2014年の相撲界はモンゴル勢が席巻した。横綱・白鵬は大鵬に並ぶ史上最多の32回目の幕内優勝を達成。若手の逸ノ城は幕下付け出しから、わずか5場所で関脇に昇進するスピード出世を果たした。彼らが土俵上で活躍する一方で、日本人力士の低迷が目立つ。日本人横綱は10年以上誕生しておらず、06年の初場所以降は外国出身力士に賜杯が渡り続けている。現役時代、00年に幕内優勝を経験し、14回の三賞を獲得した元関脇・貴闘力に二宮清純が、白鵬と逸ノ城の攻略法を訊いた。
二宮: 横綱・白鵬は昨年6場所中5場所優勝し、圧倒的な強さを誇っています。貴闘力さんはどう見ていますか?
貴闘力: それほど強いかと言われると、疑問符が付きます。まず立ち合いの踏み込みに鋭さがない。付け入るスキは、そこにあるでしょうね。

二宮: 確かに立ち合いで一気にいくタイプが少ない気がします。
貴闘力: 張り差しを使う力士が少ない気がしますね。張り手を食えば、たいていの力士は張られた方向に顔をそむける。そうなれば、一気にもっていけるんです。私や琴錦(現中村親方)とかのような力士が現役にいたら、白鵬は嫌だったと思いますよ。

二宮: 快進撃を見せている逸ノ城には、どんな印象をお持ちですか?
貴闘力: まだまだこれからでしょうね。私は照ノ富士の方が素質はあると思います。将来的には照ノ富士の方が上にいくかもしれませんね。

二宮: ともにモンゴル出身で、身長190センチを超える大型力士です。2人の違いはどのあたりにあるのでしょう?
貴闘力: 体全体の柔らかさが違いますね。逸ノ城はまだ少し硬い。怖いのは体重増加によるヒザとか腰のケガだと思いますね。 

二宮: もし、現役時代の貴闘力さんが逸ノ城と対戦したら、どう攻めますか。
貴闘力: 彼はまだ立ち合いに甘いところがあります。昨年11月場所の豪栄道戦を見ましたが、一気に出る相撲にはまだまだ弱いかもしれませんね。体の大きな力士は、後ろに重心がかかってしまうと、踵に自分の体重も加味されてすごく脆いんです。

二宮: “曙キラー”の異名をとった貴闘力さんだけに、大型力士対策には説得力がありますね。彼らは前に出る時は強いが、後ろに下がると弱いと?
貴闘力: 体重が重いということは、プラスでもありマイナスでもあるんですよ。だから当たりの強い力士にはなかなか勝てないんでしょうね。

<現在発売中の『第三文明』2015年2月号でも、貴闘力さんのインタビューが掲載されています。こちらもぜひご覧ください>