20日、「東京マラソン2015」の記者会見が都内で開かれ、2012年ロンドン五輪日本代表の藤原新(ミキハウス)と昨年のアジア競技大会(韓国・仁川)で銀メダルを獲得した松村康平(三菱重工神戸)や、ロンドン五輪男女マラソンの金メダリストら国内外の招待選手が出席した。6度目の東京マラソン出場となる藤原は「ホームランを狙う」と宣言。昨年の東京マラソンで日本人トップに入った松村は「(周囲からの)期待も大きくなってきている。責任を持って応えられるようにしたい」と抱負を語った。来年から国際レース化をする車いすの部では男子の山本浩之と女子の土田和歌子(八千代工業)が連覇を狙う。特に7連覇中の土田は「例年になくいい状態。新しい車いすも合ってきたので、楽しみ」と自信を見せた。大会は22日、都庁をスタート地点に行われる。
(写真:近年の成績では好対照な藤原<左>と松村)

 

 9年目を迎えた東京マラソン。2013年大会からはワールドマラソンメジャーズ入りを果たし、6大大会のひとつとなったことで海外の有力選手も多く出場する。男子の部では8月の世界選手権北京大会の日本代表選考を兼ねており、日本人選手にとっては緊張感を持った格好の腕試しとなる。近年はアフリカ勢に水をあけられているだけに、日本人選手たちには意地を見せてほしいところだ。

 日本勢で一番経験豊富なのが、世界選手権ベルリン大会とロンドン五輪に出場した藤原だ。東京マラソンには5度の出場中2位に3度入っている。ロンドン五輪以降の成績が振るわないだけに、ここで流れを好転させたい。1日の香川丸亀ハーフマラソンでは1時間3分46秒で57位に終わっている。だが本人は「タイムとしては練習通りの結果」と悲観してはない。2年前の東京マラソンでは日本歴代7位の2時間7分48秒をマークした実力者が「丸亀のことは忘れて、ホームランを狙いたい」と逆転の一発で北京行きの切符を掴みとる。

 近年、好調なのがマラソンナショナルチームに入っている松村だろう。昨年の東京マラソンで日本人最高の8位に入り、アジア大会代表を射止めた。「昨年の結果が自信になった」と手応えを掴んでいる。アジア大会では銀メダルを獲得するも、表彰台の頂点にはわずか1秒届かなかった。松村は「これからはそこを埋める」と闘志を燃やす。好成績を残してきたことで、松村に寄せられる期待値は高い。安定感抜群のランナーが、自らの名を上げた東京で再び結果を出せるか。

 藤原と松村にとっては、いい印象の強い東京マラソンだが、この男にとっては屈辱の歴史かもしれない。佐藤悠基(日清食品グループ)は、2年前のこの大会でフルマラソンデビューを果たした。トラックでは実績十分なだけに周囲の期待は高かったものの、結果は2時間16分31秒で31位。序盤は先頭争いに参加していた佐藤に初マラソンの壁は30キロ過ぎからやってきた。「(そこから)動かす筋力がなかった」と、残りの12キロは走り切るだけのレースになったという。2度目の42.195キロへの挑戦には「(ラスト12キロを)自分の意志で動かせる筋力をつけてきた」と調整をしてきた。その練習が正しかったのか、否か、2年間の答えが出る。

 ロンドン五輪金メダリストで、世界選手権モスクワ大会の王者でもあるスティーブン・キプロティチ(ウガンダ)の他にも強敵はズラリと顔を揃える。連覇を狙うディクソン・チュンバ(ケニア)や2013年のロンドンマラソンを制したツェガエ・ケベデ(エチオピア)など2時間4分台の自己ベストを持つ国外の招待選手は4人もいる。東京マラソン財団の早野忠昭レースディレクターによれば、ペースメーカーは1キロ2分58秒に設定する予定だという。2時間5分台のレースを目指しており、日本人にとっては未知の領域である。首都を舞台に日本の侍たちがアフリカ勢に挑む。22日の朝、号砲の音とともに決戦の幕は開かれる。

(文・写真/杉浦泰介)