11日、IIHF女子アイスホッケー世界選手権トップディビジョン予選第3戦が新横浜スケートセンターで行われ、日本代表がチェコ代表に2−1で勝利した。日本は第1ピリオドにFW藤本もえこ(エスポー)のゴールで先制。第2ピリオドでは2度のキルプレー(一時退場で数的不利の状態)を耐えると、第3ピリオド、8分51秒にFW中村亜実(SEIBUプリンセスラビッツ)が得点を加え、リードを広げた。守っては、チェコの反撃を1点で抑え、逃げ切った。これで日本は通算成績で2勝1敗となり、1部残留が決定。来年3月、スウェーデンでの世界選手権はトップディビジョンで出場する。

◇第3戦
 藤本もえこ、貴重な先制弾でゲームベストプレーヤー(日本2勝1敗、新横浜)
日本代表 2−1 チェコ代表
【得点】
[日] 藤本もえこ(18分22秒)、中村亜実(48分51秒)
[チ] テレザ・ヴァニソバ(51分40秒)
 試合終了のブザーが鳴った瞬間、氷上の選手たちは歓喜の輪を作った。「勝ち切れてホッとした」。キャプテンのFW大澤ちほ(三星ダイトーペリグリン)は、なんとかトップディビジョン残留を決め、安堵の笑顔を見せた。

 2−0、0−2と1勝1敗で迎えた第3戦。序盤から日本は、機動力と運動量を生かしたアグレッシブなプレーで、氷上を躍動した。硬さの見られた初戦から、試合を重ねるごとにリズムは良くなった。それは3試合全てでゴールマウスを守り、最後尾からチームを支えたGK藤本那菜(ボルテックス札幌)の目からも明らかだった。「すごく足も動いていて、気持ちも全面に出ていた」。スピーディーなスケーティングで相手陣に迫り、何度もチャンスを作った。しかし、ゴールはなかなか生まれない。リンクに嫌なムードが漂いかけていた。

 このままスコアレスでピリオドを終えるかと思われた18分、ついに試合が動く。敵陣に侵入し、右サイドから逆サイドへとパックを振る。左からFW米山知奈(三星ダイトーペリグリン)が「いいところにいた」と、フリーの味方を見つけ、ゴール前へパスを送る。パックを受けた藤本もえこは、落ち着いてゴールに叩き込んだ。ソチ五輪後に日本を離れ、フィンランドに渡った海外組の1人。「ソチではチームに貢献できなかった。成長した姿を見せられた」と胸を張る。

 待望のゴールが生まれ、チームに勢いをもたらした。日本は第2ピリオドもいいリズムで攻撃を展開した。2分には中村、DF小池詩織(三星ダイトーペリグリン)がシュートを放ち、ゴールに迫ったが、追加点は入らなかった。すると4分52秒にFW久保英恵(SEIBUプリンセスラビッツ)がマイナーペナルティで一時退場。日本は1人少ないキルプレーを迎えた。最初に訪れた2分間の数的不利を耐え凌いだが、11分58秒にはDF武田莉奈(FTS御影グレッツ)が一時退場。第2ピリオドは2度のキルプレーという苦しい展開。それでもGK藤本那菜を中心に体を張って守り切った。

 迎えた最終ピリオド。日本は残りの20分間を凌ぎ切れば、トップディビジョンに残留が決定する。追いかける焦りからか、チェコが立て続けにマイナーペナルティーを犯し、6分11秒には2人多い状況となった。だが、日本はパックを支配するもシュートにまで至らない。この試合に訪れた最大のチャンスを生かせなかった。

 またしても嫌な流れにいきかけたところで、日本にゴールが生まれる。ゴール前の絶妙なポジションにいた中村へパックが渡る。中村のシュートはジャスミートしなかったが、吸い込まれるようにパックはゴールラインを越えた。「必ず点を取る」と意気込んていた彼女の思いが乗ったかのような得点。綺麗なかたちではないが、チームにとっては大きな1点が加えられた。

 2点のリードを得た日本は、チェコに1点を返されたものの、2−1で逃げ切った。藤沢悌史監督は「3試合全てがロースコア。ミスしたほうが負ける。厳しい戦いだった」と振り返った。3月の世界選手権は世界ランキング上位8カ国が出場する。現在8位の日本にとっては、全チームが格上だ。4年後の平昌五輪に向けて、世界のトップと肌を合わせる貴重な機会を、自らの力で勝ち得た。キャプテンの大澤は「ここがスタート。戦えるチームにしたい」と意気込む。

 世界選手権の予選グループはソチで対戦したドイツとスウェーデンに加えてスイスと同組に入った。大会で8位に終わると、翌年ディビジョン1グループAへと降格する。現実的な目標は7位以上、つまり残留である。残り4カ半で「運動量と機動力を生かし、賢く戦えるチーム」をどこまで成熟させられるかがカギとなる。

(文・写真/杉浦泰介)