今シーズンもまた、伊予銀行男子テニス部にとって決戦の舞台である日本リーグの季節が到来した。去る12月2日からは4日間にわたってファーストステージが行なわれた。昨シーズンは5年ぶりに決勝トーナメントに進出を果たした伊予銀行。今回の目標はもちろん、2年連続での予選リーグ突破。そのためにもこの1年間、厳しいトレーニングを課し、弱点克服のためにあらゆる努力をしてきた。その成果を出すべく、試合に臨んだ伊予銀行だったが、結果は1勝3敗と思いもよらないものだった。果たして敗因はどこにあったのか。そして来月21日から行なわれるセカンドステージではどんな戦いをするのか。

 勝たなければいけない相手に負けを喫したのが、第1戦、第2戦だった。第1戦の相手は協和発酵キリン。昨年に続いての連敗である。「昨年はシングルス2本、ダブルスいずれもとることができずに完敗でした。だからこそ、今年は絶対に勝とう、と言っていたんです」と秀島達哉監督。悔しさは電話口からも十分に伝わってきた。

 この試合、シングルスNo1の小川冬樹選手がストレート負けを喫したものの、No.2の植木竜太郎選手がお返しとばかりにストレート勝ちを収め、勝負はダブルスに持ち込まれた。ペアを組んだのは昨シーズン、息の合ったプレーで決勝トーナメント進出に大きく貢献した萩森友寛選手と坂野俊選手だ。第1セットを6−2で先取し、幸先よいスタートを切った。秀島監督もこの時点では「よし、今日の2人なら大丈夫だ」と確信し、勝利を信じていた。ところが、第2セットを3−6で奪われると、最終セットも奪うことができず、逆転負けを喫したのだ。

「昨シーズンの反省点として最終戦にもつれこんだ時の勝率を上げることを掲げ、この1年間、サーブ強化をはじめ、フィジカルやメンタルトレーニングなどの打開策を図ってきました。にもかかわらず、また同じことを繰り返してしまったことが残念でなりません」
 秀島監督は結果以上に、負け方に問題があると指摘。1年間の成果を出すことができなかったことに悔しさをにじませた。

 黒星スタートとなった伊予銀行は第2戦で九州電力と対戦した。すると、この試合では不運が待ち受けていた。No.1の小川選手が1−6で第1セットを奪われたものの、第2セットは6−4と奪い返し、勝利への執念を見せた。結果的に負けはしたものの、内容的にも悪くはなかっただけに、チームの雰囲気は決して悪くなかったという。

 そしてNo.2の植木選手は第1セットを6−4で先取すると、第2セットも5−3とリード。誰もが植木選手の勝利、そしてチームの1勝を確信していた。ところが、ここで植木選手の体に異変が生じた。右足が痙攣を起こしたのだ。スタミナは十分にあり、疲労が蓄積していた様子もなかった。ただ、無意識にプレッシャーを背負っていたことは容易に想像はできる。初戦を落とし、この試合でもNo.1シングルスは相手に奪われている。そのような状態で植木選手に「何が何でも自分は勝たなければいけない」という気持ちに縛られていてもおかしくはない。その後、植木選手は痙攣した足をかばいながら最後まで戦ったものの、第2セットをタイブレークの末に奪われると、最終セットは0−6と完敗。続いて行なわれたダブルスはストレート勝ちを収めたが、伊予銀行はまたしても1勝をあげることができなかった。

 第3試合、指揮官はある決断を下した。対戦相手のエキスパートパワーシズオカは初参戦ながら強豪イカイから移った選手で構成されたチーム。そのうえ第2試合では兄貴分のイカイにも白星をあげていた。そこで秀島監督は連敗の続く小川選手にはリフレッシュさせ、痙攣を起こした植木選手には休養を与えるため、エース2人を第3試合では外したのだ。

 第3試合、やはりエキスパートパワーシズオカは強かった。伊予銀行はシングルス2本、ダブルスといずれもストレート負け。1セットを奪うことさえも許されない厳しい試合となった。しかし、明るい材料もあった。シングルスNo.2に出場した新人の廣瀬一義選手が善戦。最初はなかなか実力を発揮できなかったが、途中からは得意のネットプレーで相手を翻弄する場面もあった。
「もともと彼はいいものを持っていて、実績も十分にある。初めての日本リーグですが、後半はいい試合をしていましたね。今後、大事な試合が続きますが、彼を出してもおもしろいでしょうね」。コマが一つ増え、指揮官にとっては嬉しい悩みが生じているようだ。

 さて、第4試合の明治安田生命戦でようやく1勝を獲得した伊予銀行。今後は気持ちを切り替えて来月のセカンドステージに臨むことになる。そのセカンドステージでは現在同じレッドブロックの1位リビック、同2位のイカイ、そして最終戦では1勝3敗と並んでいる東京電力と対戦する。果たしてポイントはどこにあるのか。

「正直、決勝トーナメント進出は厳しい状況で、置かれている立場としては日本リーグ残留をかけた戦いと考えるべきです。最大のポイントはやはり最終戦の東京電力戦。おそらく勝ったほうが残留というかたちになるでしょう。それだけに、絶対に負けられません。もちろん、その前のリビック、イカイとの試合も諦めたわけではありません。過去には勝ったこともありますし、勝負ごとはやってみなければわかりませんから」

 実力から言えば、リビック、イカイに勝利を挙げることは非常に難しい。しかし、勝敗数で並んだ場合、響いてくるのは取得セット数だ。それだけにリビック、イカイで一つでも多くセットを奪い、最終の東京電力戦に弾みをつけたいところである。勝負の世界では、いいシーズンもあれば、苦しいシーズンもある。伊予銀行にとっては、今が正念場だ。この壁を乗り越えた時、チームは必ず何かを得るはずだ。苦しい時こそ、成長するチャンス。今シーズンの集大成であるセカンドステージの戦いに注目したい。


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