8日間行なわれる世界卓球選手権(個人戦)が26日、中国・蘇州で開幕した。卓球NIPPON(日本代表の愛称)からはロンドン五輪女子団体銀メダリストの福原愛(ANA)、石川佳純(全農)、平野早矢香(ミキハウス)や、中学生コンビの平野美宇(JOCエリートアカデミー)、伊藤美誠(スターツ)ら女子6名が出場。一方、男子はロンドン五輪男子代表の水谷隼(beacon.LAB)、丹羽孝希(明治大)や、前回大会シングルスでベスト8入りの活躍を見せた松平健太(JTB)ら8名の代表たちが世界へと挑む。前回のパリ大会では、日本勢のメダル獲得は男子ダブルスの水谷&岸川聖也組の銅メダルのみ。全5種目中4種目の金メダルは中国勢が獲得した。昨年、東京で行われた世界選手権(団体)でも中国がアベック優勝を果たし、卓球王国は健在だ。日本勢が出場する本戦は27日からスタートする。
 卓球NIPPONにとって、来年のリオデジャネイロ五輪への試金石となる世界卓球。“打倒中国”が至上命題である。昨年の団体戦は男子が4大会連続の銅メダル、女は31年ぶりの銀メダルを獲得したが、いずれも頂点に立ったのは中国。昨秋のアジア競技大会では全5種目を制した最強のライバルは、今大会も日本勢の前に立ち塞がるだろう。

 日本勢、“打倒中国”の一番手となるのは、ともに昨年末の国際卓球連盟(ITTF)ワールドツアー・グランドファイナルを制し、現在世界ランキング5位につける男女のエースだ。

 男子のエース水谷は前回大会、岸川とのペアで日本勢唯一のメダルを獲得したが、今回はシングルスのみにエントリー。自身初の表彰台を狙う。日本代表の選考会を兼ねていた今年1月の全日本選手権では、圧倒的な強さで2年連続7度目の優勝を果たした。男子代表の倉嶋洋介監督が「まさに“水谷劇場”」と称したように、打って良し、守って良し。オールラウンダーとしての水谷の総合力の高さが如何なく発揮された大会だった。2年前は初戦敗退、雪辱を期す今大会は第5シードに入った。順当に勝ち上がれば、準々決勝でチャン・ジィカ(中国)と対戦する。現在は世界ランキング3位だが、ロンドン五輪金メダリストは世界卓球も2連覇中である。水谷のシングルスでの最高成績は4年前のロッテルダム大会のベスト8。この難関を突破し、リオへの弾みをつけたい。

「世界ランキング5位でプレッシャーも前よりはあるんですが、それを力に変えて頑張りたい」と語るのは女子のエース石川。全日本選手権では史上2人目となる女子3冠を達成した。日本では追われる立場となり、重圧をはねのけての戴冠だった。昨年は世界卓球の団体戦では、福原不在の中、エースの重責を背負った。チームの銀メダル獲得に貢献し、秋のアジア競技大会の団体でも銀メダルを手にした。個人では12月のITTFワールドツアー・グランドファイナルではシングルスで日本人初となる優勝を掴み取った。一昨年から男子代表の国内合宿に石川は積極的に参加。フィジカルは格段に上がっている。女子代表の村上恭和監督は「台から遠くても、打ち抜けるようになった」と語るほどだ。全日本選手権の優勝後、石川は「ついてくるプレッシャーは勝ち取ってきたもの、自信に変えていきたい」と語っていた。心身ともに逞しさを増した日本のエースが、世界を相手にどこまで進化を見せるか。

 そのほか女子シングルスとダブルスに出場する平野美宇と伊藤のコンビにも注目が集まっている。昨年3月のドイツオープンとスペインオープンでツアー2週連続優勝果たし、12月のITTFワールドツアー・グランドファイナルも制した。特に伊藤は今年3月のドイツオープンでも女子シングルスを制覇。14歳152日で史上最年少Vを達成した。これにより世界ランキングも15位に急上昇。東京五輪の星と見られていた逸材がリオの代表争いにも加わってきた。男子のダブルスでは松平&丹羽は、一昨年の東アジア競技大会、昨年のアジア競技大会で銅メダル獲得するなど国際大会で安定した成績を残している。ともにシングルスでは世界ジュニアを制し、水谷に次ぐエース候補として期待される若手。ともに今大会はシングルスでもエントリーしているが、メダル獲得の可能性が高いのはダブルスだ。

 個人、団体合わせて世界大会で6大会連続でメダルを獲得している卓球NIPPON。だがシングルスに限って言えば男子は36年、女子は46年もの間、表彰台に上がれていない。来年のリオに向けて、最大のライバルである中国の地で日本勢の躍進に期待したい。

【世界卓球 本戦】

・27日(月) 混合ダブルス1〜2回戦
・28日(火) 混合ダブルス3回戦、男女ダブルス1〜2回戦、男女シングルス1回戦
・29日(水) 男女シングルス2回戦、混合ダブルス4回戦〜準々決勝、男女ダブルス3回戦
・30日(木) 男女シングルス3回戦、男女ダブルス準々決勝、混合ダブルス準決勝
・5月1日(金) 女子シングルス4回戦〜準々決勝、男子シングルス4回戦、混合ダブルス決勝
・2日(土) 男子ダブルス準決勝〜決勝、女子シングルス準決勝〜決勝、男子シングルス準々決勝
・3日(日) 女子ダブルス準決勝〜決勝、男子シングルス準決勝〜決勝

(文/杉浦泰介)