15日(現地時間)、スキー・アルペン男子の最終種目、大回転が行なわれ、座位カテゴリーでは森井大輝(富士通セミコンダクター)の7位が最高位と、メダル獲得とはならなかった。
“4度目の正直”とはならなかった――。日本アルペン陣のエースとして常にリードしてきた森井。2011−12シーズンには日本人で初めて総合チャンピオンの座につくなど、その技術の高さは世界からも認められている。そんな森井にとって、ただひとつ手にしていないのが、パラリンピックの金メダルだった。開幕前には「のどから手が出るほどほしい」と語り、今大会にかける思いは誰よりも強かった。

 だが、それが力みを生じさせたのか、初日の滑降で体を強く打ち付けるほど激しく転倒し、途中棄権。安定感抜群の森井には、想像できない結果となった。翌日のスーパー大回転では銀メダルを獲得したものの、表彰台の中央の座は後輩の狩野亮(マルハン)に譲った。そして回転では後輩の鈴木猛史(駿河台大学職員)が宣言通りに金メダルを獲得。“世界最強の布陣”と言われたアルペン男子・座位カテゴリーの3本柱のうち、2人が頂点に立ったことで、森井の金メダルへの思いは、さらに強まったに違いない。しかし、スーパー複合では前半の回転で3位につけていたものの、後半のスーパー大回転で転倒し、メダルを逃した。

 そしてこの日行なわれた最終種目の大回転、森井は1本目、前日のスーパー複合・スーパー大回転でコースアウトしたことが頭をよぎったのか、1本目は完走を狙った慎重な滑りでトップと3秒16差の8位とした。メダル獲得には、リスクを背負ってでも攻めるしかない。森井は2本目、勢いよく飛び出すと、“世界最高”と謳われるカービングターンで、加速していった。

 しかし、中盤の急斜面で大きな溝にスキー板がひっかかり、大きく跳ね返されるとバランスを崩して、ほとんど止まってしまうほど大幅に減速してしまう。それでもそこから再び加速していき、森井らしい安定した滑りを見せてゴール。その時点でトップに立った。だが、後続の選手が森井のタイムを次々と上回り、結局森井は7位。中盤での減速が悔やまれる結果となった。

「金メダルを獲るまで、やめられないよなぁ」
 レース後、今大会で現役引退を表明している40歳ベテランの谷口彰(相模組)にそう鼓舞されると、森井はうなづきながら涙を流したという。森井にとって、5度目の挑戦がスタートした瞬間だったに違いない。

 今大会、日本選手団が目標に掲げていた金メダル3個を獲得したアルペン男子・座位。“世界最強の布陣”の実力はホンモノだった。チームとして目標としていた“表彰台独占”は達成することはできなかったが、チェアスキーの魅力を伝えるには十分なパフォーマンスを披露してくれた。チームJAPANの伸びしろはまだ十分にある。4年後の平昌大会が今から楽しみだ。

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