と話していた床亜矢可だが、スマイルジャパンにとっても、自身にとっても新たな武器を得たようだ。

 5点の大量リードで、第2ピリオドを終えた。ゴールラッシュの締めくくりは、藤本もえこ。第3ピリオド10分38秒、藤本もえこが坂上のシュートのこぼれ球に詰めて、さらに1点を加えた。終わってみれば、6得点の大勝。ソチ五輪に出場しないとはいえ、世界ランキング2つ上の相手に圧勝した。

 昨日の鬱憤を晴らすような快勝にも、キャプテンのFW大澤ちほ(三星ダイトーペリグリン)をはじめとした選手たちは「内容はまだまだ」「もっとできる」と満足していない。スロバキアには2月のソチ五輪最終予選で敗れているが、試合の主導権を握っていたのは日本だった。ただし一方的に攻め立てたものの、あと一歩のところでゴールを奪えなかったのは、相手守護神のズザーナ・トムチコバが立ち塞がったからだ。そのトムチコバは既に引退しており、今大会には出場していない。スロバキアには4月の世界選手権でも勝っており、ゆえに「今日勝つのは当たり前」「無失点は妥当」という思いがあったのだろう。
(写真:昨日よりもアグレッシブなプレーが目立ったスマイルジャパン)

 明日は今大会ランキング最上位国(5位)のスイス。ソチ五輪では上位グループのため、日本とは別組だが勝ち上がれば戦う可能性は十分にある相手だ。メダル獲得を目指す以上は、ここで叩いておいて、いいイメージで本番を迎えたい。飯塚監督は「今日のパフォーマンスでは明日は勝てない。今日以上のプレーを選手には求めたい。プレーススピードをもっとあげていきたい」と気を引き締めた。

(文・写真/杉浦泰介)