ダイキの大亀孝裕会長が理事長を務める公益財団法人大亀スポーツ振興財団では毎年、スポーツで優秀な成績を収めた愛媛県出身選手や、スポーツ界に貢献した県内の個人、団体を表彰している。14回目を迎えた今年度も9名の個人、1団体の受賞が決まり、12日に表彰式が行われた。国際レベルでの活躍をした選手や、その指導者に送られるスポーツ大賞には昨年の柔道世界選手権女子57キロ級で優勝した宇高菜絵選手が選ばれた。また、2年後の「愛顔(えがお)つなぐ、えひめ国体」に向けて今回から新設された、えひめ国体特別賞が6名の指導者に贈られた。
(写真:財団の大亀理事長(前列中央)と受賞者たち)
 遅咲きの世界女王が今年度の大賞に輝いた。
 宇高選手は西条市の出身。昨年の世界柔道で4年ぶりに出場し、初優勝を収めた。父・誠二さんの突然の死去や、大会前に痛めた右ひざの故障を乗り越えての栄冠だった。

「これまでも、これからも、柔道が全て。ひとつひとつの大会に自分の柔道を出し切れれば、五輪にもつながる。今後さらにメンタル面の強化を優先に取り組みたい」
 宇高は受賞を励みに、さらなる飛躍を誓う。この3月で30歳を迎え、出場すれば初の五輪となる来年のリオデジャネイロ大会を集大成と位置付ける。「いずれは故郷の柔道に貢献する活動ができたら」と考えており、2年後のえひめ国体にも「精いっぱい自分の力を発揮して盛り上げたい」と協力を惜しまない意向だ。

 スポーツ選手やクラブの育成に携わり、青少年育成に貢献した指導者などを表彰する菜の花賞には柔道指導の河野賢嗣さんが選出された。河野さんは84年に東温市で皿ヶ嶺柔道会を設立。地元の小中学生を対象に、柔道のみならず、社会に通用する人材輩出に尽力してきた。

 09年には県柔道協会の理事長、昨年からは同協会の会長に就任し、えひめ国体の成功へ陣頭指揮を執る。地元開催での国体では「全種目ベスト4以上」が目標だ。「選手の強化が、まだまだ足りない。日本代表の浅見八瑠奈、中矢力、宇高菜絵選手らを目標にジュニア選手が次々と育つ環境を」と決意を新たにしている。
(写真:謝辞を述べる河野さん(右)。左はスポーツ大賞・宇高選手の代理で出席した母・美佐代さん)

 地域に根ざしたスポーツ活動を続けている団体や個人に贈られるふるさとスポーツ賞は宇和島市の畑地TCが受賞した。畑地TCは宇和島市津島町畑地の児童、生徒たちからなる綱引きクラブだ。昨年の全日本ジュニア・ユース綱引選手権大会では男女混成280?以下の部で初優勝。男子320?以下の部で準優勝を収めた。

 少子過疎化が進む地域で、畑地小の児童数はわずか49人。「綱引で人間的に強い子供を育てよう」との思いから10年前にチームが結成された。登録メンバーは10名の小所帯だ。しかし、「人数が少なくても、選手8人全員が力を合わせれば、チームワークで人数の多いチームにも勝てる」と父兄や学校の協力を得ながら練習を重ね、ついに全国の頂点に立った。地域ぐるみの取り組みがもたらせた日本一だ。

 特別賞に選ばれたのはスポーツドクターの田邉亮介さん。松山市出身の田邉さんは日本ドーピング機構のコントロールオフィサーの資格を持ち、01年に日本体育協会公認のスポーツドクターとなった。以来、故郷で開業医として勤務しながら、アスリートの健康維持、管理に力を注いでいる。

 現在は県体育協会スポーツ医科学委員長として、医師会の協力を得て国体選手全員の健康診断を実施。データをトレーナーや栄養士と共有し、ハイパフォーマンスを生み出すコンディションづくりを目指している。「えひめ国体まであと2年ですが、さらに10年先を見据えた選手強化へ、可能な限りのサポートを考え、進めます」と今後も縁の下の力持ちとして選手たちを支えていく。

 今回から新設された、えひめ国体特別賞は、2年後の大会での天皇杯、皇后杯獲得へ、国体選手の育成や指導者の確保など競技力向上対策に特に功績のある者、または期待される者に贈呈される。これまでも財団では「国体競技施設等整備支援基金」を設け、競技環境を充実させる活動に助成を行ってきた。それらに加えて、実際に現場で汗を流し、競技力向上に貢献している人材を表彰し、激励することを同賞の目的としている。

 栄えある初のえひめ国体特別賞に輝いたのは6名の指導者。レスリングの大北桂さん、カヌーの尾野藤直樹さん、スケートの川上隆史さん、ボートの竹内忍さん、テニスの秀島達哉さん、ホッケーの吉岡昭嘉さんだ。
(写真:大亀理事長(左)から表彰される受賞者(右は菜の花賞の河野さん))

 松山市出身の大北さんはレスリングで国体に5度出場し、5位入賞の実績も持つ。現役引退後は松山市の久米中にレスリング部を創設。数多くの全国チャンピオンを育て上げた。7年前からは県レスリング協会の理事長に就任しており、少年の人材発掘、成年の強化に取り組んでいる。えひめ国体の目標は「全参加者5位以上」を掲げている。

 尾野藤さんは現役時代、カヌースプリントのカヤックで全日本選手権4連覇を果たした第一人者。現在は日本代表コーチとして、リオデジャネイロ五輪では日本人初のメダル獲得へ代表選手を鍛えている。その科学的トレーニングは愛媛での選手育成にも取り入れられ、尾野藤さんの紹介で昨年のアジア大会銅メダリストの小松正治選手、全日本選手権3位の多田羅英香選手が成年の選手として加わった。「競技総合3位以上」を狙うえひめ国体で、2選手は大きな戦力として期待されている。

 川上さんは山梨学院大でスケート部を37年務め、冬季五輪ではリレハンメルからソチまで実に14名の代表選手を教えてきた。五輪の代表チームヘッドコーチや監督、日本スケート連盟理事・スピード部長などを歴任するスケート界の名伯楽だ。愛媛とは同大スケート部OBが県連盟の役員をしている縁で交流があり、3年前の全日本学生スピード選手権でスプリント女子総合優勝も果たした土田愛選手を紹介。ナショナルチームメンバーの郷亜里砂選手とともに、愛媛県のスポーツ専門員としての採用につなげた。

 竹内さんは母校・宇和島東高や今治北高で指導し、ボート王国・愛媛を支えてきた。昨年の「長崎がんばらんば国体」に出場した少年16選手の半数は現在、顧問を務める宇和島東高の部員だった。部員たちには「未知の可能性を引き出し、全能力を集中し継続させるため、精神的、肉体的に妥協のない練習」を求めている。今後も優秀なオアズマン、オアズウーマンが次々と誕生し、えひめ国体で好成績をあげてくれるだろう。

 今治市出身の秀島さんは伊予銀行テニス部監督として、成年強化を図っている。一昨年の東京国体「スポーツ祭東京」では伊予銀行を中心とするメンバーで愛媛は3位入賞。昨年の長崎国体でも4位に入った。今年度の日本リーグで伊予銀行はプロ選手擁する他の実業団に交じって、アマチュアの社員選手のみでベスト4に勝ち上がる快挙を達成した。「えひめ国体に向け、伊予銀行としても協力して力を入れていきたい」と、2年後の国体優勝へチーム力を高めていく。

 ホッケーの男女で日本代表コーチだった吉岡さんは、7年前から愛媛県競技力向上アドバイザーとなり、伊予市、松前町のジュニアクラブをはじめとするチームや選手の育成に携わってきた。国体開催を機に“ホッケーの町づくり”を進める松前町の方針に賛同し、昨年には東京から転居。町職員として精力的に活動している。今年は町内に人工芝グラウンドが完成し、「えひめ国体後も東京五輪に日本代表選手が愛媛から出られるよう、将来に続くホッケーの町づくりに協力を」と意気込む。

「健康的で豊かな生活を送る上からも、また青少年の健全育成を図る面からも、スポーツの果たす役割は極めて大きいものがあると思います。このスポーツの効果を改めて見直し明るく活力ある社会を作っていかなければならない」
 大亀理事長は表彰式の式辞で、スポーツの重要性を改めて訴えた。国体を契機に、真のスポーツ立県を――。同財団では、その実現に寄与する愛媛のスポーツ人、団体を引き続き応援していく。 

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(石田洋之)
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