日本ラグビー協会は5日、9月に開幕するW杯イングランド大会に向けた日本代表第1次候補選手41名と、大会までの活動スケジュールを発表した。代表候補メンバーは13日から3日間のメディカルチェックを受け、日本選手権後の4月から本番へ本格始動。宮崎での合宿、アジアチャンピオンシップ、7月のパシフィックネーションズカップ遠征を経て、8月には国内でウルグアイなどと強化試合を実施する。9月の現地入り後もグルジアとテストマッチを行い、19日の予選プール初戦(対南アフリカ)を迎える。エディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)はW杯での目標を改めて8強入りに設定し、「全部勝つつもりで臨む。勝つことプラス、日本のチームを世界に知らしめたい」と強い決意を示した。
(写真:「新しい年はラグビーでいい年になるようにしたい」と熱く語るジョーンズHC)
 W杯イヤーの幕開けにジョーンズHCが早速、動いた。今回、選出された41名はHCが就任以来、コンスタントに代表に選んできた選手が多くを占める。代表最多キャップのベテランLO大野均(東芝)や、今年も最高峰のスーパーラグビーでプレーするSH田中史朗、HO堀江翔太(ともにパナソニック)らが順当にスコッド入りした。大学生はWTB福岡堅樹(筑波大)、WTB藤田慶和(早大)の2名。キャップ0の選手ではLO宇佐美和彦(キャノン)、PRホラニ龍シオアペラトゥー(パナソニック)、FL村田毅(NEC)、CTBティム・ベネット(キャノン)が入った。

 ジョーンズHCは現時点で故障のため、選ばなかった選手としてNo.8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)、山沢拓也(筑波大)の2名をあげ、今後、スコッド入りするかはケガからの回復具合との見解を示した。彼ら以外の候補漏れ選手が代表に割り込む可能性は否定しなかったものの、「プレーの部分で足りないところを改善しない限りは入ってこない」と事実上、今回のメンバーから最終スコッド(31名)に絞り込まれることが濃厚だ。

 本番までは9カ月。このタイミングで候補メンバーを発表するのは、過去のジャパンでは異例の早さと言える。その狙いを指揮官は「W杯では20数年勝っていない。これを覆すには選手に意識をしてもらうことが大事」と明かした。早い段階から代表候補としての自覚を促し、大会に向けた準備やレベルアップを図ってほしいとの意図が込められている。

 13日からのメディカルチェックでは、ジャパンとしての心構えを注入する時間も設けた。2009年WBCで侍ジャパンを世界一に導いた巨人・原辰徳監督を初日のチームミーティングに招き、スピーチを聞く。

 4月に宮崎で合宿をスタートさせてからは、アジアチャンピオンシップで韓国、香港と4試合を実施。7月から8月にかけては北米に遠征し、パシフィックネーションズカップで4試合を戦う。帰国後は再び宮崎で合宿を重ね、国内でウルグアイとの2試合を含む3試合を経て、9月1日にイングランド入りするスケジュールだ。また現地でも昨年11月に敗れたグルジアと本番前最後の実戦に臨む。

 さらに「ホテル、練習グラウンド、施設、滞在地に慣れて、理解を深めるため」との指揮官の希望で、4月には5日間、チーム全体で現地視察も敢行する。協会によると、W杯前にチームとして視察を行うのはジャパンでは初の試み。合宿地のみならず、初戦の南アフリカ戦の会場となるブライトンコミュニティースタジアムも見学が予定されている。ジョーンズHCは「大部分が南アフリカのファンになるだろうが、そういう雰囲気のスタジアムを見ておくことは重要」と本番までにできる準備はすべて整えておきたい考えだ。

 それもこれも、エディー・ジャパンは「準々決勝進出」という高い目標を課しているからに他ならない。予選プールを突破し、ベスト8入りを果たすには、4試合で3勝が求められる。過去7大会で、わずか1勝のジャパンにとって、これまで通りのやり方では「新しい歴史をつくる」(ジョーンズHC)ことは不可能だ。

「Bチームをぶつけることはしない」とジョーンズHCは、全試合をベストメンバーで臨むプランを示している。そのために「ベストの31人を選ぶ」と最終選考の基準はいたってシンプルだ。
「日本という国をラグビーの世界地図に確固たる位置づけをしたい」
 世界ランキングは昨年、過去最高の9位にまで上昇した。3年間で着実な進化をみせたエディー・ジャパンの挑戦は、いよいよ最終段階に突入する。

<代表スコッド41名>

FW
ジャスティン・アイブス(キャノン)、有田隆平(コカ・コーラ)、伊藤鐘史(神戸製鋼)、稲垣啓太(パナソニック)、宇佐美和彦(キャノン)、大野均(東芝)、垣永真之介(サントリー)、木津武士(神戸製鋼)、ツイ・ヘンドリック(サントリー)、トンプソン・ルーク(近鉄)、長江有祐(豊田自動織機)、畠山健介(サントリー) 、平島久照(神戸製鋼)、マイケル・ブロードハースト(リコー)、ヘイデン・ホップグッド(釜石)、ホラニ龍コリニアシ(パナソニック)、ホラニ龍シオアペラトゥー(パナソニック)、堀江翔太(パナソニック)、真壁伸弥(サントリー)、三上正貴(東芝)、村田毅(NEC)、山下裕史(神戸製鋼)、湯原祐希(東芝)、リーチ・マイケル(東芝)

BK
クレイグ・ウィング(神戸製鋼)、内田啓介(パナソニック)、小野晃征(サントリー)、五郎丸歩(ヤマハ発動機)、マレ・サウ(ヤマハ発動機)、立川理道(クボタ)、田中史朗(パナソニック)、田村優(NEC)、廣瀬俊朗(東芝)、日和佐篤(サントリー)、福岡堅樹(筑波大)、藤田慶和(早大)、カーン・ヘスケス(宗像サニックス)、 ティム・ベネット(キャノン)、松島幸太朗(サントリー)、矢富勇毅(ヤマハ発動機)、山田章仁(パナソニック)

<主な代表スケジュール>

4月6日〜 宮崎合宿
4月18日 アジアチャンピオンシップ第1戦、対韓国(韓国)
4月19日〜 イングランド現地視察
5月2日 アジアチャンピオンシップ第2戦 対香港(東京・秩父宮)
5月9日 アジアチャンピオンシップ第3戦 対韓国(福岡・レベルファイブ)
5月23日 アジアチャンピオンシップ第4戦 対香港(香港)
7月12日〜 パシフィックネーションズカップ遠征(米国、カナダで4試合)
8月15日 強化試合 対戦相手未定
8月22日 テストマッチ 対ウルグアイ(未定)
8月29日 テストマッチ 対ウルグアイ(未定)
9月1日〜 イングランド・ブリストル直前合宿
9月5日 テストマッチ 対グルジア(イングランド)

9月19日 予選プール第1戦 対南アフリカ(イングランド・ブライトン)
9月23日 予選プール第2戦 対スコットランド(イングランド・グロスター)
10月3日 予選プール第3戦 対サモア(イングランド・ミルトンキーンズ)
10月11日 予選プール第4戦 対米国(イングランド・グロスター)