大亀スポーツ振興財団では毎年、スポーツで優秀な成績を収めた愛媛県出身選手や、スポーツ界に貢献した県内の個人、団体を表彰している。13回目を迎えた今年度も7名の個人、3団体の受賞が決まり、13日に表彰式が行われた。今回、国際レベルでの活躍をした選手、またはその指導者に送られるスポーツ大賞は該当者がなかったが、スポーツ選手やクラブの育成に携わり、青少年育成に貢献した指導者などを表彰する菜の花賞には6名と2団体が選ばれた。
(写真:財団の大亀代表理事(前列中央)と受賞者たち)
「愛顔つなぐ、えひめ国体」まで、あと3年。東京五輪・パラリンピックまで、あと6年――。今回のスポーツ賞では、こうした状況を反映して県内で競技の普及、選手の育成、強化に携わってきた指導者、団体が多く表彰を受けた。

 菜の花賞の青野隆義さんは今治明徳高で、89年から陸上部のコーチ、監督としてやり投げを指導してきた。濱元一馬総監督とともに09年世界選手権銅メダリストの村上幸史選手らを育てるなど、同高は投擲種目の強豪校として全国にその名をとどろかせている。創部以来、全国大会での入賞は86回、優勝は15回を数える。その指導の8割は基礎体力づくり。持ち味、長所を伸ばしつつ、次の課題を与えることで選手の能力を引き出す。えひめ国体でも全国を制する人材の育成が期待されており、青野さんは「定期の陸上教室を開催して、みんなで頂点を目指したい」と意気込んでいる。

 井手勝敏さんは愛媛のボート界を長年、牽引してきた指導者だ。自身も筑波大時代に選手として国体シングルスカル優勝3回、世界選手権重量級ダブルスカル9位などの実績を誇り、地元に戻ってからは宇和島東高、今治西高でボート部監督を務めてきた。その間、全国大会優勝はもちろん、世界大会、アジア大会に日本代表として選ばれる選手を数多く育て上げた。筋力トレーニングはもちろん、近年は体全体を使った漕法を選手たちに伝えて実績を残しており、今後も愛媛はもちろん日本を代表する選手の輩出が望まれている。

 笠井公子さんは選手として77年の世界選手権で日本代表のキャプテンとして出場。団体優勝、個人3位の好成績を収めている。結婚を機に愛媛に移り住んでからは国体にも県代表の選手、監督として参加してきた。20年以上前からジュニア指導にも力を入れており、ボールやラケットで遊びながらテニスに興味を持ってもらえるように心がけている。そんな中から昨年の全日本選手権で優勝した阿部悠梨選手や、東京国体成年男子の準優勝メンバーなどが次々と出てきている。「環境を整え、目標を持たせること」を自身の役割として、今後も愛媛でのテニス振興に携わっていく。
(写真:表彰を受ける笠井さん)

 田切秀和さんはライフル射撃で監督兼務も含み32回の国体出場を果たした。7年前に夫人の実家がある愛媛に転居し、10年より県ライフル射撃協会の強化委員に就任。伊予農業高でライフル射撃部が立ち上がったのを機に選手を指導し、1年足らずで篠浦玲子選手が少年女子ビームピストルで4位入賞するなど目覚しい成果をあげている。昨年の東京国体では篠浦選手が大会新記録で優勝し、同校の野村亮典選手も少年男子エアライフルで準優勝に輝いた。競技普及に県内でスポーツ射撃教室も開いており、ジュニアの参加も多いという。「この中から上手になる人が必ず出てくる。えひめ国体では各種目別で優勝を目指す」と力強く抱負を語る。

 中村直紀さんは県警柔道部の監督や、国体の県代表監督を務め、02年の高知国体では成年男子をベスト8(6位)に導いた。5年前からは県柔道協会の強化育成委員長となり、合同合宿を県内で実施して強化に取り組んでいる。男女や小学、中学、高校、一般と各カテゴリーで将来を見越したレベルアップを図っており、えひめ国体では「成年男子はベスト8以上、成年女子、少年男女は優勝」を目標に定める。

 和田幸正さんはボウリングで88年に全日本選手権で史上最年少(22歳)優勝。アジア大会でも2大会連続で銅メダルを獲得した。地元のイヨテツボウリングセンターに勤務しながら、現在は後進の指導にあたり、「楽しい、おもしろいの延長に競技があり、良い成績を取ると自信ができる。その循環で、どんどん強い選手が生まれる」と話す。国内の第一線を張ってきた経験を選手たちに伝え、昨年の東京国体では成年男子団体が3位入賞した。全日本中学選手権では泉宗心音選手が優勝しており、この先も着実に育成が実を結びそうだ。

 昨年の県中学総体、男子卓球を制したのは瀬戸内海に浮かぶ島の中学校だった。松山市立中島中学校である。全校生徒64名で運動部は卓球部、陸上部、野球部の3つしかない。環境には決して恵まれていない学校が初優勝を収めたのは熱心な指導の賜物だ。藤井修二校長は「島の子はまじめだが、消極的という傾向があります。一歩前に出て表現できる子どもたちを育てようと取り組んできた」と語る。向井俊博監督は卓球経験は中学時代に部に所属していた程度ながら、独学で技術を学び、週末には選手とともに船で渡って強豪校と練習を重ねた。島を出ることで自信をつけた選手たちは一昨年の県新人戦で準優勝。これで弾みをつけて昨年の快挙につなげた。

 男子ソフトテニスで昨年の県中学総体、四国総体を制した鬼北町立日吉中学校も全校生徒41名の小規模校だ。小中一環教育で一体となってテニスに取り組み、週末には町のトレーニングセンターで一般の人も交じって教室が開かれる。こうした地域を巻き込んでの取り組みが山間の学校でも四国内有数の強豪として成績を残せている要因だ。過疎化が進み、全校生徒は年々減少の一途だが、西村久仁夫校長は「運動部の活躍は郷土の誇りであり、住民の大きな活力となっている。ソフトテニスがスポーツの核として、地域活性化にどこまで貢献できるか、これからの大きな課題です」と将来を見据えている。
(写真:祝福の花束贈呈を受けた受賞者たち)

 地域に根ざしたスポーツ活動を続けている団体や個人に贈られるふるさとスポーツ賞には久万剣道会が輝いた。同会は今年で創設64年目を迎え、地元の久万剣道スポーツ少年団と久万中学校の部活動を教えている。毎週火曜日と隔週の水曜日は合同練習日を設け、大人から子どもまでともに竹刀を振って汗を流す。歴史を重ね、小さい頃から剣道を学び、社会人で指導者となって、後進を指導するという好循環が生まれているのも特筆すべき点だ。地域一体となった活動が功を奏し、昨年はスポーツ少年団が県少年剣道大会で準優勝。県中学総体で久万中が団体優勝を果たし、全日本都道府県対抗に代表2選手を送り込んだ。剣道人口が減少する中、会では入部希望の子どもたちに竹刀をプレゼントするなど工夫を重ね、剣道を通じた地域づくり、人づくりに貢献している。
 
 特別賞に選ばれたのはFIFA(国際サッカー連盟)の国際副審、越智新次さんだ。審判の道に進んだのは、サッカー部のマネジャーを務めていた東予工高時代に4級審判員の資格を取得したのがきっかけ。高校卒業後、家業の傍ら、四国リーグなどで年間100試合程度を裁いて経験を積み、00年には1級審判員となって現在はJリーグや天皇杯で数多くの試合を担当している。昨年、日本人では9名しかいない国際副審に登録され、ブラジルW杯アジア最終予選、韓国−ウズベキスタン戦も任された。

「選手と審判は車の両輪。お客さんに感動を与え、心に残る試合ができるのは、お互いが尊重し合って、それを生かせるかどうかにかかっている」と語る越智さんの夢は4年後のロシアW杯でレフェリーとしてピッチに立つことだ。国際審判は45歳が定年で、現在、38歳の越智さんにとってはロシアW杯は最初で最後の大舞台となる。「アマチュアでも頑張ればできると希望を与えられれば」と夢の実現へ日々、研鑽を続けている。

 えひめ国体に向けた基本目標のひとつに「スポーツで活力あふれる『えひめ』を創る」とあるように、3年後の大会は地域活性化の大きなチャンスでもある。そのためには地域に根差したスポーツの普及、育成、強化を実施することが欠かせない。これからも同賞は愛媛スポーツの発展に寄与する個人、団体を応援していく。

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関連リンク>>公益財団法人 大亀スポーツ振興財団

(石田洋之)
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