2日、第91回東京箱根間往復大学駅伝競走は、往路5区間(107.5キロ)で行われ、青山学院大学が往路初優勝を果たした。青学大は1区で2位につけると、2区で順位をひとつ下げたものの、3区まで上位をキープ。4区で再び2位に浮上すると、5区で先頭の駒澤大学を逆転し、5時間23分58秒でゴールテープを切った。2位には4分59秒差で明治大学、3位には6分49秒差で東洋大学、4位には7分25秒差で駒大が入った。
 読売新聞社から鶴見中継所までの21.3キロを走る1区では熾烈な先頭争いが展開された。15キロ過ぎで集団から駒大の中村匠吾(4年)、東洋大の田口雅也(4年)、青学大の久保田和真(3年)、明大の横手健(3年)と優勝候補に挙げられていた4校のランナーが抜け出した。この区間を制したのは駒大の主将・中村だ。一時は3人から離されるも、意地の走りで追いついた。2年連続トップバッターを任された中村は、ラスト1キロで他校を振り切り、先頭で襷を繋いだ。青学大の久保田は2秒差の2位、明大の横手が8秒差の3位、東洋大の田口が13秒差の4位と続いた。

 各校のエースが集う“花の2区”を制したのは、東洋大だ。の服部勇馬(3年)だ。昨年もエース区間を任された服部は、明大の大六野秀畝(4年)を早々にかわすと、3キロ過ぎで青学大の一色恭志(2年)を抜いた。5.5キロで先頭を走る駒大の村山謙太(4年)に追いつくと、そこから並走となる。出場選手中1万メートルの最速タイムを持つ村山との一騎打ち。序盤のハイペースがたたったのか、2度ほど村山に離された。それでも食らいつき、3年生エースは意地の走りを見せる。19キロ過ぎ、権田坂の下りを利用して一気にスパートをかけた。2位の駒大と3位の青学大と2秒差ながらトップで襷を渡し、服部は区間賞を獲得。「最低限の仕事は果たせた」と安堵した。

 連覇を狙う東洋大は、エースの走りで先頭に立ったが、3区の上村和生(3年)がすぐにトップを奪われた。ここでトップに立ったのが、エントリー変更で3区を任された駒大の中谷圭佑(2年)。昨年は1年生で4区を走り、区間賞を獲得した中谷は、3区でも区間1位のタイムで平塚中継所に到着した。2位に浮上した明大とは18秒、3位の青学大には49秒の差をつけた。

 4区は駒大の工藤有生(1年)が区間記録を上回る走りでトップをキープした。それを上回る快走を見せたのが、同じ1年生の青学大・田村和希だ。54分28秒で区間記録を更新し、2位に浮上した。工藤の記録を3秒上回り、46秒差の2位で5区の神野大地(3年)に逆転優勝を託した。

 往路のヤマ場となる山上りの5区。ここ数年の箱根駅伝は5区がキーポイントとなっている。先頭で襷を受けた駒大は、前回区間3位と好走した馬場翔太(4年)がその重責を担った。ここから必勝態勢を築くという駒大・大八木弘明監督の目論見を狂わせたのが、青学大・神野の快走だ。「1区から4区までいい流れできてくれた。あとは自分がやるだけ。今日は全部出そうと思って走りました」と神野。雪景色の残る箱根の山を力強い走りで駆け抜けた。10キロ過ぎで馬場をとらえると、ぐんぐん差を広げる。13キロ過ぎで30秒以上の差、14キロ過ぎで1分以上の差をつけた。

 神野は苦しそうな表情を見せながらも、一人旅を続ける。後続と差をさらに広げた。芦ノ湖を一番に駆け抜けたのは、フレッシュグリーンの襷。「往路のテープを(先頭に)切る想像はしてきた」と語った神野は、何度もガッツポーズをしながら、ゴールテープを誰よりも先に切った。青学大は1918年に創部し、20回目の出場の箱根駅伝で、往路を初めて制した。2位の明大には5分近い差をつける圧勝だった。チーム史上最高の総合5位を上回ることは、ほぼ確実。初の箱根制覇に向けて、アドバンテージを生かしながら、残り5区間109.6キロの復路に懸ける。

 2位には4分49秒差で明大が入った。大六野、有村優樹、松井智晴、文元慧と黄金世代と呼ばれる4年生を固め、常に上位をキープし続けた。往路制覇はかなわなかったが、約5分の差を復路の6区、7区で詰められれば66年ぶりの箱根制覇の可能性は見えてくる。1、2区までは順調にきていた東洋大は、3区以降は区間6位、4位、11位と波に乗れなかった。青学大には6分49秒差をつけられ、3位と苦しい展開。優勝候補の大本命に挙げられていた駒大は、5区で馬場が寒さから低体温症のような状態に陥り、順位を4位まで落とした。フラフラになりながらゴールし、なんとか襷は繋いだが7分25秒差をつけられた。復路にも力のあるメンバーを揃えるが、逆転優勝は極めて難しい状況だ。

 一方で上位10校までに与えられるシード権争いは混戦必至だ。8位の城西大学から11位の拓殖大学まで、わずか27秒の差しかない。トップと10分以上の差がついたため、8位以降のチームは復路一斉スタートとなる。優勝争い、シード権争いなど、襷を継ぐドラマは、明日8時に芦ノ湖の舞台から開演する。

 往路の順位は以下の通り。
(1)青山学院大(2)明治大(3)東洋大(4)駒澤大(5)中央学院大(6)早稲田大(7)東海大(8)城西大(9)大東文化大(10)中央大(11)拓殖大(12)日大(13)山梨学院大(14)神奈川大(15)順天堂大(16)帝京大(17)日本体育大(18)上武大(19)国学院大(20)創価大
※関東学生連合はオープン参加

(文/杉浦泰介)