28日、スピードスケートのソチ五輪日本代表選考会2日目が長野・エムウェーブで行われ、男子500メートルは既に代表に内定している加藤条治(日本電産サンキョー)、長島圭一郎(日本電産サンキョー)がワンツーフィニッシュした。女子500メートルも同様に小平奈緒(相澤病院)が優勝。一方、42歳の岡崎朋美(富士急行)は総合6位に終わり、6大会連続の五輪出場は絶望的となった。同3000メートルは藤村祥子(宝来中央歯科)が今シーズンのW杯出場組を押しのけて、4分9秒55で制した。藤村は日本スケート連盟が設ける五輪派遣標準記録を突破し、初の五輪出場に大きく近づいた。男子5000メートルは、18歳のウィリアムソン師円(山形中央高)がV。ウィリアムソンは既に派遣標準をクリアしており、1つしかない代表枠を手にする見通しとなった。
(写真:2本目は長島<右>との直接対決を制した加藤)
【加藤、メダリスト対決制す】

 2本目のゴール後、加藤は右拳を握り、ガッツポーズを作った。1本目でトップに立ち、2本目は最終組で、長島とのバンクーバー五輪メダリスト対決。ソチ五輪では、ともにメダル候補となるライバルとの直接対決を制した。

 今シーズンのW杯前半戦の成績により、長島とともに代表には内定していた。加藤は、この大会の結果で五輪出場は動かなかったが、「内定をもらってるからこそ負けられなかった。絶対に結果を出したいと思っていました」と自らにプレッシャーを懸けて臨んでいた。

 W杯で腰や股関節を痛め、決して万全の調整をしてきたわけではなかった。それでも安定した滑りで1本目は34秒90、2本目は34秒86とまとめた。唯一の34秒台をマークし、優勝した。「滑りが安定したとは思っていないが、結果がついてきた」と自信を得たようだ。とはいえ慢心はない。「今日の結果は心の安心にはつながってますが、これからどうなるかはわからない」。新たな自信をつけるために、更なる鍛練を誓った。

 約1カ月後にはソチ五輪の本番を迎える。日本のエースは「バンクーバーの時より、責任感はありますが、心に余裕を持って挑みたい」と語った。トリノ五輪は6位、バンクーバー五輪は銅メダル。加藤は29歳で迎える3度目の大舞台で、表彰台の頂点を狙う。

【女子500Mの第一人者引退へ】

「会場に来てくれた方々に、あの場を借りてお礼を伝えたかった」。レース後、岡崎はリンクを1周しながら笑顔で手を振った。それはウイニングランではなかった。まるで別れを伝えているようにさえ映った。この日の主役は、優勝した小平ではなく、岡崎だった。

 女子500メートルの五輪出場枠は4つ。そのうちの1つには小平が内定しており、残り3つのイスを奪わなければならなかった。岡崎が6大会連続の五輪出場を掴むためには、小平を除いての上位3位以内が最低条件だった。直前のジャパンカップで優勝するなど調子を上げ、迎えた今大会。しかし、「練習の成果が出せなかった」と1本目で6位と出遅れると、2本目も7位と巻き返すことはできず、合計タイムで6位に終わった。バンクーバー五輪後に出産をし、競技に復帰。母として初の五輪には届かなかった。

 終始、笑顔の岡崎の瞳から涙がこぼれたのは、表彰式後に小平と言葉を交わした時だった。「一緒に戦ってきた選手で、母と娘みたいな感じ年なので、色々な想いが込み上げてきちゃいましたね」。小学5年で始めたスケートは「もうお腹いっぱい」と笑った。長野五輪で銅メダルを獲得した思い出のリンクで、岡崎は笑顔で現役引退を示唆した。

 結果は次の通り。

<男子500メートル>
1位 加藤条治(日本電産サンキョー) 1分9秒76
2位 長島圭一郎(日本電産サンキョー) 1分10秒28
3位 及川佑(大和ハウス工業) 1分10秒52

<男子5000メートル>
1位 ウィリアムソン師円(山形中央高) 6分34秒54
2位 一戸誠太郎(山形中央高) 6分35秒54
3位 在家範将(田名部組) 6分36秒55

<女子500メートル>
1位 小平奈緒(相澤病院) 1分16秒38
2位 辻麻希(開西病院) 1分16秒79
3位 神谷衣理那(毎日元気) 1分16秒84

<女子3000メートル>
1位 藤村祥子(宝来中央歯科) 4分9秒55
2位 穂積雅子(ダイチ) 4分11秒62
3位 石野枝里子(日本電産サンキョー) 4分11秒78

※男女500メートルは2本合計タイム

(文・写真/杉浦泰介)