晴れた日の陽気に、春がそこまでやってきているなと感じます。しかし、全国の花粉症患者にとって、今はとてもつらい時期でもあります。編集長も花粉症に苦しんでいるひとりです。取材や講演に出かける際は、必ずマスクをつけていきます。効果的な治療法をご存知の方は、ぜひ編集長までご一報ください。

 先日、そんな編集長の取材に同行する機会がありました。駅で待ち合わせていたのですが、遠くに見えた編集長は何だか足取りがおぼつかない様子でした。実は連日の執筆活動と取材の疲れが出てしまったようで、「移動中に仮眠するから、着いたら起こしてくれ」と頼まれました。

 電車に乗り込むと、混雑はしていませんでしたが、空いている座席はバラバラ。僕は編集長と少し離れた席に座りました。編集長は席につくなり目を閉じました。

 ところが、次の駅で乗客が増え、編集長の前に、ご年配の女性が立ちました。前方の気配に気づいたのか、編集長は目を開けるとおもむろに立ち上がり、「よかったらどうぞ」と女性に席を譲ったのです。まだ降りる駅までは時間がありましたが、編集長のさりげない優しさが垣間見えました。

 駅に到着し、取材場所までタクシーで向かうことになりました。予定時間は約15分。わずかではありますが、タクシーでは仮眠をとれるかに思えました。しかし――。

「二宮清純さんですよね?」
 運転手さんが編集長に気づき、話しかけたのです。
「いつも雑誌やテレビで見ています。いやぁ、会えて光栄だなぁ」

 運転手さんはスポーツ好きらしく、編集長に日頃気になった疑問をぶつけていました。これに対し、編集長は嫌な顔ひとつせず答えていました。結局、会話をしている間に目的地へ到着しました。

 僕は「あまり休めなかったから、疲れているだろうな」と編集長の顔を伺いましたが、そこにはいつもの鋭い視線の編集長が。
「よし、行くか!」
 プロフェッショナルに心配は無用だったようです。

(スタッフY.S)
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