今シーズン、2部(アドバンスセクション)から1部復帰を目指す伊予銀行女子ソフトボール部。その再建を託されたのは、昨年12月から新指揮官として指導する酒井秀和監督だ。酒井監督は1995年から2001年の6シーズン、同部の監督を務めた経験がある。当時は2部と3部を行き来していたが、最後のシーズンは2部で初優勝。1部昇格への道をつくったところで次の監督へとバトンタッチした。また、2006年からは四国初の女子硬式野球チーム「マドンナ松山」の監督を務めた。今回は10年ぶりの復帰となったが、果たして指導経験豊富な指揮官はどんなチームづくりをしていくのか。就任2カ月の酒井監督にチームの現状と今後の課題を訊いた。

「以前、私が監督を務めていた頃は、1部に上がることが目標でした。それが今では、1部のスピードについていけているし、ヒットや得点どころか、勝利を挙げているんですからね。強くなったなぁと感じていましたよ」と酒井監督。外側から見ていても、チームが着実に強化されていることは感じていたようだ。

 実際、昨年12月から指導を行なっているが、非常にいいチームだと実感している。10年前、自らがつくりあげたチームと比べて、技術はもちろんだが、練習への貪欲さも今の選手の方がはるかに上だという。1日500本以上もの素振りをしているというのに、選手たちからは「もっと練習したい!」という気持ちが伝わってくるというのだ。「これだけやれば、結果は自ずとついてくるはずです」。指揮官は既に手応えをつかんでいるようだ。

 しかし、気になることもある。「泥臭さ」という点においては、少し欠けているような気がしているのだ。10年ぶりに復帰した指揮官には、今の選手たちは少しスマート過ぎるように映る。例えば、かつては冬場には当然のように行なわれてきた神社の階段でのトレーニング。選手たちは、これについていくことができない。
「今では死語となりつつありますが、私は“根性”は絶対に必要だと思っています。なぜ“心技体”という言葉は“心”が一番先に来ているのか。やはり、ここ一番という時には気持ちが重要になってくるからです」

 現在は効率のいい科学的トレーニングが主流となっているが、酒井監督は昔ながらの厳しさを追求した練習も取り入れたいと思っている。なぜなら、そうした練習がひいては人間形成へとつながると考えているからだ。そして人間的な成長があれば、自然と技術も向上し、チームワークもできる。指揮官はそう信じている。

 今シーズンからキャプテンには中森菜摘選手が就任した。中森選手は年齢的に中堅の選手だが、酒井監督の目から見ても先輩と後輩をうまくまとめているという。練習への積極性がキャプテンシーにつながっているようだ。そして、彼女を陰で支えているのがベテランの3人。前キャプテンの川野真代選手、坂田那己子選手、矢野輝美選手だ。指揮官は彼女らが「3本の矢」としてチームを支えることで、さらなる強さを得られると期待している。

 また、酒井監督は昨年から選手を指導する秋元理紗コーチにも全幅の信頼を寄せている。「彼女は非常に明るいし、人の気持ちを察することができる。さらにここぞという時には、悪者にもなってくれるんです。ほとんどの選手が社会人では男性監督は初めてだけに、私への戸惑いもあると思います。でも、秋元コーチがいい仲介役になってくれている。本当に助かっていますよ」

 今シーズン、チームの目標は無論、1部復帰。いや、絶対条件と言ってもいい。酒井監督も1年目での復帰を見据え、「1部で7〜8位になれるくらいの力をつけたい」と述べている。掲げるのは1点へのこだわり。そのためには犠打やエンドランといった細かいプレーをしっかりとこなし、1点を守り抜くディフェンス力が不可欠となる。開幕まで約3カ月。新生・伊予銀行のまずは“準備力”に注目したい。


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