2月7日に開幕するソチ五輪。日本国内ではスケート競技や、ソリ競技などの日本代表が続々と決まり、大舞台への機運が高まりつつある。今回の開催国であるロシアは、ソビエト連邦時代を含め、これまで冬季五輪で計308個のメダルを獲得してきた大国だ。だが意外にも冬季五輪の開催は初。それだけに、ウラジーミル・プーチン大統領をはじめとして、同国がこの大会に懸ける思いは強い。今回はあと1カ月と迫ったソチ五輪について、その特徴や見どころを紹介する。
 今回の五輪の舞台となるソチは、ロシア南部に位置し、グルジアとの国境付近にある。黒海に面しており、ロシアでも随一の保養地として知られる。気温も温暖で2月の平均気温は海岸エリアで7、8度、山岳エリアでもマイナス3、4度程度である。雪不足も心配されるが、そこは人工降雪機や昨年貯蔵した雪でカバーできる見通しだ。

 ソチは2007年のIOC総会で、本命視されていた韓国・平昌を抑えて、開催都市に選ばれた。11競技会場の7つを新設するなど、開発型の五輪と言われている。最終プレゼンテーションで演説をしたプーチン大統領指揮の下、巨額の資金を投入してインフラ整備を行なってきた。一時は工期の遅れを各国メディアに指摘されていたが、現在も急ピッチで進められ、大会までにはなんとか完成する見通しだだ。

 注目必至!? メダル有力の2種目

 ソチ五輪は17日間かけて、7競技98種目が行われる。前回のバンクーバー五輪は7競技86種目。新たに採用されたのは、フィギュアスケート団体、女子ジャンプ、男女フリースタイルスキーのハーフパイプとスロープスタイル、男女スノーボードフリースタイルのスロープスタイル、スノーボードアルペンの男女パラレル回転、バイアスロン男女混合リレー、リュージュ団体の12種目だ。なかでも日本国内で注目度の高いのは、メダル獲得が有力視される女子ジャンプとフィギュアスケート団体だ。

 女子ジャンプは、昨シーズンのW杯総合女王の高梨沙羅が、ここまでW杯開幕4連勝するなど今シーズンも絶好調だ。元々、彼女の武器である飛距離だけでなく、課題とされていたテレマークも改善しつつあり、飛型点でも高得点をマークしている。最大のライバルのサラ・ヘンドリクソン(米国)がケガで出遅れていることもあり、金メダルへ向けては、まさに“視界良好”といった様相を呈している。

 逆に言えば、金メダル“当確”と見られることで、プレッシャーに押し潰されないかが懸念材料にあげられる。そこで期待したいのが、昨年5月から新コーチとなった山田いずみのサポートだ。山田は女子ジャンプ界のパイオニア。高梨にとって山田は憧れの存在であり、長らく第一線で戦ってきた大先輩の存在は心強い。女子ジャンプの新旧エースがタッグを組み、世界一への大飛行を見せてほしい。

 一方、フィギュアスケートの団体は男女シングル、ペア、アイスダンスで構成される。日本のシングルは、羽生結弦、町田樹、高橋大輔、浅田真央、鈴木明子、村上佳菜子と男女ともに個人戦でメダルを狙える選手がズラリと揃うほど層は厚い。このメンバーからショートプログラムとフリーを誰が滑るのか。贅沢なカード選びが注目される。

 シングルの出場人数など形式が異なるため、単純には比較できないが、日本は09年から開催の世界フィギュアスケート国別対抗戦では3大会すべてでメダルを獲得している。過去3大会、日本とともに表彰台に上ったのはいずれも米国、カナダだったが、今回は開催国のロシアも総合力は高い。この日米加露の4カ国がメダル争いを繰り広げると予想される。日本は高橋成美と木原龍一のペアは個人戦での出場を逃しており、リード姉弟のアイスダンスも上位に食い込むのは難しいだけに、世界トップが揃うシングルでどれだけポイントを稼げるかがカギを握る。

 派手でスリリングな新種目

 日本人の出場は未決定だが、フリースタイルスキー、スノーボードとあるスロープスタイルという種目にも注目して欲しい。スロープスタイルは、全長数百メートルあるコースにキッカーと呼ばれるジャンプ台、ジブと呼ばれるレールやボックスなどのアイテム(障害物)が5〜7個設置され、そのアイテムを様々な技を駆使して、クリアする。それを3〜5人の審判が採点し、その得点を競い合うエンターテインメント性の高い種目である。まさにスキーやスノーボードの総合滑走力が求められるスポーツだ。

 例えば、同じフリースタイルスキーでも、モーグルとは異なり、タイムでは加点されない。また、キッカーでのジャンプは、高さも飛距離もハーフパイプの比ではない。ハーフパイプはその名の通り、管を半分にした形状のコースを、振り子のようにジャンプを繰り返す。ジャンプ台の高さは5メートルほどで一方、スロープスタイルは、滑り降りていきながら、ひとつひとつのキッカーをクリアしていくハーフパイプのように、次々と技が繰り広げられるハイテンポではないが、ひとつのジャンプが大きい。女子でも18メートルほどのジャンプ台を飛び、飛距離も18〜20メートルに及ぶという。当然危険度も高いため、ケガをする選手も多いが、スリリングな状況で魅せる豪快なトリックは一見の価値がある。また転倒のリスクが高いということは、誰が勝つか分からないという側面もある。

 ソチ五輪の開会式は2月7日だが、競技自体は6日のスノーボード男子スロープスタイル予選を皮切りにスタートする。女子モーグルの予選、フィギュアスケート団体(男子シングルショートプログラム・ペアショートプログラム)と続く。日本との時差はマイナス5時間。各競技の決勝時間は日本の深夜となるだけに、寝不足必至の17日間となりそうだ。

(第10回は1月13日に更新します)

(文/杉浦泰介)