第91回東京箱根間往復大学駅伝競走は3日、復路5区間(109.6キロ)で行われた。往路を制した青山学院大学が復路も他校を圧倒。6区から最後まで一度も先頭を譲らず、10分以上の差をつけた。合計タイムは10時間49分27秒で初の総合優勝を達成した。2位に駒澤大学が入り、連覇を狙った東洋大は3位だった。上位10校までに与えられる来年のシード権は、明治大学、早稲田大学、東海大学、中央学院大学、城西大学、山梨学院大学、大東文化大学が獲得。昨年途中棄権の山梨学院大は、往路13位からの逆転で9位に滑り込み、3年ぶりのシード権を手にした。一昨年の優勝校・日本体育大学は15位、初出場の創価大学は20位でシード権獲得はならなかった。大会のMVPにあたる金栗四三杯には往路の5区区間賞の神野大地(4年)が輝いた。
 フレッシュグリーンの新風が箱根路を颯爽と駆け抜けた。20回目の出場で初の往路優勝を果たした青学大が、復路はスキのない継走で5時間25分29秒でフィニッシュした。復路も制し、初優勝を完全制覇で達成した。

 午前8時、スタート地点・芦ノ湖の気温はマイナス4度。6区は、山下りが続くスペシャリスト区間だ。2年連続で青学大の6区を任された村井駿(3年)は、昨年区間18位と振るわなかった。しかし、5分近い大きなアドバンテージが村井に落ち着きを与えた。うっすらと雪景色の残るコースを、白い息を吐きながら、順調なペースで駆け下りる。小田原中継所で2位・明大との差を5分42秒に広げた。区間賞は早大・三浦雅裕(3年)に譲ったが、区間2位の59秒11の好タイムを記録。3位に浮上した駒大に7分35秒、4位に下がった東洋大には7分39秒と、その差を広げる。

 トップで襷を受け取った小椋は3年連続の7区だ。前回は区間2位と好走している。大きな貯金を持っての継走に「前も後ろも気にせず、心軽く走れました」と小椋。21.3キロを1時間2分40秒で駆け抜け、昨年区間賞を獲得した東洋大・服部弾馬(2年)には1分近い差をつける力走を見せた。区間記録には8秒及ばなかったものの、歴代3位の好タイムで区間賞を獲得した。

 青学大は8区から2人連続でエントリー変更。原晋監督は高橋宗司(4年)、藤川拓也(4年)と昨年も箱根を経験している最上級生コンビを据え、初優勝へ向けて盤石の体制を敷いた。

 高橋は2年前、8区で区間賞を獲得した実力者だ。襷を繋いだ小椋が「箱根にかける思いが熱い人」と語る最上級生である。それまでの7区間全てが下級生が走っており、「後輩の力を借りた部分は大きいが、4年生の意地を見せたかった」と奮起した。安定したペースを刻み、1時間5分31秒で、2年ぶりの区間賞を手にする走り。襷を渡した直後には「めちゃめちゃ楽しかった」と笑顔を見せた。

 復路最長の23.1キロを走る9区は、復路のエース区間だ。独走状態の青学大は、主将の藤川を2年連続で投入した。同学年の高橋からの襷をガッツポーズしながら受け取った藤川。5000メートル、1万メートルのタイムは学内トップの実力を持つ。快調なペースで飛ばし、後続校との差をさらに広げた。区間記録に近いペースで進むと、14.7キロ地点にある横浜駅のチェックポイントで、今回はケガの影響でエントリーに入れなかった川崎友輝(4年)から給水ボトルを受け取る。川崎から掛けられた激に笑顔で応え、力強く左拳を突き上げた。「左の脇腹が痛くなりかけていたんですが、それも忘れて元気が出た」と4年間一緒に苦楽を共にしてきた盟友から力をもらった。1時間8分4秒で歴代2位の好記録をマークした。

 初優勝に向けて、残り23キロ。青学大は3区連続の区間賞で、2位との差は9分56秒も開いた。アクシデントさえなければ、逆転はあり得ないタイム差。アンカーを託されたのは、2年生の安藤悠哉だ。「今季の成長株」(藤川)の安藤は「今までつないできた人の重みを感じながら」と落ち着いたペースで入り、ゴールとなる東京・大手町の読売新聞社前を目指した。「早くみんなのもとに飛び込みたかった」と最後の直線に入ると、ゴール付近で待つチームメイトの「悠哉」コールに右拳を挙げて応えた。フィニッシュテープを切る瞬間、両手でガッツポーズ。創部96年目の青学大は16校目の優勝校として、箱根駅伝の歴史に名を刻んだ。

 就任11年目の原監督は「一時は廃部危機にも直面した。半歩半歩積み上げてここまで来た。学生たちに感謝したい」と初優勝に感慨深げだった。青学大の復路は5区間中、区間賞が3つと区間2位が2つ。文句のつけようがない圧勝劇。往路も合わせれば、5区間で区間賞。全員が区間5位以上と安定したパフォーマンスでの総合優勝である。今回からコース変更をしているため、以前の記録は参考記録となるが、総合タイムも史上初の10時間50分台を切った。青学大の強さばかりが目立った今回の箱根駅伝。区間賞を獲得した高橋と藤川は卒業するが、そのほかの8人は来年度も残る。新風を吹かせたフレッシュグリーンの襷が今後も大学駅伝の主役となる。

 総合成績は以下の通り。
(1)青山学院大(2)駒澤大(3)東洋大(4)明治大(5)早稲田大(6)東海大(7)城西大(8)中央学院大(9)山梨学院大(10)大東文化大(11)帝京大(12)順天堂大(13)日本大(14)国学院大(15)日本体育大(16)拓殖大(17)神奈川大(18)上武大(19)中央大(20)創価大
※関東学生連合はオープン参加

(文/杉浦泰介)

※当サイト編集長・二宮清純と原晋監督との対談はこちら(「明日へのテクノロジー 〜adidasの挑戦〜」より)

>>第10回「“匠”の業で故障者半減」(2013年12月掲載)

>>第22回「就任11年目でつかんだ優勝への手応え」(2014年12月掲載)