伊藤: 北京、ロンドン大会は、ひとつのパークの中にほぼ全ての競技場がありましたから、移動が楽でした。東京の場合は、既存の施設も使いますから、ひとつひとつの競技場ごとに一度外に出て、交通機関を利用しなくてはなりません。一見、不便に思われますが、トータルでそれも"楽しい"という仕組みがつくられたら素晴らしいですよね。

宮本: せっかく来ていただいた皆さんには、東京以外の土地も見てもらいたいですよね。その時に楽しんでいただけたら、また日本に来るリピーターも増えてくると思います。

 

二宮: 国土交通省の調べでは、昨年の外国人旅行客が1300万人を超えました。2020年には2000万人達成を目指しているそうです。東京に限らず、地方にまで多くの方が行かれる。その時にどれだけ不自由のない快適な生活を送れるか。これは行政の力も必要ですが、みんなが力を合わせなければなりません。

宮本: 既に外国の方がたくさん来られて、地方の旅館に宿泊され、ちゃんと楽しんで帰られています。必ずしも英語や外国語ですべて完璧にガイドできないとダメかと言われると、そうではないところがあります。私たちも、外国語が堪能でなくても海外旅行ができますからね。そうした感覚が大切です。完璧を期すと何もできなくなると思います。

 

伊藤: そうですね。私どもはボランティアアカデミーをやっていて、英語の勉強を始めました。「気持ちがあれば、なんとかなりますから」と説明するのですが、「完璧にしゃべれないと声さえ掛けられない」という人もいます。

宮本: 日本人はそういうところが苦手ですよね。

 

 気持ちで言葉の障がいを乗り越える

 

二宮: オリンピックを1988年のソウル大会から取材していますが、日本人は几帳面なので完璧な英語じゃないと「間違えちゃいけない。だったら黙っておこう」という意識があると思います。でもそうじゃなくて、挨拶でもいいから声を掛けることが、おもてなしの第一歩ではないでしょうか。ロンドンパラリンピックにおいて、「一番良かったのは、ボランティアの人たちの笑顔」という意見を聞きしました。大会を成功させるためには、まず笑顔なんだと。これはとても大事なことだと思いますよね。

宮本: やはり基本的には気持ちが大切だと思います。おもてなしの気持ちを持って接すれば、言葉の障がいを乗り越えられるのではないかと思ますね。

 

伊藤: 車いすに乗った方や、白杖を持った方にも、ちょっとお声掛けしてというのができればいいですよね。

宮本: 日本も変わってきたなと思うのは、この前、新幹線の駅で白杖を持ってエスカレーターへ向かって歩いている方が、上りと下りが分からなくて間違えそうになったのですが、横にいた若い人がちゃんと案内をしていました。そういうことができているというのは、良いことですよね。

 

(第4回につづく)


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