17日(現地時間)、ノルディックスキー・ジャンプ男子ラージヒル(LH)団体の決勝が行われ、日本は1024.9点で銅メダルを獲得した。団体でのメダルは、1998年の長野五輪以来、16年ぶり。葛西紀明(土屋ホーム)は、LH個人に続き今大会2個目のメダルを手にした。優勝は1041.1点のドイツ。連覇中のオーストリアを振り切って、3大会ぶりの金メダルとなった。
 日の丸飛行隊がソチの大空を高く舞った。清水礼留飛(雪印メグミルク)、竹内択(北野建設)、伊東大貴(雪印メグミルク)、葛西の編成で、世界へと挑んだ。

 12カ国中、8番目スタートとなった日本のトップバッターを務めたのは、20歳とチーム最年少の清水だ。空中でバランスを崩しかけたが、踏ん張り132.5メートルをマークした。第1グループ終了時点で、ノルウェーに次ぐ2位。日本に勢いをつけた。

 しかし、2番手の竹内が飛ぶ頃にはジャンプには不利となる追い風が吹き始める。竹内は127メートルで飛型点も伸びず、ドイツとオーストリアに抜かれ、4位に転落した。

 ここで伊東がチームを救う。ウィンドファクターで5.9点がつく悪条件ながら、安定した飛型で130.5メートルを叩き出した。ノルウェーを抜き、3位と表彰台圏内へと浮上した。

 アンカーは葛西。個人戦で銀メダルを獲得している葛西は、レジェンドの異名に違わぬ大ジャンプを見せた。134メートルを飛び、着地を決めて滑り降りてくる際には右手でVサインを作った。個人戦2冠のカミル・ストッフ(ポーランド)、W杯歴代最多勝のグレゴア・シュリーレンツァウアー(オーストリア)ら各国のエース級が揃う第4グループで3位をキープした。1本目を終え、日本は507.5点。トップのドイツとは11.5点、2位のオーストリアとは9点差となった。

 五輪初出場の清水は、「ものすごく緊張した」と語っていたが、2回目のジャンプでも思い切りの良いジャンプを見せた。1本目に続き130メートルオーバーの131.5メートル。順位は3位のままだが、トップとの差を6.8点に縮めて竹内にバトンを渡した。

 バトンを受けた6歳上の竹内。今シーズンの前半戦好調だったが、1月に肺炎で入院し、一時は五輪出場を諦めかけたという。それでも「小さい頃からの夢」となんとかソチの舞台に間に合わせた。「今できる精一杯のジャンプだった」と130メートルをマークし、3位を死守した。

 続く伊東は、両ヒザを痛めていた。個人のノーマルヒルは欠場し、LHは9位と決して本調子ではなかった。それでも自分に言い聞かせるように「問題ない」と語っていた。今大会のラストジャンプは、132メートルをマークした。着地の際に、ヒザを再び痛めたが、テレマークは崩さなかった。伊東は「つらかったけど、最後まで持って良かった」と安堵の表情で振り返った。ドイツ、オーストリアの上位2カ国には離されたが、4位ノルウェーとの差は開いた。

 メダルの行方は、アンカーの葛西に託された。追い風が吹く中、1本目よりも悪条件ながら、134メートルの大ジャンプ。合計1024.9点とし、この時点で暫定トップに立った。残りはオーストリア、ドイツの選手を残すのみとなり、ここで日本のメダルが確定した。続くドイツとオーストリアにかわされ、メダルの色は銅となったが、殊勲の41歳は「4人で力を合わせてメダルをとれて嬉しい。取らしてあげたいと思っていた」と目を潤ませて喜んだ。

 日本の今シーズン世界ランキングは5位。「メダルがとれるかどうかだった。1人1人がいいジャンプをしたおかげ」と、葛西が後輩たちを労えば、皆がチームメイトに感謝した。4大会ぶりに掴んだメダルは、チームワークがもたらしたものだ。飛び抜けたジャンプはなくとも、全8本のジャンプがK点(125メートル)越えと安定していた。長野五輪以降、低空飛行が続いていた日の丸飛行隊が、ソチの空で再浮上した。だがここが着地点ではない。日本は4年後の平昌に向けて、新たなテイクオフ見せたのだ。

 日本、予選リーグ敗退〜カーリング女子〜

 カーリング女子は1次リーグ最終戦が行なわれ、日本はスウェーデンに4−8で敗れ、4勝5敗となった。日本は5位で予選リーグを終え、上位4カ国までの準決勝進出はならなかった。

 1敗も許されない崖っぷちに立たされた日本は、前日のスイス戦で延長戦を制し、3勝4敗として首の皮一枚つないだ。決勝リーグに進出するには、残り2試合で勝つことが絶対条件。まずは、ここまで4勝3敗で3位タイとしている中国が相手となった。アジア・パシフィック選手権、世界最終予選で5度対戦し、一度も勝つことのできなかった。

 第1エンド、後攻の日本は2点を奪う、幸先いいスタートを切った。しかし、第2エンドで中国も2点を取り、すぐさま振り出しに戻した。

 有利な後攻の第3エンドでは1点どまりとなった日本。スキップの小笠原歩はリード、セカンド、サードの3人に「もう少しずついいところに置こう」と笑顔で檄を飛ばした。第4エンド、残り1投を残してNo.1ストーンは中国。しかし、No.2ストーンが日本か中国かは微妙なところだった。中国はNo.2も自分たちだと信じ、日本のストーンを弾き出すテイクアウトショットではなく、ハウス内に置きにいくドローショットを選択する。だが、すべてのショット終了後に測定すると、No.2ストーンは日本だった。中国は1点どまりとなる。これが中国には痛手となった。

 日本は第5エンドできっちりと2点を取ると第6エンド、ここまで高い確率でショットを決めてきた中国にミスが続き、先攻の日本は中国を1点に抑えるかたちでリードを守る。しかし第7エンド、日本はサード船山弓枝のショットがハウス内の2つの日本のストーンに当たってしまい、No.1とNo.2が中国となった。

 このピンチにスキップ小笠原がガードとなっているハウス手前のストーンに当てて、ダブルテイクアウトを狙う。しかし、ハウス外に弾き返されたのは1つのみ。ハウス内には中国のNo.1ストーン、日本のNo.2ストーンが残った状態となった。残るショットはそれぞれ1投のみ。先攻の中国はハウス内のほぼ中心にストーンを置き、No.1とNo.2をつくった。ここで小笠原は中国のNo.1ストーンを弾いて、自らのショットをNo.1にするという難しいショットを決め、なんとか1点を取った。

 さらに第9エンドでも2点を取り、3点リードで最後の第10エンドに入った。先攻の日本は中国にビッグエンドさえつくらせなければ、リードを守り切ることができる。その第10エンド、日本はミスなく、相手のストーンをテイクアウトしていく。1投ずつを残してハウス内には中国、日本のストーンが2つずつ置かれた状態となった。ここで小笠原がダブルテイクアウトを成功させ、中国のラストストーンを残したまま、日本の勝利を決めた。

 4勝4敗の4位タイに浮上した日本は、既に準決勝進出を決めている強豪スウェーデンと対戦した。勝てば準決勝進出をかけたタイブレークに進め、負ければ予選敗退という条件は変わらない。スウェーデンはトリノ、バンクーバーと連覇中。世界ランキング1位の強豪を倒さないことには、次のステージへはチャレンジできない。

 第1エンドは後攻のスウェーデンが氷を探るようにしてブランクエンド(無得点)となった。第2エンドは攻勢に出てきたスウェーデンに2点を奪われ、先制を許したが、日本も次のエンドで2点を返し、すぐさま追いついた。

 しかし、第4エンドに2点を奪われると、第5エンドで1点を取られるスチールを許す。3点ビハインドの嫌な流れでハーフタイムを迎えた。

 ハーフタイム明けの第6エンドは、小笠原が最終投で2得点を狙ったが、ストーンが届かず1点止まりに終わった。続くエンドで相手のミスもあり、1点をスチール。日本は1点差に迫り、逆転の望みを残した。

 スウェーデンに2点を奪われ、再び3点差をつけられた。第9エンドの勝負どころ、船山の2投目で日本はタイムアウトを取って、作戦を練る。船山は正確なドローショットでNo.1ストーンを作り出した。そして小笠原の1投目でNo.1、2まで確保した。このエンドは最低でも2得点が欲しいところだった。だが、スウェーデン・フォースのラストショットはダブルテイクアウト。スウェーデンのストーンがNo.1、2と形勢は逆転した。小笠原もダブルテイクアウトを狙ったが、スウェーデンのストーンがNo.1に残ってしまい、1点スチールされた。

 最終エンドを残し、4点のビハインドでほぼ勝敗は決した。日本は最後まで諦めずに挑んだが、スウェーデンのフォースが日本のストーンを弾き出した。ハウスには日本のストーンが1つ残った。この時点で残り投てき数は2投。同点の可能性が完全に潰えたため、ギブアップした。日本は4勝5敗で予選リーグ5位となった。タイブレーク進出はならなかったが、長野五輪に並ぶ過去最多タイの成績を収めた。チーム結成3年で五輪の大舞台に立った北海道フォルティウス。ソチで格上相手に奮闘した姿は、日本中のカーラーを勇気づけたのではないだろうか。

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