17日、競輪を統括するJKAは都内で平成26年表彰選手の表彰式を行った。男子の最優秀選手(MVP)は昨年のKEIRINグランプリ(GP)を制し、賞金王に輝いた武田豊樹が2年ぶりに選ばれた。女子MVPは新人ながら平均競走得点、勝率、連対率、優勝回数の4部門で1位の小林優香が獲得した。男子の優秀新人選手賞には3年目の三谷竜生を選出。GP出場、SS班在籍、G3優勝で最高齢記録を更新した神山雄一郎は特別賞と優秀選手賞をダブル受賞した。
(写真:MVPに贈られるジャケットを羽織りポーズをとる武田と小林)
 紆余曲折のシーズンを万感の思いで終えた。
「昨年はいろいろあったんですけど、こうして表彰されて良かったです」と武田はMVP受賞を喜んだ。武田は日本競輪選手会を脱退し、新たな選手会を立ち上げようとしたために昨年5月から3カ月の自主休場を勧告された。復帰直後の9月にオールスター競輪を制すると、年末の総決算であるGPで初優勝を成し遂げた。獲得賞金総額は2億円を超え、賞金王にも輝き、文句なしのMVP獲得だ。

「この賞は1年間の成績を見ていただける賞ですから。本当に1戦1戦頑張ったら頂けるブレザーかなと思っています」。2年ぶりの名誉に顔をほころばせた。武田はかつてソルトレイクシティ五輪に出場するほどのスピードスケート選手だったが、競輪選手への夢を捨てきれず、転向を決意した。2003年のデビューし、12年はG1で2勝をあげ、MVPに輝いた。

 しかし15日の全日本選抜では1番人気に推されながら、4着に終わった。「グランプリを優勝したら、なかなか気分が落ち着く時間もなかった。ギア対策もまるっきりしていない。このままじゃいけないと思うし、どうやって巻き返しするか」。来月末に控える日本選手権(ダービー)での雪辱を誓う。

 12年にスタートしたガールズケイリン。加瀬加奈子、石井寛子が纏ってきた赤のジャケットに袖を通したのは、昨年5月にデビューしたゴールデンルーキーだ。バレーボールから転向した小林は競輪学校では試走記録会で、同校の最高基準タイムを全て上回り、女子初のゴールデンキャップを獲得。さらに7月と9月に行われた記録会でもゴールデンキャップを手にし、男女通じて史上初となる3度のゴールデンキャップ獲得を果たした。

 ナショナルチームにも入る逸材は、プロに入り後も快進撃を続けた。ガールズケイリン新記録となるデビューから22連勝を達成するなど、46戦44勝。勝率9割5分6厘と圧倒的な成績を残した。「去年はガムシャラに突っ走っていただけだった。今年はもっと余裕と自信を持てるようにしたいなと思います」と小林は語る。

 優勝回数は最多の15回、連対率は驚異の97.8%、平均競争得点、勝率と合わせて4部門でトップに輝いた。満場一致でのMVP選出だが、本人は決して満足していない。小林は昨年末のガールズGPで梶田舞に敗れ、3着だった。連勝も22でストップし、デビューから初めて連対(2着以内)から外れた。その悔しさのあまり「2日間はご飯を食べられなかった」という。「気づいたら競輪場にいました」と、今年は元日から練習をスタートさせた。

「負けるのは嫌なので、全戦全勝の目標を掲げています。その中でもスピードのあるレース、上がりタイムにこだわっていきたいと思います」。リオデジャネイロ五輪出場を目指す21歳は、今年も颯爽とバンクを駆け抜ける。

 主な表彰選手は次の通り。

【最優秀選手賞】
武田豊樹 2年ぶり2回目

【優秀選手賞】
神山雄一郎 9年ぶり5回目
村上義弘 2年ぶり6回目
深谷知広 2年連続3回目

【優秀新人選手賞】
三谷竜生

【特別敢闘選手賞】
浅井康太 初

【特別賞】
神山雄一郎 10年ぶり2回目

【ガールズ最優秀選手賞】
小林優香 初
(写真:ガールズGPを制し、賞金ランク1位の梶田<右>は小林<真ん中>に2度土をつけた)

【ガールズ優秀選手賞】
梶田舞 初

【国際賞】
田中まい 初

【特別功労賞】
坂本毅
守澤太志
栗田雄矢

(文・写真/杉浦泰介)