13日(現地時間)、スキー・アルペン男子回転が行なわれ、座位カテゴリーの鈴木猛史(駿河台大学職員)が1本目の2位から2本目で逆転し、自身初の金メダルを獲得。これで日本選手団が目標としていた金メダル3をアルペン男子(座位)のみで達成した。
 小学2年の時、交通事故に遭ったのが3月13日だった。その日に、自分が最も得意とする回転が行なわれることに、鈴木は「運命を感じていた」――。

“回転のスペシャリスト”と呼ばれる鈴木だが、これまでパラリンピックでは同種目で納得の滑りをすることができず、悔しい思いをしてきた。初出場のトリノ大会では、体調を崩して12位。4年前のバンクーバー大会では突然の日程変更で回転が初日となり、気持ちを切り替えることができずに15位に終わった。

 過去2大会の経験をいかし、今大会、鈴木は“平常心”でレースを楽しむことを目標としていた。そして、その象徴がスタート前の笑顔だった。力まずに滑るためのルーティンで、W杯などの国際大会で好結果につながっていたのだ。

「ソチでも笑顔でスタートを切りたい」
 開幕前にそう語っていた通り、鈴木は初日の滑降からスタートぎりぎりまで、常に笑顔を絶やさなかった。そして、スタートを切った瞬間、“勝負師”の顔へと切り替わるのだ。

 鈴木にとって、大一番とも言えるこの日もリラックスした笑顔があった。そして、落ち着いた表情でスタートした鈴木は、世界でただひとりしかいない、アウトリガーでポールをなぎ倒す高度な技術で、きれいにターンをしながら滑り降りて行った。

 コースが荒れれば荒れるほど、鈴木は力を発揮するタイプだ。この日も、大きな溝ができた大荒れのコースに苦しむ他の選手とは裏腹に、鈴木はスムーズに滑ってみせ、1本目はトップと1秒61差の2位につけた。

「2本目は守りながら攻めていきたい」と語っていた鈴木は、その言葉通り、見事な滑りを見せる。コンパクトなエッジングで荒れた難コースとは思えないほど安定した滑りでゴールすると、鈴木は両手でガッツポーズ。続いてスタートした1本目でトップの選手がコースアウトすると、鈴木は金メダルを確信し、笑顔を見せた。

 結局、鈴木は2位に1秒42差をつけての圧勝で、最も欲していた回転での金メダルを獲得。鈴木にとって3月13日は、まさに“運命の日”だった。

 スーパー大回転では銀メダルを獲得し、スーパー複合の回転では3位につけている森井大輝(富士通セミコンダクター)は1本目は8位。2本目は急斜面ではきっちりとラインを意識し安定した滑りを見せると、途中の緩斜面では森井らしいカービングターンで攻める滑りで巻き返し、3番目のタイムでゴール。しかし1本目との合計タイムでは1秒10差で表彰台には届かず、4位となった。

 滑降、スーパー大回転で2冠を果たした狩野は、1本目14位だったが、2本目はうまくまとめて4番目のタイムを出して7位入賞を果たした。1本目、21位だった夏目堅司(ジャパンライフ)は2本目で惜しくもコースアウト。谷口彰(相模組)は1本目で途中棄権となった。

 立位カテゴリーでは、今大会初レースとなった東海将彦(エイベックス)が1本目で14位。2本目は途中でバランスを崩し、片足が浮いてしまうもののすぐに立て直して完走。合計タイムは11位となった。三澤拓(キッセイ薬品工業)は1本目、ポールの内側をつく滑りで攻めたものの、3旗門目でスキー板のトップをポールに当ててしまい、途中棄権。小池岳太(セントラルスポーツ)も1本目、急斜面から緩斜面にかわったところで転倒してしまい、2本目に進むことはできなかった。1992年アルベールビル大会から出場している42歳ベテランの阿部敏弘(日本身体障害者スキー協会)と、初出場の山崎福太郎(信州大学)は2本ともに完走し、それぞれ19位、30位とした。

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