いよいよ開幕するソチ五輪、冬季大会最多となる7競技98種目が行われる。女子アイスホッケーでは、日本代表「スマイルジャパン」(IIHF世界ランキング10位)が長野大会以来、久々の出場を果たす。スマイルジャパンはグループBでロシア(同4位)、スウェーデン代表(同6位)、ドイツ(同7位)と決勝トーナメント進出をかけて予選リーグを戦う。選手個々のプレーはもちろんのこと、それをまとめる飯塚祐司監督の采配も勝負のカギを握る。“下剋上”を果たさんとする指揮官に、二宮清純が本大会での展望を訊いた。
二宮: 日本は世界ランクで今大会出場国の中で最下位です。すべて格上の相手となりますが、1位の米国と2位のカナダ以外とは何が起こるか分からないという声もあります。
飯塚: そう思います。上位2カ国は異次元の強さがありますが、3〜7位あたりは、近年、めまぐるしく順位が入れ替わっています。日本にもそこに割って入るチャンスはあると思っています。

二宮: 格上相手の試合が続くということで、守勢に回る機会も多いかもしれません。ディフェンス面に関して、不安はありますか?
飯塚: それほど心配はしていません。ただ、同組のロシア、スウェーデンにはいいFWがいる。特にロシアは個人技のスキルにすごく自信を持っているチーム。そこで個人技で対応し切れるかな、というのが唯一の心配点ですね。

二宮: 当然、その対策は練らなければいけませんが、そればかりやり過ぎて長所を消してもいけない。このバランスが難しいところですね。
飯塚: 今まで長所を前面に押し出してきて、勝って自信をつけてきたチームなので、そこはあまり消したくないですね。ただ今までやってきたことがすべて通用するのかというと、疑問ではある。相手チームの選手の特徴はしっかり把握して選手に伝えていきたいと思います。

二宮: 日本は長野五輪以来、16年ぶりの出場です。逆に言えば、他国は日本の情報をあまり持っていないのではないでしょうか?
飯塚: 日本をアンパイだと思ってくれれば、そこを逆手にとりたいですね。

二宮: とりわけ初戦のスウェーデン戦は大事になってきますね。上位2カ国に入って、決勝トーナメントに進むためには、ここで勝って勢いに乗りたい。次のロシアはホスト国ですからね。
飯塚: 実力的に言うと、このグループではロシアが少し抜けているので、スウェーデンとドイツには60分勝ちしないと、上に行くのは難しいと思います。グループリーグの勝ち点は60分で勝てば3点入るのですが、延長戦に入ると、2点しかもらえない上に、負けたチームにも1点つくんです。延長勝ち2回で4点だと、勝ち上がれない可能性もあります。決勝トーナメント進出のためには、少なくとも5点くらいは欲しいですね。

二宮: ただ勝つだけではなく、勝ち方も計算しなければならない。確実に勝利を収めておきたいスウェーデンやドイツは、体のサイズが大きいですよね。日本としては、長所であるスピードを生かす戦いになるのでしょうか?
飯塚: スウェーデンとはサイズ以外は、そんなに大きな差はないと思っています。ドイツにはスピードで勝っていると思う。そこをうまく生かしたいですね。

二宮: チームとしてはもちろんのこと、団体競技で勝つことによりチームジャパンとしては勢いがつくのではないでしょうか。
飯塚: 9日のスウェーデンとの初戦は、日本では日曜日の夕方5時です。勝って日本を盛り上げるチャンスだと思っています。

二宮: 五輪出場を決めたことで、注目度は高まっていますが、日本でのアイスホッケーはまだまだメジャーになったとは言えません。女子サッカーがW杯で優勝して急激に普及したように、五輪で結果を残せば、女子アイスホッケーも盛んになるはずです。その意味で、今回は発展へのターニングポイントになればと思います。
飯塚: そのとおりだと思います。五輪でいいアピールができればいいですね。今までは、小学生までで、中学校で別のスポーツに移ってしまうことが多かった。五輪を機にその先も継続してやっていってもらえるようになるといいなと思います。

<現在発売中の『第三文明』2014年3月号でも、飯塚監督のインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>