20日(現地時間)、フリースタイルスキー女子ハーフパイプ(HP)決勝が行われ、予選を4位で通過した小野塚彩那(石打丸山クラブ)が83.20点で銅メダルを獲得した。今大会スキー種目では日本人初のメダリスト。日本選手団として8個目のメダルは、海外開催の冬季五輪での最多の1992年アルベールビル五輪の7個を上回り過去最多となった。優勝はマディー・バウマン(米国)。89.80点で、今大会からの新種目の初代女王となった。この種目、日本の第一人者で、結婚と出産を経て復帰した三星マナミ(野沢温泉スキークラブ)は予選で23位に終わり、決勝進出はならなかった。
「今までで一番うれしい」。セールスポイントの高いエアで観衆を魅了した小野塚は、表彰台の一番高いところではなかったが快挙を素直に喜んだ。

 小野塚は予選1回目10番目に登場すると、83.80点の高得点をマークした。2回目は回転加えない演技に終始する“試運転”ともとれる余裕を見せ、予選を4位で通過。表彰台への期待を抱かせた。

 12人で争われた決勝の1回目、小野塚は9番目スタート。最初のエアではバランスを崩す場面が見られたものの、着地には成功した。その後も高いエアを披露し、79.00点を記録した。1回目を終え、バウマン、マリー・マルティノ(フランス)に次ぐ3位。メダル圏内につけた。

 迎えた2回目は、1回目と同じ技のルーティンながら、完成度をさらに上げたパフォーマンスを見せた。最初のエアはボードを掴むグラブから入り、1回目よりも安定したエアで場内を沸かせた。続くアリウープも着地をしっかりと決め、横1回転半を両サイドで連続成功した。5つ目のエアの横2回転で後ろ向きになると、そのまま踏み切るスイッチ540(横1回転半)も成功しフィニッシュ。最後は両手を上げてガッツポーズを見せるなど、自身も納得の演技を披露した。暫定3位と順位は変わらなかったが、1回目を上回る83.20点を叩き出した。1回目で小野塚より点数が低かった選手は、2回目でも小野塚を上回ることができず小野塚のメダルが確定した。

 フリースタイルスキーのハーフパイプは2011年に採用が決まった新種目。それを受けてアルペンスキーから転向した小野塚は、3シーズン目で五輪のメダルを手にした。フリースタイルスキーではモーグルの里谷多英(長野五輪金メダル、ソルトレイクシティ五輪銅メダル)以来のメダリスト。小野塚は「やってきたことが身になって嬉しい」と喜んだ一方で、「優勝には程遠かった」と悔しさもにじませた。金メダルのバウマンには6.60点離された。エアの高さでは十分勝負できていたが、2回転半を連発するなど技の難度はバウマンの方が上だった。

 小野塚には世界大会での優勝がまだない。W杯では2位が最高で、昨年の世界選手権でも銅メダルだ。歴史に名を刻んだ25歳が、世界の頂点へ――。小野塚が目指す男子並みの技ができれば、その勲章は自ずとついてくるはずだ。

 浅田はフリーで挽回し、6位入賞 17歳・ソトニコワが金 〜フィギュアスケート女子〜

 フィギュアスケート女子シングルはフリースケーティングが行われ、ショートプログラム(SP)で2位につけたアデリナ・ソトニコワ(ロシア)がフリーでトップのスコアを叩き出し、合計224.59点と逆転で金メダルを手にした。SPでトップに立ち、連覇を狙ったキム・ヨナ(韓国)は5.48点差で銀メダル。日本人トップは浅田真央(中京大)がSPの出遅れを挽回し、6位入賞を果たした。鈴木明子(邦和スポーツランド)は8位、村上佳菜子(中京大)は12位だった。

 浅田にしかできない演技を、最後の最後で見せた。集大成に位置付けていたソチ五輪。SPはトリプルアクセルを含むジャンプでミスを連発し、16位と出遅れてしまった。メダル争いからはほぼ脱落していた。「明日は自分の演技をできるようにしたい」。SP後のインタビューで、そう答えた彼女が披露した「自分の演技」は完璧に近い出来だった。

 フリーで使用する曲は、ロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」だ。かつて伊藤みどりがトリプルアクセルを女子選手として世界で初めて成功させた時の曲である。浅田は冒頭のジャンプでトリプルアクセルを着氷。アイスバーグ・スケーティング・パレスに詰めかけた観客からは大きな拍手が送られた。彼女の代名詞とも言える大技が決まると、それまでの錘が取れたように軽やかに氷上を舞った。

「これが自分のやりたかった構成」。バンクーバー五輪で史上初めてSPとフリーで計3回のトリプルアクセルを成功させた浅田が、ソチで挑んだのは6種類の3回転ジャンプを計8回跳ぶ、高難度の構成だ。トリプルフリップ+トリプルループやトリプルフリップ+ダブルルッツ2回のコンビネーションジャンプも次々と着氷させた。「(今まで)色々あって、ひとつひとつクリアしてきた。ジャンプもひとつひとつ跳んでいこう」。そう振り返った彼女がジャンプを成功するたびに、観客は大きく沸いた。ステップやスピンでも最高のレベル4と評価される文句なしのパフォーマンスだった。

 演技終了直後、宙を見上げた浅田は感極まった。一瞬崩れた表情を、すぐに持ち直した。観客には笑顔で挨拶したが、頬には大粒の涙が伝っていた。フリーの演技にジャッジがつけた点数は142.71点。回転不足の判定で、すべてのジャンプが成功とはいかなかったが、フリーの自己ベストを更新した。合計198.22点となり、この時点で暫定トップに立った。浅田は12番目の滑走で、以降12人が滑ったが彼女の得点を上回ったのは5人のみ。順位は6位にジャンプアップした。「メダルという形ではなかったけど、私なりの恩返しができた」と納得した様子を見せた。日本が世界に誇るスケーターは、彼女にしかできない唯一無二の演技でソチのリンクを後にした。

 金メダルを獲得したのは、浅田のライバルのキム・ヨナでも世界ランキング1位のカロリーナ・コストナー(イタリア)でもなかった。ロシアの団体金に貢献した15歳・ユリア・リプニツカヤの陰に隠れていた感のあったソトニコワがフリーでキム・ヨナを抜いた。地元の大声援の後押しを受け、17歳は優雅に舞った。フリーでは浅田を上回る149.95点の高得点をマークし、自己ベストを20点以上も上回る計224.59点で頂点に立った。同種目でロシアの金メダルは初の快挙というおまけ付きだった。5位に入ったリプニツカヤと共に、次の平昌もメダル候補に挙がってくるだろう。女子フィギュア界にロシアの新星がキラリと輝いた。

 一方、連覇の懸かっていたキム・ヨナも最終組最終滑走というプレッシャーの中、ミスのない完成度の高い演技を披露した。艶やかなスケーティングで魅了し、フリー2位の144.19点を出した。トータルスコアは219.11点となり、ソトニコワに5.48点届かなかった。女子フィギュアスケート史上3人目の五輪連覇は叶わなかったが、銀メダルを獲得し、面目は保った。

 日本、ジャンプの差響いて5位 〜ノルディック複合団体〜

 スキー・ノルディックスキー複合団体が行われ、前半6位だった日本(渡部暁斗、湊祐介、永井秀昭、渡部善斗)は5位でフィニッシュした。ノルウェーがドイツ、オーストリアとの接戦を制し、16年ぶりに金メダルを獲得。2位はドイツ、3位にオーストリアが続いた。

「勝機がないとわかっていたのは僕たち」
 渡部暁の言葉がすべてだった。日本は前半のジャンプで6位、トップのドイツとは1分5秒差がついていた。後半で順位をひとつ上げたものの、1位との差は1分17秒1。前半で負ったビハインドを縮めることができなかった。

 前半のジャンプで、日本はエース・渡部暁を1番手に持ってきた。個人ラージヒルで加藤大平が負傷してから漂っていた嫌な雰囲気を払拭したかったのだろう。渡部暁も「1番手はチームに勢いをつけるのが仕事」という思いで飛んだ。そして、128メートル(120.9点)を飛び、第1グループを終えてトップに立った。

 しかし、2番手の加藤の代わりに出場した湊が110.5メートル(90点)と失速。日本は6位に後退した。その後、3番手・永井が123.5メートル(108.2点)、アンカー・渡部善が126メートル(114点)を飛んだものの、順位を上げることはできず。トップのドイツと1分5秒差、3位・ノルウェーとも40秒の差がつく厳しい状況で後半・クロスカントリーに臨んだ。

 後半、日本の永井、湊、渡部善、渡部暁の順で20キロ(1周2.5キロを各選手が2周)を走った。序盤からドイツ、オーストリア、ノルウェーが三つ巴で争う中、永井はチェコの選手を抜いて5位に浮上。しかし、後半に伸びがなく、湊にバトンタッチする時点で、トップとの差は1分18秒に開いた。

 一方で第2走者の湊は、ジャンプの失敗を取り返す健闘を見せた。周囲に競り合い選手がいない中で、積極的に飛ばす。トップとの差を1分9秒2に縮めて、渡部善につないだ。渡部善は1周目を通過した時点で1位と1分4秒6差。アンカーであり、兄の渡部暁までに更に差を縮めようとスキーを滑らした。

 しかし、トップ集団がギアを上げると、4位以下はみるみるうちに差を広げられた。渡部暁がスタートする時点で、日本はトップとの差は1分40秒に開いていた。メダルが絶望的となる状況の中で、渡部暁は「1つでも上の順位でゴールできるように」と、前を行く4位・フランスを追った。エースの懸命の走りで、終盤、フランスの背中を視界に捉えた。だが、順位を上げることはできず、5位でゴールした。

 ゴール後、渡部暁は雪上に倒れ込んだ。すべてを出し切った証だろう。
「正直、悔しい。でも、最後まで諦めずにみんなで戦えた」
 渡部暁がこう語れば、湊も「今持っている自分の力は出し切れた」と納得の表情を見せた。永井も「誰1人、諦めることなくゴールを目指した」と仲間を称えた。

 個人ノーマルヒルで渡部暁が銀メダルを獲得し、「複合ニッポン復活」が予感された。しかし、世界との差はまだある。渡部善は「自分のジャンプができなかった」と前半の不調を悔やんだ。やはり、ジャンプとクロスカントリーでバランス良く結果を出さなければ、表彰台に上がることは難しい。

「4年後に(個人2種目、団体の)メダルを3つ獲れるように頑張りたい」
 渡部暁は最後にこう語った。4年後の平昌(韓国)に向けて、複合ニッポンの挑戦がまた始まる。

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