ソチ冬季五輪の開幕まで約1カ月。選考会などを通じて各競技の日本代表選手も続々と決定している。山本化学工業では昨年12月に大阪市の大阪プールアイススケート場で開かれたショートトラックスピードスケートの代表選考会を協賛した。

 山本化学工業がショートトラックの選手たちをサポートし始めたのは昨年の初夏から。500、1000、1500メートルの個人種目に加え、リレーもあるショートトラックでは1日に複数のレースをこなすことが少なくない。そのため、いかに疲労を蓄積させないかが勝負のポイントとなる。

 そこで山本化学工業では「メディカルバイオラバー」を選手たちに勧めた。同製品は赤外線の放射で筋肉を温めるだけでなく、着圧を与えて血液の循環を促す。高齢者の血流改善を目的とした医療機器が、アスリートにとっては疲労回復を助けるツールとなるのだ。

「運動をすると乳酸が発生しますが、これが体内に溜まったままだと筋肉の動きが低下します。早く移行させてエネルギーに早期に変えることが求められる。そのためには血流を良くしておくことが大切です」

 そう話す山本富造社長は選手たちにレース前やレースの合間、足首やふくらはぎ、太ももにそれぞれメディカルバイオラバーを着用してもらった。選手たちからの評判は「次のレースに向けて足の重さ、だるさが軽減された」「滑っていても疲労感が軽く、最後まで大丈夫という感覚になった」と上々。使用した選手の選考会での成績も良く、五輪に向けて継続して活用することになった。

 そんな選手たちの選考会での滑りを見て、変化にいち早く気づいた金メダリストがいる。長野五輪ショートトラック500メートルで金メダルに輝いた西谷岳文だ。直線の少ないショートトラックのレースではコーナーリングが勝敗の分かれ目となる。カーブで膨らんでロスが生じれば、そのインを突かれて抜かれてしまう。

「西谷さんによると、コーナーリングのコツは“いかに氷にエッジをきかせるか”だそうです。エッジをきかせるには下半身の踏ん張りが重要になる。ところが疲れてくると踏ん張り切れなくなり、エッジをきかせられない」
 山本社長はそう説明する。今回の選考会、エッジをきかせた”コーナーリングで最後まで粘れた選手が多かったことに西谷は驚いていたという。

 また、山本化学工業では動きながら骨盤を正しい位置に矯正する「ゼロポジションベルト」も選手たちに装着してもらっている。スピードスケートのレースではリンクを常に左周りするため、知らず知らずのうちに骨盤にゆがみが生じるケースが多い。山本社長は「遠心力で振られて右側の骨盤が開き、バランスが崩れている傾向にあるようです。バランスが良くないと当然、滑りにムダが出ます。コーナーリングでバランスがとれずに転倒するケースも増えてしまうのではないでしょうか」と分析する。五輪本番までわずかな期間ながら、パフォーマンスが改善されれば、さらなる上位を狙うことも可能になる。

 冬季競技では関西大学のフィギュアスケートの選手にも、かねてから山本化学工業のバイオラバーやゼロポジションベルトを使用してもらっている。当初はケガ部位のサポーター目的だったものの、「血流が良くなり、よりよいパフォーマンスにつながる」と好評を得て、その後、同大の多くの選手が着用するようになった。この中には今回のソチ五輪での日本代表選手もいる。

「冬季競技は氷や雪のある寒い環境の中で高いパフォーマンスを出さなくてはいけない。夏季競技以上に筋肉の冷えや血流の悪化に気をつける必要があります。バイオラバーのプラス面がより生じると言えるのではないでしょうか」
 山本社長によると、昨年5月、80歳にしてエベレスト登頂に成功した登山家の三浦雄一郎もメディカルバイオラバーを装着して世界最高峰に挑んだ。バイオラバーは電力や加熱に頼ることなく赤外線を発生し、体を温める。
「氷点下の雪山は電気も通っていないし、火も簡単には起こせない。過酷な環境だと、余計にバイオラバーの特性が生かされると感じました」

 山本社長はさまざまな競技のアスリートたちと接する中で、新たなアイデアを思いついた。それはスタート直前まで選手たちが羽織るウォーミングアップウェアへのバイオラバー素材の活用である。
「いくら体を動かして筋肉を柔軟にしていても、出番を待っている間に体はどうしても冷えて硬くなってしまう。たとえば競泳選手が飛び込む前に着ているジャージにバイオラバー素材を使えば、筋肉の状態をより軟らかく保てるのではないでしょうか」

 昨年11月、米国でもバイオラバーは赤外線医療機器として認定された。これにより、国内のみならず、海外でも医療機器として展開できる可能性が広がった。医療分野でも使われる製品として広く知られるようになれば、スポーツでも応用するケースが増えていくかもしれない。

 山本化学工業ではバイオラバーやゼロポジションベルトを活用して五輪へ臨む日本代表のソチでの活躍を祈りつつ、自らもさらなる技術改良と新たなアイデアにより、世界の中でキラリと光る“メダル”を獲得しようと動き出している。

 山本化学工業株式会社