2日、日本陸上競技連盟は都内で2015年度の強化方針を発表した。強化方針は<北京世界選手権(8月)、リオデジャネイロ五輪(来年8月)に向けて戦える競技者の育成と派遣><2020年東京五輪に向けた選手の育成と強化>の2つを挙げた。原田康弘強化委員長が「リオに向けて重要な年」という今年度の最重要国際大会は世界選手権の目標は「メダル2、入賞6」を掲げた。
(写真:「素晴らしい朗報が入ってきた」と、春先の好結果を喜ぶ尾縣専務理事)
「春一番が吹きました」。原田強化委員長が語るように、日本陸上界は今、“追い風”が吹いている。3月15日に行われた全日本競歩能美大会の男子20キロ競歩で鈴木雄介(富士通)が世界記録を更新。28日には米国・テキサスリレーの男子100メートルで桐生祥秀(東洋大学)が追い風参考記録ながら9秒87を叩き出した。同大会の男子200メートルでも高瀬慧(富士通)が20秒09(追い風参考記録)をマークするなど、春先に好記録ラッシュが続いた。

 尾縣貢専務理事が「最大の目標は世界陸上。リオへの試金石となる」と語る今シーズン。世界選手権の目標は「メダル2、入賞6」に設定された。中でもゴールド2人、シルバー8人と、強化指定選手を10人抱える男子競歩陣への期待は大きい。男子20キロは今シーズン世界ランク1位の鈴木を筆頭に、高橋英輝(富士通)が3位、藤澤勇(ALSOK)と松永大介(東洋大学)が4位、小林快(ビックカメラ)が6位、丸尾知司(和歌山県教育庁)が10位と、トップ10の6割を占めている。ジュニアからの長期的な強化が実り、花が咲いた証だろう。

 鈴木と高橋の所属する富士通のコーチでもある今村文男強化部長は「次のテーマはピーキング」と説く。これまでのランキングを分析すると、記録上位者ほど世界選手権、五輪の上位にくる傾向に強いという。競歩大国のロシアなどはそのケースに当てはまる。一方の日本は国内大会が開催される春先にピークを合わせるため、夏に向けて、もうひと山作らないといけない。「同じサイクルを2回ではなく、シーズン前半と後半の戦い方や練習の組み方を考えていく」。快調なペースを刻んでいる競歩界。歩みを止める気はさらさらない。

「いいスタートを切れた。このまま世界陸上まで突っ走りたい」と尾縣専務理事。トラック・フィールドのグランプリシリーズは今月18日からの織田幹雄記念国際陸上大会で開幕する。会場のエディオンスタジムは高速トラックとして知られる。日本陸上界に吹く“追い風”に乗って、更に勢いを加速させたい。

(文・写真/杉浦泰介)